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「青少年の性行動全国調査」から見えてきた「若者の性の分極化」

2019/9/16

全国の中学生から大学生約13000人を対象に調査・研究した「第8回青少年の性行動全国調査」。それを分析・研究した論文集「『若者の性』白書」が刊行されました。調査研究チームの武蔵大学准教授・林雄亮先生に、複雑化する現代の若者の性意識についてお話を伺いました。

武蔵大学社会学部准教授・林雄亮先生
武蔵大学社会学部准教授・林雄亮先生

類のない「青少年の性意識・行動の大規模調査」

―今回共著者として調査に関わった、「若者の性」に関する調査報告の特徴を教えてください。

 本書は、1974年よりおよそ6年おきに実施してきた「青少年の性行動全国調査」 をもとに、青少年の性に関する行動意識の変化・要因を、全国的な調査・実証分析によって明らかにするものです。

生理的・心理的・行動的な側面にわたって、日本の青少年の性的経験(デート、キス、性交など)が、年齢にともないどのよう進行するかを調査・分析しています。時代的な変化の中で起きている性行動の変容を読み取ることができます。

若者の性行動についてこれだけ大規模かつ長期的に行っている調査は他にはないのではないでしょうか。個人のプライベートな部分を、社会的な大調査によって知ることができる貴重な資料だと思います。

―今回の調査でわかったことは?

 この調査で特徴的なのは、性的経験の経験率が前回と比較してどう変わったかが具体的にわかる点です。一般的には経験率が上がったのか、下がったのかという数値の変化のみが注目されますが、私が着目しているのは「具体的にどう変わったか」なのです。どんな人が増え、どんな人が減ったのか。そしてその変化から、世の中全体がどう見えるのかということに関心があります。

若者の性は「草食化」したのでなく「分極化」

本書では、キーワードとして「分極化」*という言葉を使いました。「草食化」という言葉がよく使われますが、若者全体が草食化したわけではなく、実はばらつきがあります。世の中では性交経験のない人は草食系であると考えられていますが、性的な成長のプロセスが遅いだけの人もいます。

最近は「二極化」とも言われますが、二つのグループだけではなく、その中間の人や、今は経験がなくてもいずれは経験したいと思っている人、今まで経験ないけどこれからもしなくてよい人、早く経験して飽きてしまう人など、いくつも分類されることがわかりました。

*若者の性の「分極化」とは

1974年から2017年までの8回にわたる「青少年の性行動全国調査」では、2005年(第6回)の調査で、性行動(デート、キス、性交経験の有無)の活発化がピークを示した。それ以降は、いずれも低下傾向が続いている。世間一般では「草食化」という言葉で若者の性行動の不活発化が語られることが多いが、調査委員の見立てとしては、若者が一様に不活発化したのではなく、活発なグループもあれば、不活発なグループも見られるという分析である。それは「二極化」というように明確に区分できるものでなく、様々なタイプが見られることから、「分極化」と言い表している。

―その多様性には、どうやって気づいたのですか?

 複数の視点で見ることです。例えば、単純に経験率を比べるだけではなく、性交に関しての興味の有無、経験の有無などをかけてグループ化すると、多様性が見えてきます。性経験が増えた減ったではなく、性への関心がないけれど経験は増えたなど、以前はあまり見られなかった人間像も見えてきます。その変化の背景を考察することで、また新たな発見もあるでしょう。

保護者や先生方に注意していただきたいのは、この調査結果を見て、割合が上がった・下がったという見方で捉えるだけでは正しい理解とは言えないということです。どうしても際立った数字だけが一人歩きしてしまいますが、例えば「草食化が進んだ」という一般的イメージだけではなく、実はそこにはいろいろな多様性や分極化があることを、データを通して理解していただきたいと思っています。


林雄亮先生の共著書
『「若者の性」白書 ~第8回青少年の性行動全国調査報告』
日本性教育協会・編  定価:本体2200円+税 ISBN:978-4-09- 840200ー7
https://www.shogakukan.co.jp/books/09840200
試し読みはコチラ

取材/大和信治、まとめ/出浦文絵、撮影/編集部

『教育技術』2019年9月号より

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