2020年の新学習指導要領で必要なカリキュラム・マネジメントとは!?

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2020年に始まる小学校の新しい学習指導要領では、教育活動の質を向上させ学習効果の最大化を図るために、「カリキュラム・マネジメント」を確立する必要があると言われています。では、学級担任は、具体的にどういったことに取り組めばよいでしょうか。

小学三年生イメージ
撮影/金川秀人

すべては資質・能力育成のため

新・学習指導要領の実現に必要な「カリキュラム・マネジメント」とは、つまり、「子どもたちの実態に応じ、資質・能力を育成する」ことです。

実は、これまでの学習指導要領でも、教育課程(カリキュラム)の編成権は学校にありました。ただし、指導内容中心の書きぶりであったため、内容を教えるには教科書をしっかりやればよいということで、多くの学校のカリキュラムは、教科書をそのまま行うものとなっていたのです。

ところが、新・学習指導要領では、学びの主体が子どもであることを明確にした上で、
「知識及び技能」
「思考力、判断力、表現力等」
「学びに向かう力、人間性等」
の3つの資質・能力をバランスよく育むこと
を求めています。それには、教科書の内容を順番に教えるだけでは、必ずしも実現できない可能性が出てきます。

全国の学校は、地域や学校ごとに子どもたちの実態(資質・能力)が大きく変わります。つまり、教育のスタート地点が異なるのです。すると、仮にゴールとなる「めざす子どもの姿」が同じであったとしても、そこに到達するまでの「道のり(どのように学ぶかなど)」が異なってきます。

それ以前に、「学びに向かう力、人間性」等を育むには、「こんな人になりたい」「こんな人に育ってほしい」という、子どもや保護者・地域の願いも十分に含んだゴールを設定することが必要です。

となれば、スタートも違う、ゴールも違う学校が、教科書による同じカリキュラムを実施しているのは、実はおかしな話です。

ですから、スタートとなる子どもの実態と、ゴールとなるめざす子ども像を明確にした上で、それを実現するためのカリキュラムを編成します。その上で、常に教育課程の見直しを行い、子どもたちの資質・能力を育んでいけるように改善を図る《マネジメント》を行うのが、カリキュラム・マネジメントなのです。

学校全体での整理が必要

教師に求められるカリキュラム・マネジメントとは、「子どもの実態」と「めざす子ども像」を明確にし、それをどのように実現するかを具体的に考えることですが、小学校ならば6年間を通して、資質・能力を育み、めざす子ども像を実現するのであって、決して担任が一人で行うものではありません。各学校の全教員で、子どもの実態や学校としてめざす子ども像について議論・共有し、それを実現するために、各学年段階で、どのような資質・能力をどの程度まで育てていくのかを、整理しておくことが必要です。

とは言え、各教科等については、各学年段階で求められる資質・能力が新・学習指導要領に明確に示されています。なので、各学年で考える必要があるのは、教科横断的に育成する資質・能力等でしょう。※総則では、「言語能力」「情報活用能力」「問題発見・解決能力」等を例示しています。

例えば、言語能力の育成に力を入れるとするならば、話す(output)、聞く(input)等々の技能がありますが、学年毎にどの程度のことができるようにするか(何ができるようになるか)を設定することが必要です。そして、設定した力を育むために、ショートスピーチを取り入れ、授業と連動させたり、その時に、こんな話し方ができるようにする(何を学ぶか、どのように学ぶか)などというように具体的に考えていくことが必要です。

ちなみに、教育課程の編成に当たっては、中央教育審議会の答申(2016年12月)に示されている、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」などの、6つの柱に沿って行うことが望ましいでしょう。

ふり返りを生かしてこそマネジメント

学級担任の仕事として、最も大きなものは年間指導計画の作成です。これは、今までも作成してきたはずなので、それほど難しいものではないと思います。ただ、重要なことは、どんな力を育むのかを明確にすることです。

2018年度から、本格的にカリキュラム・マネジメントに取り組み始めた、神奈川県川崎市立東小倉小学校では、各教科で育む資質・能力等、各学年で育む資質・能力等を明確にした上で、教科の年間指導計画を作成しています(資料1参照)。

(資料1)国語科年間指導計画
(資料1)国語科年間指導計画 ー クリックすると別ウィンドウで開きます

このような計画を立てることが必要なのですが、ご覧いただけばわかる通り、大半は新・学習指導要領の記述に沿ったものであり、一度作成してみると、それほど難しいものではありません。

年間指導計画ができたら、次は単元計画を作成していきます。文部科学省は、3つの資質・能力は、単元を通して育成するものであり、各資質・能力を評価する時間(つまり、主にそれを伸ばす時間)は、各単元に最低1回あればよいと何度も説明しています。東小倉小学校では、その考え方に沿って、単元の中で主にどの時間にどの資質・能力を育むかという単元計画を整理しています(資料2参照)。

(資料2)単元計画実例
(資料2)単元計画実例 - クリックすると別ウィンドウで開きます

その作成に当たっては、子どもたちの姿をイメージすることが大切です。

例えば「2年生の時に、分数に触れたけれども、あまり反応がよくなかった」という申し送りがあったから、「0.1と1/10の関係については、多めに時間をとって押さえよう」と考えます。

「ただ教科書を順番通りにやっていく」という発想を捨て、目の前の子どもの実態に即し、どんな力を付けるのか、そのために何をどのように、どれだけの時間で学ぶのかをイメージし、学ぶ順番や時間を考えることが大切です。

単元計画ができたら、実際に授業を行っていくわけですが、ここで重要なことは、子どもの学習と同様、実施した後にふり返りを行うことです。「除法の意味理解には当初の計画(あるいは教科書の時間数)よりも時間が必要だ」と感じたならば、それを記録し、次年度以降のカリキュラム編成に生かしていくわけです。

こうして、修正を加えながらカリキュラムの改善を図ります。このように、実態に即して改善を積み重ねることこそが、カリキュラム・マネジメントの肝なのです。

取材・文/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

『小三教育技術』2018年9月号より

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