小6国語「『鳥獣戯画』を読む」ICT活用の授業アイデア前編|樋口綾香のGIGAスクールICT活用術㉑

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大阪府公立小学校教諭

樋口綾香

Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! 今回は、小6国語「『鳥獣戯画』を読む」の授業実践を紹介します。

執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香

GIGAスクールのICT活用㉑~小6国語「『鳥獣戯画』を読む」①~
イラストAC

使用タブレット:iPad
使用アプリ:ロイロノート

単元名:表現の工夫をとらえて読み、それを生かして書こう
教材:「『鳥獣戯画』を読む」「[情報]調べた情報の用い方」「日本文化を発信しよう」

単元について

今回紹介する実践の単元では、「『鳥獣戯画』を読む」、「[情報]調べた情報の用い方」、「日本文化を発信しよう」の3つの教材を取り扱います。

日本文化を発信するパンフレットを書くために、視点や表現の工夫について「『鳥獣戯画』を読む」で学び、調べたことをパンフレットに用いる場合の正しい方法や注意点についても学びます。

ここでは、「『鳥獣戯画』を読む」の前半の実践についてお伝えします。

1時間目:1枚目の絵を観て、解説文に必要な視点を考え、筆者の表現の良さを見つける

学習の流れ

①単元の言語活動である「日本文化を発信しよう」を提示する。

②日本の文化をロイロノートのテキストカードに箇条書きして、全員で共有する。

日本文化とは何かを書いたロイロノートのテキストカード
日本文化とは何かを書いたロイロノートのテキストカード

③日本文化の一つである『鳥獣戯画』について読むことを伝え、題名を板書する。

④鳥獣戯画の17紙を見て、「この絵を解説するなら、何に着目しますか?」と投げかける。

⑤17紙のワークシートを配付し、着目した点を書き込み、ペアで交流する。

ペアで交流

⑥自分たちが着目した点と筆者の文章を比べて、「高畑勲さんのココがすごい!」を見つけ、タブレットに書く。

「高畑勲さんのココがすごい!」を書いたテキストカード
「高畑勲さんのココがすごい!」を書いたテキストカード

⑦本単元の目標「表現の工夫をとらえて読み、それを生かして書こう」を全体で確認する。

板書

授業を振り返って

日本文化とは何かを問いかけたとき、すらすらと答えが返ってきたことに驚きました。子供たちはちょうど、室町文化を社会科の授業で学習していました。鳥獣戯画について知っている児童も多く、その親しみやすいキャラクターや、漫画やアニメのルーツとなっていることに、親近感をもっている様子でした。

ところが、「解説文を書いてみよう」と言うと、「え?」と難しそうな表情をする児童が何人もいました。しかし、子供たちが今持っている物事を見る視点や表現力と、高畑勲さんの視点の多様さや表現の巧みさを比べることで、これからの学習への必要感を高めたいと考えました。 戸惑う児童のために、「どこに着目して、何を伝えたいかを書くといいよ」と伝えました。

解説文を書くための視点をペアで話し合った後、本文の1~3段落までを音読しました。すると、子供たちは興奮気味に、「この文章すごすぎる!」「ページを早くめくりたい!」とつぶやいていました(3段落までを配付したため、18紙について書かれた4段落以降はまだ読めなくなっています)。そしてスムーズに、「高畑勲さんのココがすごい!」を見つける活動へと進むことができました。

2時間目:筆者のものの見方をとらえ、表現の工夫を見つけよう

学習の流れ

①1段落を音読し、何について書かれているかを確かめる。

②2~6段落は、何について書かれているかをペアで考え、タブレットで配付した本文ワークシートに書き込む。

本文ワークシート
タブレット上のワークシートに書き込む子

③何について書かれているかを、全体で確かめる。

④表現の工夫を、ペアで見つける。

⑤見つけた表現の工夫を、全体で交流する。

⑥振り返りを書く。

振り返り
振り返り
板書

授業を振り返って

筆者のものの見方を捉えるための発問を、「この文は、何について書かれているだろう」としましたが、子供たちはそれを要点を抜き出すことだと思い、本文の言葉で答えようとしていました。そのため、1段落を音読し、何について書かれているかを確かめる活動では、「掛け声」「技」など、具体的な表現となってしまいました。具体的な表現で出てきた意見を、授業者の私が抽象的な表現に置き換えることで、子供たちも発問の意図を理解し、2~6段落の読み取りを行うことができました。

表現の工夫を交流する際、言葉に着目して意見を交わす児童が多い中、絵の示し方にも工夫があると気づいた児童がいました。「2枚の絵を切り離して提示することで、動物たちの動きを表すことができ、時が流れていると感じることができる。これが『漫画の祖』『アニメの祖』と書いた筆者の考えにつながる」と発言していました。

3時間目:筆者の書き方の工夫を生かして書こう

学習の流れ

①筆者のものの見方について振り返る。

②表現の工夫について気づいたことを確かめる。

③7段落の続きの解説文を「ストーリー」「絵の描き方」「評価」の構成で書く。(ロイロノート)

子供が書いた7段落の続きの解説文
子供が書いた7段落の続きの解説文
子供が書いた7段落の続きの解説文
子供が書いた7段落の続きの解説文
子供が書いた7段落の続きの解説文

④解説文を読み合い、友達の文章の良い点を見つけて発表する。

板書

授業を振り返って

本時では、7段落の筆者の言葉である「次は君たちが考える番だ」に応える形で、18紙の3匹の応援蛙について解説文を書く学習を行いました。

表情をよく観察したり、ポーズから気持ちを考えたりと、子供たちは絵のストーリーを想像して、楽しそうに書いていました。絵の描き方や評価については、高畑勲さんの表現を真似ながら、語彙を増やすことができていました。

時間が足りなくなり、十分に読み合いができなかったことから、構成や表現の工夫については、もっとテンポよく確認した方がよかったというのが反省点です。

次回も続いて、「『鳥獣戯画』を読む」の4時間目と5時間目の授業についてお伝えします。

小6国語「『鳥獣戯画』を読む」ICT活用の授業アイデア後編はこちら

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GIGAスクールのICT活用②~国語:色カードで意思表示~
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GIGAスクールのICT活用④~授業にちょこっとプラス~
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GIGAスクールのICT活用⑦~学級開きにICTをプラス!~
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GIGAスクールのICT活用⑨~カメラの使い方を工夫しよう~
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GIGAスクールのICT活用⑮~Google Workspace導入奮闘記(2)~
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GIGAスクールのICT活用⑰~低学年でも検索エンジンを使いこなそう~
GIGAスクールのICT活用⑱~オンライン授業に備えよう~
GIGAスクールのICT活用⑲~ポスターを読もう~
GIGAスクールのICT活用⑳~ロイロノートで共同編集~

樋口綾香教諭

樋口 綾香

ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。

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