オンラインで理科実験の授業!! チャーリー西村さんのサイエンスショーを遠隔授業でやってみた!

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備えあれば憂いなし!オンライン授業・ICT活用術

2021年2月2日、東京都大田区立開桜小学校でユニークなオンライン授業が実施されました。サイエンス・エンターテイナーとして活躍するチャーリー西村さんのサイエンスショーを体育館で行い、その様子を教室に同時配信するという初の試みです。果たしてその結果は…!? チャーリー西村さんと開桜小学校の和田和可子副校長のインタビューを交えながら紹介します。

当日の様子とインタビューをまとめた動画も合わせてご覧ください。

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チャーリー西村
サイエンス・プロデューサー米村でんじろう氏の一番弟子。科学館などで行われる演示実験をエンターテイメント化させた「サイエンスショー」を全国各地で展開している。国内だけでなく、アメリカ・UAE・サウジアラビア・中国・台湾・インドなど、海外での公演も多数。幼児教育、学校教育にも力を注ぎ、幼保小対象の理科実験授業にも積極的に取り組んでいる。

コロナで、密になる行事ができない制約の中で

チャーリー西村さんのサイエンスショーは、子どもたちの科学の探求心を引き出す体験型授業として、これまで科学館や幼稚園・保育園などで行われ、理科学教育に大きな役割を果たしてきました。しかし、今のコロナ下の状況では対面でサイエンスショーを実施するのはさまざまな困難があります。

今回は、全校児童が1か所に集まって密になることを避けるため、5・6年生が体育館で対面で、1~4年生は教室でオンラインで見るという形で行われました。つまり、低中学年の子どもたちは、スクリーン越しに実験を「観る」ことになります。実験を目の前で見る従来のサイエンスショーのように、子どもたちの興奮や好奇心、探求心を引き出すことができるのでしょうか…。

オンラインでもリアルに体験できる実験ショー

チャーリー西村さんが最初に行う実験は「空気砲」。空気の動きや圧力を可視化・体感する実験です。

体育館では、チャーリーさんが丸い穴を空けた巨大段ボール箱の側面を叩くと、穴から白い煙の輪が体育館の奥へと勢いよく発射されました。段ボール箱の中には、あらかじめスモークがためてあって、空気の動きが見えるように工夫されているのです。煙の輪の形や飛距離に、高学年の子どもたちは大興奮!

体育館での空気砲実験
体育館での空気砲実験は、巨大な段ボール箱を使った大掛かりな装置で行われた。

一方、中学年の教室では、スクリーン越しにチャーリー西村さんの口上を聞いた後、担任の先生が小さいサイズの段ボール箱を取り出して、教室内で同様の実験を実演します。

一人ひとりの顔のあたりに向けて、空気砲を発射していく先生。予想以上の風圧にのけぞったり、大喜びしたりする子どもたち。体育館と同じように驚いたり感心したり、様々な反応を見せていました。

教室での空気砲実験
体育館での空気砲実験を、教室では小さい段ボール箱を使って先生が実演。

オンラインでも「対話しながらやり取りしている」ような演出

サイエンスエンターテイナーのチャーリー西村さん。
サイエンスエンターテイナーのチャーリー西村さん。

西村 オンラインだと目の前で実験をできるわけじゃないので、モニターやスクリーンを通していかにライブでやっているように感じてもらえるかが重要ですね。例えば「こういうのしたことある人〜?」といった投げ掛けでみんなに質問して、(こちらには児童の声が届いていなくても)「あ、そうだったんだね」と聞こえているふりをして返してあげるんです。そうすることで、双方向じゃないんですけど、いかにも双方向のようなライブ感が出てくるんです。

それと実験の内容ですね。見るだけでは面白さは伝わりません。やっぱり体験することがとても大切だと思うので、各クラスの先生がその場でできて効果の大きい実験を選んでいます。

体育館の様子
カメラを通して、教室の子供たちに投げかける場面もしばしば見られた。

サイエンスショーならではの主体的で深い学び

次に行われたのは「くねくねダンサー」というユニークな名前の実験です。人の形をした薄いセロハンが児童全員に配付されました。スクリーンの向こうのチャーリー西村さんの合図で一斉に手のひらにのせると、セロハン人形がくねくね体をくねらせて曲がっていきます。「人によって曲がり方が違うよね〜。不思議だよね〜!」というチャーリー西村さんの言葉にうなずきながら、子どもたちは興味津々の様子です。

くねくねダンサー(セロハン人形)実験1
体育館での「くねくねダンサー」(セロハン人形)実験を見ながら、その実験内容を教室の子どもたちに説明する先生。
くねくねダンサー(セロハン人形)実験2
画面の向こうのチャーリー西村さんの説明を聞きながら、実験に没入する児童たち。

最後はバルーンアートなどで使う細長いペンシルバルーンを使った「風船エアコン」という名称の実験です。

「これさえあれば寒いときも暑いときも、いつでもどこでも安心!」というチャーリー西村さんの軽妙なトークを聞きながら、いっしょになって全員で実験開始。

風船の両端を持ってすばやく伸ばし、鼻の下にくっつけると…なんと温かい! 今度は伸ばした状態からパッと縮めて鼻の下にくっつけると…ヒンヤリ! スクリーンのチャーリー西村さんは、不思議がったり感心する子どもたちをその目で見とっているかのように「すごいでしょー!? 家でもやってみてね」と満面の笑顔で語りかけていました。

風船エアコン実験
風船エアコン実験では、子どもたち全員に長い風船を配付して実験。ゴム風船が熱くなったり冷たくなったりするのを全員で確認した。

西村 サイエンスショーでは身近な物を使っていろんな実験をします。その中で「ここをこうするとどうなるかな? やってみよう!」という科学的な学び方を促したりします。それに「穴の形を変えるとどうなるかな?」といった投げ掛けをすると「え!? どうなるんだろう!?」ってワクワクして考えますよね。そうすれば家に帰って、段ボールをもってきて、自分で作って試したくなるわけです。これこそまさに主体的な学びですよね。

いつもの授業より大がかりな実験に子どもたちが感動

和田和可子副校長
開桜小学校の和田和可子副校長。

和田 日頃体験したことのないような実験でその現象を目の当たりにして「わー、すごいな〜!」と感動した気持ちは、これからの学習の意欲につながっていくのではないかと思います。子どもたちからは「お家でこれをやってみよう」とか「妹や弟にも教えてあげよう」といった感想も聞かれたので、学びがその場で留まらない良さを感じました。今日学んだことが次の学習に活かせたり、今日見たことや得たことがこれから先の子どもたちの感性に結びついていったりするのではないでしょうか。コロナの中でも実施できたオンラインによるサイエンスショーは、彼らの記憶にずっと残る素敵な授業になったと思います。


新型コロナウイルスの影響で、教育課程の中で従来行われていた活動や行事を中止せざるをえない状況になるなど、教育現場は様々な制約を受けました。特にグループでの活動や体験型授業の実施は大変難しい状況が続いています。そのような中、GIGAスクール推進によるオンライン授業の様々な工夫が、コロナ対策に一役買っています。今回取材したチャーリー西村さんによるオンラインでのサイエンスショーは、体験型の理科実験がGIGAスクールの中で可能になった、新たな取り組みではないでしょうか。

【動画】オンラインサイエンスショー 遠隔授業でやってみた!

チャーリー西村さんインタビュー

和田和可子副校長インタビュー

チャーリー西村さんは、小学校・幼稚園・保育園での出張サイエンスショー、オンラインサイエンスショープログラムを実施しています。学校や幼稚園保育園でオンラインサイエンスショー授業を行いたい学校、園は、下記よりお問い合わせください。
チャーリーといっしょにサイエンスを楽しもう!サイエンスエンタテイメント
http://science-ent.com/

取材・文/畑俊行 撮影/北村瑞斗
取材協力/東京都大田区立開桜小学校

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