リレー連載「一枚画像道徳」のススメ #38 住んでいる地域の魅力|櫻井里佳 先生(北海道公立小学校)

連載
リレー連載 明日の授業に生きる!「一枚画像道徳」のススメ

北海道公立小学校教諭

藤原友和

子供たちに1枚の画像を提示することから始まる15分程度の道徳授業をつくり、そのユニットを機能させ、教科横断的な学びを促す……。そうした「一枚画像道徳」実践について、具体的な展開例を示しつつ提案する毎週公開のリレー連載。今週は櫻井里佳先生のご執筆でお届けします。

執筆/北海道旭川市立知新小学校教諭・櫻井里佳
編集委員/北海道函館市立万年橋小学校教諭・藤原友和

ごあいさつ

「みなさんが住んでいる町のいいところはなんですか?」
申し遅れました。私は北海道旭川市で教員をしております、櫻井里佳と申します。
旭川市は私の地元ということもあり、私は旭川という場所が好きです。
ですが、観光客の方や本州の方とお話をしているときに、
「旭川市のいいところはどんなところですか?」と聞かれ、
「旭山動物園がありますかね……。」としか答えられなかったことがあります。

また、旭川市民の方とお話をしていても、「旭川のいいところって……なんだろうねぇ。う~ん……ないかな。」となってしまうことが多々あります。

けれど、実は旭川にはいろんないいところがあるんです。
子供たちにも自分が住んでいる地域の良さに気付いてもらうことで、自分の地域を好きになってもらえたらと思い、今回の授業を考えました。

1 授業 ~旭川は○○のまち~

対象:小学2年生
主題名:住んでいる地域の魅力
内容項目:C-15 伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度

授業の最初に、「みんなの住んでいる所は旭川市だよね。」と言うと子供たちから、
「旭川が好き!」「山がいっぱいあるんだよ。」「いいところがたくさんあるんだよ。」という言葉が次々と出てきました。
子供たちなりに旭川の好きなところやすごいところというものがありそうでしたので、
「この授業が終わったときには、旭川の好きなところやすごいと思えるところが一つでも増えるといいね」と伝えました。

その後、「旭川は○○のまち」の○○にどんな言葉が入りそうかを考えてもらいました。子供たちからは以下の言葉が出てきました。

安全/落ち着く/災害がない/笑顔がある/静か/都会/家がいっぱい/銀座通り商店街/おいしい食べ物がいっぱい/動物園/山/自然/きれい/川/涼しい/木/季節/米/橋

 このやりとりの後、次の写真を提示しました。

説明

写真を見た子供たちは、「見たことがある!」「買物公園にあるよ!」という声の他に「全く知らない」という声がありました。
そこで、これは彫刻であること、買物公園にあること、「サキソフォン吹きと猫」という作品であることを説明しました。

また、「旭川は彫刻のまち」であること、彫刻が様々な場所に100個以上あること、生活の町探検で見た青年の像、遠足のときに見た塔や、帰り道の橋にあるのも彫刻だったんだよ、と伝えました。

写真を見たときに「知らない」と言っていた子たちも「あぁ! あれね!」となっていました。
子供たちから「もっと彫刻を見たい」という声が出たので、市のホームページにある彫刻たちをそれぞれの端末を活用して調べることにしました。
その後、次の発問をしました。

発問1 なぜ、彫刻をいろんなところに置こうと思ったのでしょう。また、置くと、いいことはありますか?

子供たちから以下の意見が出てきました。
彫刻をいたるところに置こうと思ったのは、

みんなに見てほしいから
センスある人が旭川にいて、そのセンスを使いたいと思ったから
旭川だけの特別な物をつくりたいと思ったから
彫刻をたくさんの人に知ってほしいから
芸術作品に触れてほしいから

などが出てきました。

説明

中原悌二郎という彫刻家がいたこと、中原悌二郎賞というものを設立して素晴らしい作品を集めようとしたこと、日本初の歩行者天国である買物公園に彫刻を設置したこと、その後公園や橋や広場などの身近な場所に彫刻が設置されていくことになったことを説明しました。
この説明の後、彫刻をいたるところに置くことのよさについて尋ねました。

子供たちからは、

旭川はすごいと自慢できる
旭川が有名になる
有名になるといい町だと知ってもらえる
有名になると旭川に住みたいという人が増える
外国からの観光客が増える
彫刻を作りたいと思う人が増える
旭川のよさが伝わると住んでいる人は嬉しい
旭川に住んでいてよかったと思える人が増える

という意見が出ました。

発問2 旭川は彫刻のまち、ということについてどう思いますか?

まず、「うれしい」という意見が出てきました。
ほとんどの子がこの意見にうなずいていました。
なぜそのように感じるのか問い返すと子供たちからは、「彫刻は旭川にしかないもの。そういうものが自分の住んでいるところにあることが嬉しい。」とのことでした。
また、「今まで旭川は普通の町だと思っていたけれど、こんなに彫刻があると分かって、旭川っていいなと思った。」という意見も出てきました。

2 どこにどのようにつなげるか

今回の学習に1学期の早い段階で取り組んだのならば、2年生生活科の「町たんけん」の学習につなげることができたと考えています。

また、3年生の社会科でも自分たちの住んでいる場所について学びを深める学習があります。

どちらの学習も町を巡る際に「こんなところにも彫刻があったのか。」「どうしてここにこの彫刻を置いたのだろう。」など子供たちの好奇心につながるのではと考えています。

また、遠足のときに彫刻を見つけながら歩くようにすると、子供たちが目的意識をもち、楽しく学びながら移動することができると考えています。

おわりに

授業の最後の場面で子供たちから「もっと彫刻を見つけたい。」「自分でも調べてみて家庭学習にまとめてみたい。」と言う声が上がりました。

休日や帰り道などを使って彫刻を探す中で、彫刻だけではなく、さらなる旭川の魅力を発見することができたら、子供たちはもっともっと自分の住んでいる町を好きになることができるのだろうなぁ、と思っています。

みなさんが住んでいる町にも、子供たちがまだ気付いていない町の魅力はありそうですか?

【参考文献
旭川野外彫刻たんさくマップ

今後の連載予定
第39回 有我良介(北海道・函館市立桔梗小学校)
第40回 山崎克洋(神奈川県・小田原市立足柄小学校)
第41回以降も豪華執筆陣が続々と執筆中です。

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第2回 モノに宿る家族の「幸せ」
第3回 それっていいの?
第4回 このトイレ使ってみたい?
第5回 「命の重さ」は
第6回 「快」のコミュニケーションができる子供たちに
第7回 未来と今をつなぐ橋を架ける一枚画~『もの』『こと』『ひと』をみる目を深める~
第8回 「一枚画像道徳」を読み解く
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第21回 1枚で3通りの活用 ~西郷瀞のブランコ~
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第28回 テニスボールに込められた思い
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第34回 なまはげ
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