先生に求められる「学習評価」とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#11】

連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
先生に求められる「学習評価」とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#11】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

子供の資質・能力を育む「学習評価」

前回までに、資質・能力について改めて詳細に見ていきましたので、今回から、いよいよ「学習評価」について考えていくことにしましょう。

「学習評価」の必要性や本質については避けて通る?

「学習評価」というと、これを読んでくださっている先生方は何を思い浮かべられるでしょうか? テストの点数や通知表の3段階や5段階の評価をイメージされた先生は少なくないはずです。おそらくは、子供たちが期待する学習内容を獲得できているかどうかとか、それを一定の基準で輪切りにして成績として判断するイメージが強いのではないかと思います。そのために、評価をあまりクリエイティブな仕事とは思いにくく、やむを得ず責任を果たすために行うという感覚が強いのではないでしょうか。

それに対して、単元づくりや授業づくりは、「自分はこんな単元を構成してみたい」とか、「こんな授業づくりをしてみたい」というように、アイディアを生かせる部分が多いイメージがあるのではないでしょうか。そのために、両者を比べると、「単元づくり・授業づくり」のほうが魅力的なもので、「学習評価」のほうは形式的で、しなければならないからやむを得ずやる、という感覚が生まれる傾向があるのではないかと思います。そのため、ややもすると「単元づくり・授業づくり」のほうには力がかけられるのだけれども、「学習評価」の必要性や本質については避けて通る傾向がある方がいるかもしれません。私自身の若い頃をふり返ってみても、そうだったように思います。

しかし、「学習評価」の機能についてていねいに考えていくと、「単元づくり・授業づくり」と深く関わっていることが見えてくるでしょう。それが分かってくると、「学習評価」を行うことが、非常にクリエイティブで豊かな学びの実現に向かっていくということが感じられると思います。

「指導と評価の一体化」の学習評価に関する参考資料
このような評価の意図を踏まえたうえで、四つの機能を理解すると、より豊かな評価を行うことができる。

「学習評価」には、四つの機能がある

さて、では「学習評価」とはどのようなものなのでしょうか。一般的に考えて、「学習評価」にはいくつかの機能があると思います。

まず、一つめは、「指導と評価の一体化」という機能です。具体的な指導と評価結果は表裏一体のものになっているため、目の前の子供の姿を的確に捉えて、授業の改善に生かさなければいけないということです。これは、ずっと前から言われてきたことですね。

二つめは、「説明責任を果たす」という機能です。先生が行ってきた教育行為の結果について、保護者や地域住民もそうだし、何よりも子供たち自身に対して、どういう状況にあるのか説明することは、教師という仕事にとって欠かせない大事な仕事です。そのためには、適正な評価を行うことが必要なのです。

三つめが、「自己評価能力を育成する」という機能です。子供たち自身が今、自分はどんなことに取り組み、どんな状況にあるのかが分かり、もし課題があればその解決に向けて何に取り組めばよいのか、自覚し、取り組めるようにするということです。

その意味では、「学習評価」はブラックボックスにするのではなく、子供自身に開示してあげることで、「自分はこんなことに向かっていて、今はこんな状況で、こんなところをがんばればいいんだ」と考え、結果的に自ら次に向かっていけるようにすることが大切です。

ただし、子供たちには発達による差があるため、小学校低学年の子供にこれを行っても難しいところもあります。ですから、学齢が上がるにつれて徐々にウェイトを高めていくことではないかと思います。自分自身で、「自分は力を付けているぞ」とか、「これができるようになればOKだ」と判断できる場面を徐々に顕在化させ、徐々に自覚化していくことは必要だと思います。

子供たちは最終的には自立していかなければなりません。それは、中央教育審議会の答申にもあるように、「現在では思いもつかない未来の姿を構想し実現したりしていく」のが子供たち自身だからです。先にご説明をした、資質・能力における知識の構造化も、子供たち自身が知識を構造化してこそ活用できるようになるのであって、すでに構造化されたものを与えられても機能しません。だからこそ、子供自身が自分で自分の学びを意味付け、価値付け、俯瞰し、自ら学んでいけるようにすることが大事なのです。

さて、最後になりますが、四つめが、「カリキュラム評価」という機能です。自分が実施したことが学校の単元計画や年間計画といったカリキュラムの見直しに反映されなければ意味がないということです。これは、授業レベルというよりも、もっと大きなデザインの見直しで、学校の教育課程全体にまで関わるようなことです。

「学習評価」には、ここまでご説明をしてきたような、四つの機能があると考えられるのです。

次回は、「学習評価」の四つの機能を踏まえたうえで、評価を行うことによって、「単元づくり・授業づくり」が、より豊かなものになることについて、ご説明をしていきたいと思います。

「学習評価」を行ううえでの重要なポイントは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#12】はこちらです。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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