小1 国語科「うみのかくれんぼ」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「うみのかくれんぼ」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校・大村幸子
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
前単元の「くちばし」の学習では、鳥のくちばしについて、「これは、~でしょう」「これは、~です」と説明されている文章を読み、問いと答えの関係を捉えることを学んできました。
また、文章を読む中で、文が主語と述語によって組み立てられていることや、語にはまとまりがあることに気付き、その読みを深めた児童も多くいるでしょう。
本単元では、3種類の海の生き物について、「何が」「どこに」「どのようにして」隠れていると説明されている文章を読み、事柄の順序に気を付けて内容を捉えることを学びます。3種類の海の生きものを比べながら読み、その理解を深めていくという学習の中で、主語と述語との関係への気付きを確実なものにするとともに、重要な語や文を選び出すことを学んでいきます。
こうした資質・能力を身に付けることで、海の生き物の体の特徴と隠れ方の因果関係への理解を深め、その神秘性に興味関心をもって、自ら進んで読み深めようとする態度が醸成されることを期待しています。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
説明的文章「うみのかくれんぼ」は、「なにが、どのように、かくれて いるのでしょうか。」という問いに対して、「何が」「どこに」「どのようにして」隠れているのかという文型で、3種類の海の生き物の隠れ方の説明が書かれています。
そこで、本単元では、3種類の海の生き物の説明が少しずつ違う表現でなされていることに着目し、「どの生き物が一番かしこいと思うか、感想をまとめる」という言語活動を設定します。
まずは、「はまぐり」のかくれんぼについて、事柄の順序を考えながら捉えるわけですが、そうした読みを「たこ」「もくずしょい」と重ねていくことで、文章の順序が分かってきて、楽しく読めるようになることが期待できます。
さらに、読みながら、3種類の海の生き物の違いに着目をさせることで、重要な語や文を選び出しながら読むことを意識させることができると考えます。なぜなら、「何が」「どこに」「どのように」隠れているのか、違いをはっきりさせながら読むためには、重要な語や文を選び出しながら読む必要があるからです。
違いを考えながら読む先に、「どの生き物が一番かしこいと思うか」という目的を明確にもたせるようにすると、単元としての学習の必然性が生まれます。児童のより主体的で深い学びが期待できるでしょう。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 違いを読むことの楽しさを知る
本教材に出会い、海の生き物が体の特徴を生かして隠れているということを知ったという児童がほとんどでしょう。一つ一つの生き物について読むだけで、児童は驚きをもって読み進めることと思いますが、この文章のおもしろさは、同じ文章構造で、3種類の生き物が示されていることにあると考えています。違いに着目して読むことで、それぞれの生き物の特徴をより明確にしながら読むことができるわけですが、そのことを通して様々な気付きが得られるという、違いを読むことの楽しさを実感することができる教材文であると考えます。
そこで、二次で、3種類の海の生き物について、違いに着目しながら読みを重ねた上で、三次で、3種類の海の生き物を俯瞰してみて、「どの生き物が一番かしこいと思うか」をまとめます。単元を通して、違いを読むということを意識させることで、大事な言葉や文に立ち止まり、イメージと結び付けながら読む力を身に付けさせるとともに、違いを読むことの楽しさを知り、主体的に読もうとする態度を育みたいと考えています。
〈対話的な学び〉 違いに着目しながら話し合う
本単元では、はまぐり、たこ、もくずしょいという三つの異なる生き物について、それぞれの特徴と隠れ方の違いに気付いていくという過程に、対話的な学びが生まれると考えます。
本教材では、同じ海の生き物でも、体の特徴、能力、住んでいる環境を生かした独特の隠れ方を身に付けていることが説明されています。3種類の海の生き物の違いに着目することで、互いの気付きから言葉への感度を高めたり、言葉を重ねることで、イメージの共有化を図ったりすることができると考えます。
また、そうした読みを生かして、「どの生き物が一番かしこいと思うか」というテーマで話し合うことは、その理由の中に一人一人の読みが表れて、読むことに対するさらに深い理解がもたらされることも期待できるでしょう。
〈深い学び〉 言葉による見方・考え方を働かせてイメージを広げる
違いに着目しながら読むことで、大事な言葉や文に立ち止まって、イメージと結び付けながら読もうとする姿が見られることが期待できます。
例えば、はまぐりは、「大きくてつよいあし」をもつことに着目した場合、「大きいから、砂をかくことができるんだ」「つよいから、砂を深くかくことができるんだ」「大きくてつよいあしで掘るから、はまぐりの体全体をかくすことができるんだ」など、その因果関係にも着目して、イメージと結び付けながら読む姿が想定されます。このように言葉に立ち止まり、これまでの経験やこれまでに学んだ知識と結び付けて、イメージを広げていく、理解を深めていく姿を目指したいと考えます。
また、もくずしょいが「へんしん」するという言葉に着目し、「へんしんってかっこいい言葉だな」「ヒーローみたいだ」「ぼくもお助けマンにへんしんすることがあるけど、同じかな」など、自分が普段使っている言葉とのつながりに気付かせるなど、メタ認知を促すことも重要です。このような言葉に対する見方・考え方への気付きが深い学びをもたらします。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
説明的文章「うみのかくれんぼ」は、「なにが、どのように、かくれて いるのでしょうか。」という問いに対して、3種類の海の生き物の隠れ方が、「何が」「どこに」「どのようにして」隠れるという同じ文型で、説明されています。
「何が」「どこで」「どのように」という観点ごとに読み取らせ、事柄の順序や文型を意識させたい場合には、デジタル教科書のマイ黒板を活用すると、思考が可視化され、スムーズに整理することができるでしょう。
また、言葉とイメージを結び付けて読むためには、動画の視聴も有効でしょう。デジタル教科書に収録されている動画や、教師が予め選んだ動画を視聴し、本文と実際の様子をつなげて理解することで、語彙の拡充にもつながると考えています。
6. 単元の展開(8時間扱い)
単元名: ちがいをよもう
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① 教師の範読を聞き、本文の内容について感想をもつ。
・第二次(2時、3時、4時、5時、6時)
②「うみのかくれんぼ」の文章構成(問い ー 答え ー 答え ー 答え)を見つける。
③「はまぐり」の事例を読み、「何が」「どこに」「どのようにして」隠れているかを読み取る。
④「たこ」の事例を読み、「何が」「どこに」「どのようにして」隠れているか、「はまぐり」との違いを読み取る。
⑤「もくずしょい」事例を読み、「何が」「どこに」「どのようにして」隠れているか、「はまぐり」「たこ」との違いを読み取る。
⑥「はまぐり」「たこ」「もくずしょい」の隠れ方の違いを整理する。
・第三次(7時、8時)
⑦ 3種類の海の生き物の中で、「どの生き物が一番かしこいと思うか」をまとめる。
⑧ それぞれの考えを発表し合う。
全時間の板書例と指導アイデア
●「主体的な学び」のために
本単元の主体的な学びとして、「違いを読むことの楽しさを知る」としています。ですが、最初から、3種類の海の生き物の隠れ方が違うことに注目する児童はいないかもしれません。
まずは、それぞれの生き物の隠れ方を知ることによって、おもしろいと興味をもって読むことでしょう。そうした思考で読んでいる児童に、比べるという視点をもたせて、より主体的な学びへと誘うのは教師の役割と言えるでしょう。
本時は、「うみのかくれんぼ」を読んで、初めて知ったことや気になったこと、疑問に思うことなどを発表してもらい、児童の言葉を教師が板書する形で、3種類の海の生き物の隠れ方を並列的に整理することを目指します。整理された情報を見て、3種類の海の生き物の隠れ方が説明されていること、その隠れ方に違いがあることに対する気付きが生まれることでしょう。
そうした気付きを取り上げて、「どれが一番かしこいと思うか」と、三次で考えさせたい学習課題を投げかけてみましょう。そうすることで、「違いを読むこと」が児童の中に意識化されるでしょう。
こうした意識、すなわち読みの構えが主体的な学びの素地となっていくと考えています。
「うみのかくれんぼ」には、3種類の生き物の隠れ方が説明されているのですね。
それぞれの隠れ方は同じでしたか。
違います。
どんな違いがありましたか。
「はまぐり」は、もぐってかくれます。
「たこ」は、体の色をかえます。
「もくずしょい」は、へんしんします。
そうですね。それぞれの隠れ方がちがうので、おもしろかったですね。
では、あなたは、この三つの生き物の中で、どれが一番かしこいと思いますか。
そのことを考えながら読んでいきましょうね。
イラスト/横井智美