小6社会「日本国憲法とわたしたちの生活」指導アイデア
執筆/埼玉県公立小学校教諭・井出祐史
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登
目次
目標
日本国憲法の基本的な考え方に着目して、各種資料を基に調べ、日本国憲法が国民生活に果たす役割や、国会、内閣、裁判所と国民との関わりを考え、表現することを通して、現在の我が国の民主政治が日本国憲法の基本的な考え方に基づいていることと立法、行政、司法の三権がそれぞれの役割を果たしていることを理解できるようにする。

学習の流れ (9時間扱い)
問題をつくる(2時間)
○ 5年までの学習をもとに、くらしの中の法やきまりについて話し合い、日本国憲法の3原則を調べる。
○ 憲法の3つの原則とくらしのつながりについて話し合い、予想をもとに学習計画を立て、学習問題をつくる。
〈学習問題〉
わたしたちのくらしの中で日本国憲法は、どのように生かされているのだろう。

追究する(6時間)
○ 基本的人権の尊重、国民主権、平和主義とくらしとのつながりについて調べる。
○ 国会、内閣、裁判所の相互の関係や国民とのつながり、裁判員制度や租税の役割について調べる。

まとめる(1時間)
○ 調べてわかったことを関係図に整理する。
○ 学習問題について自分の考えを文章でまとめる。
導入の工夫
憲法が国や国民生活の基本を定めていることをおさえたうえで、くらしを振り返ることで、憲法の考え方が生かされていることに気付けるようにします。
1時間目
くらしの中の法やきまりについて話し合い、日本国憲法が国や国民生活の基本であることと、3つの原則が示されていることを理解するようにします。
2時間目
憲法には、3つの原則が示されていました。これは、わたしたちのくらしの基本となる考え方でしたね。では、今まで、憲法とくらしがどのように関わっているか考えたことがありますか。
初めて知りました。今まで考えたことがなかったです。
もしかして、この考え方が生かされているのではないかな。
予想をもとに、3つの原則について調べる学習計画を立て、学習問題をつくります。
問題をつくる(1・2/9時間)
憲法の3つの原則とくらしのつながりについて話し合い、予想をもとに学習計画を立て、学習問題をつくります。
学習問題
わたしたちのくらしの中で日本国憲法は、どのように生かされているのだろう。
追究する(6・7・8/9時間)
国会、内閣、裁判所の相互の関係や国民とのつながりなどについて調べます。
発問の工夫
「何のためにその仕組みがあるのか」を問うことで、二院制や三権分立、裁判員制度や租税の役割などについて理解できるようにします。
6時間目

何のために、国会には2つの議院があり、同じことを話し合うのでしょうか。
法律をつくるのは重大な問題だから、慎重に話し合った方がいいと思います。
それに、いろいろな立場の人の意見を聞くこともできるからだと思います。
8時間目

何のために、裁判は同じ事件について3回まで受けられるようになっているのでしょうか。
また、裁判員制度では、何のために国民から選ばれるのでしょうか。
国会と同じように、重大な裁判で、まちがいがないようにするためではないかな。
「国民の視点を裁判に生かすため」と教科書に書いてあるけど、どういうことなのだろう。
単元づくりのポイント
6年生の初めの学習となる本単元では、用語などの具体的な知識を習得するのではなく、憲法の特色や政治の仕組みや役割、国民生活との関わりについて考え、理解させるようにしましょう。そのためには、例えば、教科書に例示されている課題を追究したり解決したりする学習活動の進め方を活用し、各種資料で調べ、考え、まとめる学習を展開することが考えられます。
また、憲法の条文を読み取ることは非常に難しいため、小学生向けに書かれた書籍や「首相官邸きっず」「参議院キッズページ」などのウェブサイトを有効に活用するとよいでしょう。
イラスト/横井智美、栗原清
『教育技術 小五小六』2020年4/5月号より