授業のテンポとは具体的にどういうことか?【#三行教育技術】

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古舘良純の「つぶやききれなかったこと」
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岩手県公立小学校教諭

古舘良純

「みんなの教育技術」が皆さんに募集している♯三行教育技術(【技の名前+3行程度の箇条書き説明】に ♯三行教育技術 のハッシュタグをつけてつぶやくだけ!詳しくはこちら)で大反響のふるだてせんせい@YoshiJunF 。
その珠玉の技術はどのようにして生まれ、どのような意図で使われているのか、140文字では語れなかった部分を、ご本人に解説していただきました。

執筆/岩手県公立小学校教諭・古舘良純

撮影/金川秀人

授業のテンポの決めてとなる三つの要素とは?

授業の号令の後、自分自身が一言目に何を発しているか意識していますか?
私は体育の指導を受けた時、「運動量を確保するために教師の指示は最小限にしなさい」と言われたことを覚えています。それから、「この場面ではこれを指示する」と決めて授業を組み立てていました。

また、ある年は算数の授業を毎時間ボイスレコーダーで録音して「聞き流す」こともしてみました。思っている以上に「え〜と、じゃあ…」「はい!聞いて!ねえ…」など、口癖や余計な言葉がたくさんあることに気づきました。

マニュアルを読むこととは違いますが、45分の授業ですべきことを端的に言えることは授業者としての責任だと考えます。
子どもの学習活動の流れと、その思考の積み重ね、ステップを意識しているからこそ、停滞せずに授業を進めることができます。
逆を言えば、それがテンポを生み出すことにつながるのです。

そのような状態でこそ教師に自信が生まれ、子どもたちをしっかり見つめて授業ができるのだと考えます。

授業にメリハリを感じさせる、言葉のバリエーション

以前、私は子どもたちには常に丁寧語で話すようにしていました。
「〜してください」「〜してください」と言っていました。
でもある時、「何で子どもに『お願い』している感じになっているんだ?」と思ったことがありました。
学習過程やすべきことがあるのだから、教師がリーダーシップを発揮して子どもの活動を促すことも必要ではないかと考えたのです(もちろん、お願いすることもあります!)。

また、教師の話し方、特に語尾が毎回同じようになっていると、子どもたちの耳に指示が残りにくくなります。「聞き流す」ようになっていくのです。

私の場合、ある子と1対1で雑談している言葉が、遠くの子にも聞こえている時があります。「聞こえている」というより、「いつもと違う先生の話ぶり」に耳が反応しているのです。

だからこそ、「します!」という説明。「ください!」という注意を促す指示。「はじめ!」という号令など、言い方や文末表現を変えていくことで、子どもたちの集中力を高めます。それが、授業にメリハリをつける一助になるのです。

書かない子を叱責するより、書きたくなる工夫を

若い頃は、全員で授業を進めるために、「書き終わった人は鉛筆を置いて良い姿勢で待ちましょう」と指示し、最後の子が書き終わるまで数分間じっとしているような状態を作っていました。当時は、それで良いと思っていました。

ある時、いつまでも書かずにいる子を「いつまで待たせるんだ? みんなはいつまで待てばいいんだ?」と叱責したことがありました。一気に授業の雰囲気が悪くなりました。今思えば、「書かない子」よりも「書いた子」へのアプローチをもっと工夫し、「書かない子」が書きたくなるような雰囲気を作ればよかったと後悔しています。

そのような経緯があり、学級の上位半数の子を中心にして授業を進めるようにしてみました。一見置き去りにするような感覚をお持ちになるかもしれません。しかし、ある種の緊張感を生むことで、全体の底上げにつながりました。

そして、上位半数に入らなかった子にも、「急いでくれてありがとう」「書くのが早くなったね」と声をかけ、全体説明を加える中で「時間かせぎ」をし、追いつけるような配慮をしました。この繰り返しの中で、全体のボトムアップを図るのです。

「わかる」と「わからない」の間にあるものに注目

毎年行われる授業研究会を見ていると、「あ、この子を中心にして進んでいくんだな」という様子がわかることがあります。今思い出すと、「わかる子」「できる子」が発言し、黒板の前で発表し、みんなが「いいで〜す」というような授業です。

決して子どもたちが悪いわけではなく、教師の問い方に問題があるのだと思います。「わかる人」と問えば、発言権は「わかる人」しか持たなくなります。つまり教師の問いの時点で、すでに授業から追い出されてしまう子どもたちが生み出されているのです。

その中で、「主体性」や「意欲」などを育むことができるのでしょうか。そのままでは「教師の求める答えが言える子」を作り出し、「授業」という言葉の意味が狭くなってしまうのではないかと考えます。

私たち教師は、「わかる・わからない」という二択の間にある子どもたちの「迷い」や「揺らぎ」に寄り添い、そんな中でよりよいものを生み出そうとする気持ちを後押しすべき存在にならなければいけません。そうした教師の立ち位置が「問い方」に現れるのだと思うのです。

机間巡視は「教師に都合がいい子」を探すためのものではない

初任校としてお世話になった学校では、「若年層研修」というものがありました。校内研究会の授業とは別に、もう一本指導案を書いて授業をするというものです。さらに、教育事務所長訪問などが重なると、年間3本の指導案を書いて授業をしていました。その中で、「机間巡視」と「指名計画」という言葉が強く印象に残っています。

要は、子どもが「きちんと指示通りにやっているか見て確認しなさい」「どの子の考えを言わせたら授業がうまく進むか考えておきなさい」という指導でした。今考えると、「教師に都合がいい子」を探すために教室を歩き回っていたように思います。もちろん、私の目線も答えが書かれているノートにしか向いていませんでした。

授業において教師が真っ先にすべきことは何か考えてみます。それは子どもたちに「称賛」の声をかけたり、「やる気」を価値づけしたりすることではないでしょうか。その土台があってこそ、子どもたちは安心感の中で学習に向かうのだと考えます。

古館良純先生

古舘良純(ふるだて・よしずみ)●岩手県久慈市出身、北海道教育大学函館校出身、菊池道場岩手支部代表、バラスーシ研究会所属、共著『授業の腕をあげるちょこっとスキル』(明治図書)、平成29年度千葉県教育弘済会教育実践研究論文にて最優秀賞を受賞

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