小1 国語科「くちばし」全時間の板書&授業アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小一国語科「くちばし」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:くちばし(光村図書・こくご 一上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員・執筆/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、1年生の児童にとって、学級のみんなと学習する最初の説明的文章になるでしょう。説明的文章は、書かれている内容と書かれ方(形式)の二つの側面を学習することになります。
ただ、書かれている内容ばかりに目を向けてしまうと、書かれ方に意識が向かなくなることがあります。一方で、書かれ方ばかりに着目すると、内容の面白さを十分に感じることができないことがあります。つまり、内容と形式の両方のバランスが大切になります。

学習指導要領解説国語編C読むこと(1)アには、「構造と内容の把握」が位置付いています。「時間的な順序や事柄の順序」とありますが、まずは、「事柄のまとまり」について理解して、内容の大体を捉える力を育てたいと考えます。「事柄のまとまり」としては、一つのくちばしの説明が5文で構成されていることを読む力としています。そして、「事柄の順序」として、①「くちばしの特徴」②「問い」③「問いの答え」④「くちばしでできること(能力)」⑤「くちばしの使い方」という順序になっていることを読むために、文章の重要な語や文に気付く力も必要になってきます。

指導事項には、「知識及び技能」で3項目挙げています。「知識及び技能」は、「思考力・判断力・表現力等」と関連して育成することが目指されています。
本単元は、1年生にとって、初めての説明的文章の学習です。ですから、留意点として、文章を読むことの中で、主語と述語で文が組み立てられていることや語にはまとまりがあることに気付かせていくという指導観でいいでしょう。

さらに、情報の扱い方では、共通や相違というものを理解して読むことは目標にしていますが、無理に理解させようとするのではなく、児童の気付きを促すように文章を見せていったり授業を展開していったりするようにしたいと考えます。さらに、低学年では、複数回にわたり何度も指導していくことで、育成していくことが重要です。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本教材は、それぞれの鳥のくちばしの説明の仕方が同じ書き方になっています。それぞれのくちばしは、5文で組み立てられています。①「…くちばしです。」②「これは、なんのくちばしでしょう。」③「これは~のくちばしです。」④「~は、…のくちばしで―ます。」⑤「そして、※※ます。」というパターンが繰り返されています。
この繰り返しの書き方というのは、声を出して読むとリズムが出て、大変読みやすくなります。ですから、本教材は、説明的文章ですけれども、声に出して読みながら、説明の「同じ」や「ちがい」に気付いていくとよいでしょう。

ただし、音読はあくまでも手段ということになります。
言語活動としては、説明した文章を読み、共通や相違、事柄の順序について分かったことを話し合うことが目的となります。
語や文のまとまりを意識して声に出して読み、パターン化された説明の組み立て、問いと答えの順序、できることと使い方の順序が同じことを読み取れるようにします。
相違については、同じ鳥であるのにそれぞれによってくちばしでできることや使い方が異なることへの気付きであったり、一文一文の説明の役割の違いであったりを読んで理解することができるようにします。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 未知なことを知る楽しさを知る

「はなのみち」では、授業という枠組みの中で、学び始めた1年生の児童にとっての主体的な学びに必要なこととして、学ぶことに興味や関心を持つことと述べています。そのことは、教科書でいうと数ページ進んだだけの本単元でも変わることはありません。その上で、初めて説明的文章を読んで学習するという側面から主体的に学ぶことに注目してみたいと考えます。

説明的文章では、説明されている内容について知っていることと知らないことを学びます。本教材では、知っていることとして、鳥には「くちばし」があること、「くちばし」という言葉は、多くの児童が知っているでしょう。
一方で、鳥のくちばしはそれぞれ形が異なったり使い方が違ったりということには、気付いていない児童も多いでしょう。そのような児童にとっては、「へぇ、鳥のくちばしにはこんな違いがあるんだぁ。もっと知りたいな。」とか「今度から、鳥を見たらどんなくちばしをしているかよく見てみよう。」というように、未知のことを知る楽しさを知ることになります。
自分が知らないことを知ることの楽しさがあることを本単元から学ぶことは、説明的文章を主体的に学ぶ素地になるでしょう。

1年生ですから、「知ってる」と声を上げる児童もいるでしょう。しかし、本文を読むことで、言葉と結び付けて正しく理解することができます。今まで何となく見ていたことや身近で知らないことを文章から正しく理解することができることで、主体的に読もうとする態度を育みたいと考えます。

〈対話的な学び〉「同じ」や「ちがい」を話し合う

対話的な学びは、自分だけでは見えなかったものが、他者の力を借りて、あるいは他者と協働することによって見えてくるようになり、それが深い学びにつながっていくために必要な学びです。
本単元では、鳥のくちばしという対象について、きつつき、おうむ、はちどりという三つの異なる題材とその説明の仕方を通して、「同じ」や「ちがい」に気付いていく過程に、対話的な学びが生まれると考えます。

「同じ」では、同じくちばし、同じ説明の仕方という側面があります。「ちがい」では、同じ鳥でも鳥によってくちばしの形、能力や使い方、それに伴う説明の仕方という側面があります。このように、共通点や相違点を見つけるということは、「情報の扱い」においても求められていく大切な視点になります。

〈深い学び〉 語のまとまりを正しく読む

1年生の教科書上巻では、言葉と言葉の間が空いている「分かち書き」がされています。それは、まだ語のまとまりに対する認識が十分でないためです。ですから、しっかりと語のまとまりを捉えて読むために、「分かち書き」がされていると言ってもいいでしょう。
音読においても、だらだらと語を続けて読むのではなく、「これは」「きつつきの」「くちばしです」というまとまりで読むことを意識させる工夫が必要です。語のまとまりを意識させることで、例えば、「とがった」や「まがった」、「ほそながい」といった形を表す語を認識したり、「これは」や「きつつきは」という「何」を表す語のまとまりには「は」を付けることを理解したりします。
自分が普段使っている言葉に対して改めて「そういえば、自分も何かを言うときに、「ぼくは」と言っているな。」というような自覚を促します。このような言葉に対する見方の変化が、言葉への深い学びとなっていきます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

 他教科との関連: 生活科「アサガオの観察」を例として

1年生では、生活科でアサガオを育てている場合が多いでしょう。アサガオ以外でも、生活科で植物を育てる学習があるでしょう。
国語科では、観察した植物を、種、発芽、二葉など生長に応じて文に書く活動があります。このように、生活科と国語科は関連して取り組むことができます。

児童は、アサガオに水やりをするなどのお世話は毎日しますが、毎日観察したことを記録していくことは、時間的にも労力的にも難しいです。ですが、日々のちょっとした変化も記録しておくと、観察する目を養うことになります。観察する目を養うことは、観察文を書くときに生かされます。そのため、日々の観察活動では、1人1台の端末で、写真を撮るようにするとよいでしょう。
大きな変化が見られた際は、絵に描いて観察文を書くことがよいと思いますが、小さな変化は、写真で記録しておくことで、生長の様子を楽しみにしながら、主体的に学ぶことにつながるでしょう。

6. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名:「おなじ」や「ちがい」にきをつけて、せつめいしよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 教科書の鳥のくちばしだけの挿絵を見せて、それぞれの特徴を話し合う。 教師の範読を聞き、本文の内容について感想を持つ。

・第二次(2時3時4時5時
② きつつきのくちばしの特徴と書かれ方について、音読や話し合いを通して読む。
③ おうむのくちばしの特徴と書かれ方、きつつきの説明との共通点や相違点について、音読や話し合いを通して読む。
④ はちどりのくちばしの特徴と書かれ方、きつつきやおうむとの共通点や相違点について、音読や話し合いを通して読む。
⑤ これまでに登場したくちばしについての説明で、共通点と相違点を整理する。

・第三次(6時・7時8時
⑥ 教師が準備した鳥のくちばしの絵や写真から説明する文を考える。
⑦ 教師が準備した鳥のくちばしの特徴を本文に即して説明する文を書く。
 ※実態に応じて、「問いの文」と「答えの文」だけを書くことでもよい。
⑧ 鳥のくちばしの説明について発表し合う。(教師が撮影して、発表を記録・保存しておく。)

全時間の板書例、発問例、児童の発言例

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

本単元の主体的な学びとして、「未知なことを知る楽しさを知る」としています。1年生の児童にとっては、「未知なこと」が多いのですが、本人たちはそのような自覚はありません。本教材の「くちばし」に関しても、知っている児童はいるかもしれません。しかし、多くの児童は、くちばしを見ただけでは、何の鳥のものか当てることは難しいでしょう。
このように、「これは、何だろう。」と思わせるしかけを作り、それを知る楽しさを味わわせることができるのも説明的文章ならではです。
単元を始める際に、「教科書何ページを開いて」と言って始めるのではなく、児童と教材の出会わせ方を考えることが主体的な学びを生むことにつながります。

今日は、みんなの身近なものについて、クイズを出します。(三つの絵を見せて)ここ に3枚の絵があります。これらは、何の絵か分かりますか。

鳥のくちばし

そうです。鳥のくちばしです。それでは、それぞれのくちばしが、どんなかたちをしているか。見つけたことを発表してもらいます。どのくちばしのことを言っているか分かるように、右から順番に言ってくださいね。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例
「主体的な学び」のために

本単元では、児童同士で話し合いをしたり、音読をしたりしながら、説明されている対象についての理解、共通点や相違点への気付きを目指しています。
鳥のくちばしは、鳥が生きていくために重要な役割を担っているということが、きつつき、おうむ、はちどりという、3種類の異なる鳥を配置して説明している理由だと考えられますが、1年生でそこまでを読むことは望みません。
同じ鳥なのに、鳥によってはちがいがあるということに気が付くことができれば十分だと考えます。
ですから、教師がファシリテートしながらできる限り児童同士の話合いや音読からの「気付き」を大切にして、「先生が進める」ではなく、「自分たちで進めている」という授業観を児童に持たせていくように、教師は意識して授業を実践して「主体的な学び」を目指していきます。

前回の授業では、こんな感想が出ていましたよ。   

-児童の感想で、特にくちばしについて知った驚きや発見した喜びを記述しているものを取り上げて価値付ける。-

それぞれの鳥に合ったくちばしがあるのですね。先生も初めて知りましたよ。それでは、これからの授業で、それぞれのくちばしについて、どのように説明しているかをくわしく読んでみましょう。
今日は、きつつきのくちばしについて読んでみますよ。
先生とみんなと一緒に声を出して読んでみますよ。

- きつつきの説明を音読する -

文の終わりには、丸(。)をつけますね。全部でいくつの丸(。)がありましたか。

はい、五つです。

〇〇さんは、どうですか。

はい、五つです。

他のみんなも同じかな。

はい。

それでは、きつつきについては、五つの文で説明していることになりますね。先生が、黒板に一文ずつ書いていきますから、みなさんは、その後で声に出して読んでみましょう。
-板書① さきがするどくとがったくちばしです。- どうぞ。

-音読 さきがするどくとがったくちばしです。-

この文は、何を説明しているのでしょうか。

絵のくちばしの形を説明しています。

そうですね。それぞれの文が何を説明しているのか考えながら読んでいきましょうね。   
-板書② これはなんのくちばしでしょう。- どうぞ。

-音読 これはなんのくちばしでしょう。-

クイズみたい。

何か、質問しているみたいです。

どうして質問しているみたいなのですか。

文の終わりに、「~でしょう。」というのが質問するときに使う言葉だからです。

「これはなんの」というふうに言っているのも、質問するときに使います。

そうですね。「これは何でしょう。」というように質問することがありますね。よくわかりましたね。このような質問のような文を「問いの文」といいますよ。   
-板書③ これはきつつきのくちばしです。- どうぞ。

-音読 これはきつつきのくちばしです。-

クイズの答えだ。

そうですね。どうして、「答えの文」ということが分かったのですか。


【3時間目の板書例 】

イラスト/横井智美、大橋明子

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