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スタンフォード監獄実験を教育現場に応用する「場面リーダー制」とは? 

2019/8/7

学級経営・特別活動を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、教育現場で見て気になったことについて、ズバリと切り込みます。 今回は、学級の中でのリーダーシップの在り方について考えてみましょう。

文/元・埼玉県東松山市立公立小学校校長・稲垣孝章

監獄実験のイメージ
イラスト/熊アート

リーダーを固定しない

「どの子も活躍できる学級にしたい」と学級担任であれば誰もが願うことだと思います。しかし、学級内での役割についての考え方、指導の手立てを誤ると、個を生かす望ましい学級づくりをすることは困難になります。

「役割が人間の行動や心理に与える影響」について、フィリップ・ジンバルドーが「スタンフォード監獄実験」を報告しています。一般市民を無作為に募集し、スタンフォード大学の地下に作った監獄で、10人を看守役、10人を囚人役として、2週間その役割を担わせました。その結果、看守役は囚人役に「命令し、暴言をはく」などの非人道的な扱いをするようになり、囚人役は、卑屈にそれを受け入れ、「強い無力感で、人格的な荒廃」が見られたということです。 しかも、看守役の中心として実験に直接かかわったジンバルドー自身が役割にとりつかれて実験を止められず、外部からの働きかけによって、1週間足らずでその実験は中止されたということです。

この実験から明らかなように、人間は役割によって行動が特定される傾向にあり、その役割は心理的にも大きな影響を与えます。したがって、生活班や係活動などのグループ活動を行う際に、リーダーを固定化し、特定の子どもを中心としたリーダー育成をするという考え方は、上記の研究に照らしてみても望ましいとはいえません。特に、初等教育において求められることは、特定のリーダー育成をするという考えではなく、どの子にもリーダーシップを発揮できるような場面を設定していくということです。

「人に従うことを知らない人は、良き指導者になれない」という名言があります。よりよいリーダーシップを発揮するためには、その活動を支えていくメンバーシップとしての経験が重要になります。また、どの子もリーダーシップを発揮できるような組織づくり、活動づくりを行うことにより、子どもたちが互い のよさを認め合う学級風土が醸成されていきます。

集団が個人に優先し、集団に個人が埋没する実践も見受けられます。どの子も活躍できるような、個を生かすよりよい集団活動の展開が、今まさに求められているのです。

「場面リーダー制」の具体的な方策とは

  1. 朝自習・・・・・朝自習の確認
  2. 朝の会・・・・・めあての発表
  3. 給食・・・・・・服装等の確認
  4. 掃除・・・・・・反省会の確認
  5. 帰りの会・・・・成果の発表

どの子もリーダーシップを発揮できる場面を設定するには、上の表にあるように、一日の学校生活の中で場面ごとにリーダーを交替する、いわゆる 「場面リーダー制」の手法を取り入れると効果的です。また、この役割も1週間程度で交替するなど、多様な役割経験ができるようにすることで、よりよいリーダーシップを発揮できるようになります。どの子も活躍できる学級づくりを行うための基盤は、個を生かす集団活動を展開することです。


『小一~小六教育技術』2014年4月号~2016年2/3月号連載「正襟危座--伝えたい--耳に痛いかもしれないけれど、教室で大切な基礎基本」より

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