研究授業、最適解の見つけ方【音声つき】

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古舘良純の「つぶやききれなかったこと」
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岩手県公立小学校教諭

古舘良純

若手教師から絶大な支持を得ている古舘良純先生が、Twitterではつぶやききれなかった思いを語る音声つき連載! 今回は、「指導案」や「研究授業」のあり方について考えます。

執筆/岩手県公立小学校教諭・古舘良純

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つぶやききれなかったポイント3つ

今回のツイートにも、つぶやききれなかったポイントが3つあります。

1 「研究授業」が必要だからこそ減らす

授業が変わりにくいことの原因に「指導案」があると考えます。

表向きには「あくまで『案』なのだから、本時は変わったって良いんだよ」と言われますが、実際、時間をかけて書き上げた指導案と違う流れにすることは難しいものです。

しかも、指導案は「学習者」である子どもたちが置き去りになることが多々あります。なぜなら、上から書き進めるからです。

単元名、単元の位置付け、指導観、教材観、単元の構成などから書き始めるため、児童の実態の扱いは自ずと小さくなっていきます。

しかも、「本学級の児童は男女の仲がよく……」「活発に発言する方である……」「学力の二極化があり……」など、どの学級でも言えるようなお馴染みの実態ばかりが書かれていて、至って本時に迫るものではない内容をよく見てきました。

そして、最大の課題は「指導案」を「研究授業」のために書き、1か月も前から仕上げていくというコスパの低さにあります。

子どもたちや学級集団の実態は、日々刻々と変容や成長を見せます。1か月前の指導案は、言葉を選ばずに言えば「遅れている」ように感じていました。

さらに、指導主事の先生への提出があるために、ある程度体裁を整えた形で出さなければならないという側面も持ち合わせています。

すると、大人のための指導案であって子どものための指導案ではない、目的を見失った指導案が完成します。

しかし、指導案が不必要だとは思いません。思いを書き上げる力は必要だと考えているからです。これまで、授業者の想いがあふれた指導案もたくさん見てきたからです。授業者らしいチャレンジングな姿勢が見える指導案です。

もちろん、私自身もその指導案に憧れ、そういった指導案が書きたいと願ってきました。

そういう意味では「研究授業が必要」だと言えます。

しかし、年間に何本も必要かと言われるとそうではありません。

目的意識、必要感、その先生らしい指導案を書くためにも、「数打つ研究授業」ではない、「最低限の研究授業」が大切になると考えています。

2 「授業交流会」の目的を共有する

指導主事の先生をお招きする授業研は減らしましたが、「授業を見合う機会」は増やしました。まず、日常的にお互いの教室を開放し合うという前提条件を職員にお願いしました。その壁を取り除いたことで、初任者の先生が空き時間などを使って私の授業を見に来るようになりました。

さらに、学年間の風通しを良くしていくために、「授業交流会」を位置付けました。2週間程度の期間に、各学年の先生方が1名ずつ授業を公開するというものです。

指導案なし、教科指定なし、参加不参加の自由、途中参加・途中退室可としました。

すると、自分の学年の授業だけは見ておこうという意識が強まったり、授業を通した学年間のつながりが強まったように感じました。

また、日常の延長にある授業を展開することが可能になり、直前で教科を変更したり、展開を工夫したりすることができました。肩肘張らない授業公開が可能になったのです。

そう考えると、授業交流会の目的は「学級経営の実際」を目にし、その在り方を考え合うことにあります。

気になるあの子へのかかわりを考えたり、生徒指導の機能を活かした授業デザインはどうあるべきか、学習者視点と指導者視点を往復しながら考えたりすることができます。

指導案のない授業を公開することで、視点が学級経営へシフトしていきました。

本校の研究は、学級づくりです。その研究に合わせたスタイルなのだと共有できているから実現できた形であると考えています。

3 「メリット」と「デメリット」のバランスを意識する

負担感で考えると、明らかに現在の形の方が手軽で気軽に実施できるスタイルになっていると感じます。

指導案づくりに時間をかけすぎる必要がなく、当日も学級を自習体制にしなくてよい。年間に何本もないわけだから、自ずと授業研に割く時間が減り、学級事務や校務に時間を充てられるメリットがあります。

しかし、デメリットもあることを把握しておく必要があります。

例えば、専門的な知識を持った指導主事の先生からの指導を受ける時間が減る。校外の先生方からの学びが減り、身内感が出てくるので閉鎖的になっていく。また、新鮮さに欠ける場合がある、などです。

この点に関しては、管理職の先生方を頼ったり、研究主任として常に学びをアップデートさせたりしているつもりではいますが、限界はあるでしょう。

一番大きいデメリットは、指導案を書かなくなることかもしれません。学級の実態と向き合ったり、教室の様子を言語化する時間がなくなっていくことではないでしょうか。

このバランスが取れるよう、本校の校内研では先生方に様々な場面で書いていただく時間もとっています。

ぜひ、先生方もそれぞれの学校でできる授業改善に取り組み、メリットやデメリットのバランスをとってみてください。


研究活動も終盤にさしかかる時期です。授業研のオンパレード……のような学校もあるかもしれません。

もし、改革を進めるのであれば、もう来年度に向けて動き始めて良い時期です。年度が変わってから話を進めるのは容易ではありません。今のうちに、来年度の構想を練っていくことをお勧めしたいと思います。

9月で年度の半分を折り返しました。本校では9月末に登校日数100日目を迎え、気持ちを新たにしたところです。

ぜひ、授業や学級経営においても後半戦を頑張っていきたいと思います。

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古舘良純先生寄り
古舘良純先生

古舘良純(ふるだて・よしずみ)
岩手県久慈市出身、北海道教育大学函館校出身、菊池道場岩手支部代表、バラスーシ研究会所属、共著『授業の腕をあげるちょこっとスキル』(明治図書出版)、平成29年度千葉県教育弘済会教育実践研究論文にて最優秀賞を受賞

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