「係活動 アクションプランシート」自治的な学級をつくる12か月のアイデア#8

連載
自治的な学級をつくる12か月のアイデア

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
連載「自治的な学級をつくる12か月のアイデア」執筆/鈴木優太

子供たちが主体的に学び合い、話合い活動を通して自分たちの力で問題を解決していく、そんな学級をめざしたいもの。この連載(月1回公開)では、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)などの著書をもつ鈴木優太先生が、自治的な学級をつくるための授業や特別活動のアイデアを紹介します。第8回は、係活動を自治的に進める「アクションプランシート」です。

執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太

「アクションプラン」を宣言することがポイント

係活動は、やってみたいことを、やりたいときに、やりたい場所で、やりたい仲間とチャレンジできることが醍醐味です。

理想像の1つとしてイメージしたい活動があります。6年生が卒業直前に行う「やりきりプロジェクト」と言われる活動です。

卒業までに□□□□□をやりたい!

うんうん、やろうやろう!

あんな熱量の高い取組を、学年を問わずに、通年の係活動でも行えないだろうか、と模索しています。「〇月〇日(卒業)まで」と期間が限られていること、「□□□□□をやりたい!」と何をやりたいか明確なこと、「自分たちがやる」という主体性があることが、熱量の高い取組を生み出すのです。

そこで、「いつまでに・何を・誰が」を明確にする「アクションプランシート」を係活動で活用します。

係活動「アクションプランシート」

次の活動へと進化する醍醐味

「〇月〇日から〇月〇日まで□□□□□を☆回やります」

「ミュージック係で、〇月〇日までに業間コンサートを4回やってみたい!」
「4コママンガ係で、〇月〇日までに新作マンガを1人6作品書いてみたい!」
「ソロキャンプ係で、〇月〇日までにサバイバル術を8つ紹介してみたい!」
「プログラミング係で、〇月〇日までにチュートリアル動画を1日1本クラウドに配信してみたい!」

なるべく具体的な「アクションプラン」を立てます。 この指止まれ方式でメンバーを募り、やりたい者同士で活動スタートです。1人係も素敵です。自分の好きや強みを生かした、夢のある仕事にチャレンジできるのが係活動です。

係名を例示するだけで、子供たちの「やってみたい!」がくすぐられます。以下のような一覧表を活用し、アイデアの種まきを惜しまずに行いましょう。

係活動アイデア例一覧(ミュージック係、ダンス係、ドラマ係など)

まずは、2週間などの短期間から取り組み始めます。何を、どのように、何回行うかなど、なるべく具体的に「アクションプラン」を設定するのが肝です。無理なく取り組める「アクションプラン」を設定できるように、教師はメンター役となって相談に乗ります。「係活動って楽しい!」という体験を、短いサイクルで積み重ねるのです。失敗も大いにOKです。

具体的なアクションプランを宣言する子供たち

「アクションプランシート」に記入したら、係コーナーに掲示します。「アクションプラン」を見て、仲間入りするメンバーがいてもよいでしょう。何をやってみたいかが重要です。

「アクションプランシート」は、係コーナーに掲示する。
「アクションプランシート」は、係コーナーに掲示する。

「やります!」と自ら宣言したことのエネルギーたるや凄まじいものです。

期日に振り返り、この後「継続」するか、「解散」するか、「新設」するか、決めます。「アクションプラン」が具体的なので振り返りが機能し、「次」への1歩が踏み出しやすいのが利点です。

業間コンサートが盛り上がったから、4回の業間コンサートをまた続けようか?

4コママンガ、1人6作品書けたね。次は、7作品でチャレンジしてみる?

サバイバル術が人気で一緒にやりたい人がたくさんいるから、ソロキャンプ係は解散しよう。アウトドア係を立ち上げよう!

1日1本の動画配信は難しかったな。2日に1本にして、動画を学級のサイトにまとめて何度でも見てもらえるようにしよう。あとは、どんなチュートリアル動画があると便利か、アンケートもとってみようか?

ここでも教師はメンター役となって相談に乗り、勇気づけをします。アイデアの種まきを惜しまず、子供たちの「やってみたい!」を応援しましょう。

子供に委ねるタイミングが「アクションプランシート」で分かる

体験と振り返りを積み重ねた子供たちは「自分(たち)の力で、どのぐらいのことができそうか?」を少しずつつかんでいきます。やがて、自分たちで計画・活動・振り返りのサイクルをたくましく進められるようになります。

自分たちで活動を進めていく力は、体験と振り返りを積み重ねないことには磨かれていきません。PBL(Project Based Learning=課題解決型学習)と呼ばれて注目されています。このサイクルを、教科の学習活動において積み重ねていくことは重要です。そして、教科以外の活動で取り入れることもとても重要なのです。「アクションプランシート」を使った係活動は、PBLに則ったプロジェクト型の係活動と言えるのです。

プロジェクト型の係活動は、以下のような長所があります。

・学年関係なく取り組める
・1年間のどのタイミングからでも始められる
・プロジェクト型の学習活動を「自走」していく豊かな体験を積み重ねられる

活動が軌道に乗ったら、活動期間の設定や振り返りなどを子供たちに委ねていきます。いくつ立ち上げてもOK、いつやめてもOK、と活動の幅を広げるのもよいでしょう。しかし、「活動が軌道に乗った」と判断することが、私の経験ではとても難しかった。

そこで、1つの指標になるのが、「アクションプランシート」なのです。

子供たちに委ねるタイミングは、ずばり「アクションプラン」を自分たちで設定できるようになったときです。

「アクションプラン」を自分たちで設定できるようになるまでは、上記の図の「①計画」と「②承認」における教師の関わりは濃い目です。導入期は、手厚い関わりを教師も体いっぱいに楽しみましょう。子供たちの「アクションプラン」を眺めながら、少しずつ手放していきます

係活動のゴールは「学級目標達成」です。しかし、これだけでは具体性には欠けます。「アクションプラン」を宣言し、実践することで「為すことによって学ぶ」特別活動の本質に迫ることができます。

「やってみたい!」を追求できる活動として取り組み始めましょう。結果として誰かのためになっていた、結果として学級目標達成に結び付いていた、そんなゆるやかな姿勢でスタートしたってかまいません。学級活動の内容(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」に合致します。


鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。

参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)、多賀一郎監修、鈴木優太編、チーム・ロケットスタート著『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク 』(明治図書出版)

イラスト/イラストAC

【鈴木優太先生 連載】
子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)

【鈴木優太先生 ご著書】
教室ギア55
「日常アレンジ」大全
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク

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