国語科「わたしはおねえさん」②発問の極意#9〈単元づくりと導入の発問〉

連載
子どもの主体が立ち上がる 国語科 単元別 発問の極意

筑波大学附属小学校教諭

白坂洋一
国語科 発問の極意 バナー

前回は物語「わたしはおねえさん」(光村図書2年下)をもとに、教材分析と教材の特性について解説をしました。今回は単元計画づくりと単元導入の発問<きっかけ発問>を取り上げます。
前回紹介した「教材分析シート」も併せてご覧ください。

執筆/筑波大学附属小学校教諭・白坂洋一

 

<「わたしはおねえさん」教材分析シート>

国語科「わたしはおねえさん」発問の極意#2 図

単元計画づくりは、授業の設計図づくり

説明文「すがたをかえる大豆」でも触れましたが、単元計画を立てる際、まず大事にしたいことがあります。それは、子どもたちが、教材の特性を第一次~第三次のどの段階で学ぶようにするかです。学習内容や指導方法を事前に考えたり工夫したりしながら練りあげていく中で、私たち教師は授業を構想していきます。つまり、授業の設計図をつくり上げているのです。

物語「わたしはおねえさん」の教材の特性は以下の通りでした。

①中心人物の設定と読者の重なり(2年生)
②中心人物の変容点「じっと。ずっと。」
③「わたしはおねえさん」の歌

①の中心人物の設定と読者の重なり(2年生)という点では、読者である子どもたちも中心人物と同じ2年生であることから、すみれちゃんの行動に感情移入しやすく、同化して読むことができる文章表現になっていました。例えば、次のような箇所に共感を覚えることでしょう。

・「おねえさんって、ちょっぴりえらくて やさしくて、がんばるもので、ああ、二年生になってしあわせ。」
・それから心の中で、「えらいおねえさんは、朝のうちにしゅくだいをするんだわ。」と言いました。
・同じことを おかあさんに言われると、あまりいい気もちはしません。けれど、自分から思ったときは、すごくいい気もちです。
・すみれちゃんには、自分が、なきたいのかおこりたいのか分かりませんでした。
・すみれちゃんは、もういちど、ノートを見ました。じっと。ずっと。
・けしかけて、でもけすのをやめて、すみれちゃんは、つぎのページをひらきました。
など

子どもたちの中には、中心人物すみれちゃんと同じように、妹や弟がいるという児童がいるかもしれません。この教材の特性①を出発点に単元を展開することができます。

②の中心人物の変容点「じっと。ずっと。」という点について、ここは中心人物すみれちゃんの変容点(クライマックス)でした。すみれちゃんの行動のみが描かれ、心情が描かれていません。本文では、その直後に「『あはは。』すみれちゃんはわらいだしました。」とあります。この「あはは。」と笑い出すまでに、すみれちゃんは、「じっと。ずっと。」ノートを見ながら何を考え、思いを巡らせていたのか。この部分を考えることを通して、題名「わたしはおねえさん」にも関わる、すみれちゃんのお姉さんとしてのあり方を考えることができます。教材の特性②については、単元の山場ともなりますので、第二次で扱うことが効果的だと言えるでしょう。

③の「わたしはおねえさん」の歌という点では、教材分析において伏線に「歌をつくるのがすき」「かりんのおねえさん」という2つがありました。妹かりんちゃんとの出来事を通して、どんな新しい歌をつくったか、実際に歌をつくってみることで、すみれちゃんの変容を表現することができます。歌づくりにおいては、全く新しい歌を作成する活動もできますが、物語中には2つの歌が登場していますので、これらをつくり替えるという設定も可能です。子どもたちに選択させてもよいでしょう。この教材の特性③では、歌づくりをすることによって、すみれちゃんの変容を表現することにつながるとともに、題名への意味づけにもつながります。教材の特性②を扱った後、第二次の後半で扱うことが効果的だと考えられます。

これらの内容を踏まえ、以下のように計画を立てることができます。

国語科「わたしはおねえさん」発問の極意#2 図

単元計画を見ていただくと分かるように、吹き出しに書いたり、動作化したりする活動が取り入れられています。演劇的手法を取り入れることによって、人物の変容をとらえる読み方を、身体を通して経験することができます。ここでは、中心人物すみれちゃんの心情変化へと意識が広がる手立てとして、動作化などの劇化を取り入れています。

この演劇的手法については、『なってみる学び:演劇的手法で変わる授業と学校』(渡辺 貴裕・藤原 由香里/著 時事通信社 2020年)が参考になりますので、詳しく知りたい方はご参考になさってください。

単元導入の発問<きっかけ発問>

それではここから、発問づくりの具体に入っていきます。単元導入の発問<きっかけ発問>は、以下の通りです。

<きっかけ発問>
「すみれちゃんの言ったことやしたことで心に残った文はどこですか?」

この<きっかけ発問>は、以前に物語「ごんぎつね」で紹介した「この物語で、たった1文だけ残すとしたら?」の発問に通ずるものがあります。つまり、どうしてその1文を選んだのか、理由とともに交流することによって、子どもたちの間で、共通点もですが、ずれも生じます。そして、子どもたちに読む目的と学習の方向性が共有されます。

では、なぜ、この<きっかけ発問>「すみれちゃんの言ったことやしたことで心に残った文はどこですか?」が有効に働くのでしょうか。

それは教材の特性①の部分と大きく重なります。つまり、中心人物すみれちゃんも読者も同じ2年生ですし、同化して読むことができる文章表現になっているからです。また、この物語の視点が三人称限定視点、つまり「すみれちゃん」の行動や心情を中心に物語が描かれているからです。すみれちゃんの行動や心情を中心に描かれているからこそ、子どもたちは、中心人物に同化しながら読み進めることができます。

多くの子どもたちが、次のような箇所を取り上げます。

・物語冒頭のすみれちゃんの歌
・それから心の中で、「えらいおねえさんは、朝のうちに しゅくだいをするんだわ。」と言いました。
・すみれちゃんには、自分が、なきたいのかおこりたいのか分かりませんでした。
・すみれちゃんは、もういちど、ノートを見ました。じっと。ずっと。
・けしかけて、でもけすのをやめて、すみれちゃんは、つぎのページをひらきました。

このことは、教材分析や教材の特性で挙げた部分と大きく重なります。つまり、教師の教えたいことと子どもの心に残った文に重なりが生じていることを意味します。

次の写真は1人の児童のノートです。「『あはは。』すみれちゃんはわらいだしました。」を取り上げています。そして、題名にも関わって、すみれちゃんの行動を同じ2年生の立場から、「おねえさん」として「やさしい」と表現しています。

「心に残った1文」についての子どものノート

 

次回は、単元展開の発問について<誘発発問と焦点化発問>を取り上げます。

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