現役教師が伝授!自主学習ノートを作る8つの掟
せっかくの夏休み、子どもたちにはこれまでの学校生活だけでは体験できなかったことをしてほしいものです。
プールに毎日通い、真っ黒になるまで遊ぶこと。ビート板を浮かべていかだ遊びをすること。駄菓子屋で買って食べたアイスクリームが冷たかったこと。それを落としてしまったこと。朝のしっとりとした涼しい空気を胸いっぱい吸うこと。
暑い日常の中にもたくさんの発見や冒険があるはずです。こういう原体験こそ、幸せな子ども時代に体験してほしい。しっかり心の充電をしてきた子どもたちは、遊びへの充足感も生まれ、学習にも落ち着いて取り組めるものです。
そこで、子どもたちが自分で学びをマネジメントしていく自主学習ノートを、夏休みの課題に併せて出すのがおすすめです。一学期から自主学習ノートを練習し、安心して挑戦できるようになるための、事前の取り組みを紹介します。
文/桐朋小学校教諭・伊垣尚人
目次
夏休み自主学習ノート 8つの掟
夏休み前に子どもたちに「夏休み自主学習ノー トの8つの掟」学級通信を配付します。みんなで読み合わせた上、学校で自主学習ノートを練習してしまいます。
ここで紹介する「自主学習ノート8つの掟」 は、子どもたちも読むことを想定しています。ぜひ学級通信などにまとめて、配付して使ってください。終業式1週間前を目安に、学級通信にしてクラスに紹介します。
その後、実際にやってみて、たくさんノートに○をしてあげることで、自信をもって取り組めるようになるはずです。友達同士でノートを見合うことで、事前に取り組むノートの見本として確認できるのがよいそうです。
掟その1 毎日決まった時間にやろう
学習は、決まった時間にやると、自分の中にリズムができます。おすすめの時間は脳がとっても元気な午前中。だらだらせずに、時間のメリハリをつけて行うのがポイントです。学習時間中はテレビを消して集中してやりましょう。目安の時間は「自主学習ノート 30 ~ 60 分」。 やることをやってしまってから、堂々と遊びに行きましょう。
掟その2 ノートの書き方基本の3つを忘れずに
ノートは基本の3つを忘れずに書きましょう。 ①ナンバー、②日付・時間、③今日の学習の「めあて」と、その「振り返り」です。後でノートを見て、「おお、美しい! キレイだな」と自分が思えることが大切です。
掟その3 お休みの日を前もって決めておこう
お休みの日は思いっきり遊びましょう。夏休みはお出かけをしたり、スポーツの試合があったりで、学習できない日もあるかも。家の人と前もって話し 「 お休みにする日 」 を決めておきましょう。そして、お休みするときは、「よし、今日は勉強なし!」と、堂々と休みましょう。
掟その4 ばっちりメニューは予習をしよう
「ばっちりメニュー」は学校の学習のこと。二学期の学習を先にばっちりメニューで予習をしておくと、二学期の勉強がすいすい進みます。どんどん予習をしましょう。夏休み中に漢字ドリルで予習して全部覚えてしまえば、二学期79 日間に1日20分漢字練習するとして、1580分の節約になってしまいます!
でも、一気に覚えると一気に忘れてしまうのが漢字。覚えているか自分で漢字小テストをしながら、こつこつ進めていきましょう。生活科の新しい単元の音読もおすすめです。
掟その5 わくわくメニューは調べ学習を
「わくわくメニュー」は「こんなこと詳しく知りたいなぁ」と思うことをどんどん学習すること。まずはじめは、学校の図書室から借りてきた図鑑や本を参考にして、イラストや簡単な言葉にして写すことから始めます。そのときに、不思議に思ったこと、初めて知ったこと、もっと調べてみたいことなどの感想をまとめてみましょう。本1冊調べ終わったら、図書館に行って2冊目を借りましょう。カシコイ人は図書館を使う回数が夏休みに増えるはず!
掟その6 夏休み課題や自由研究も自学ノートに
自主学習ノートに、「今日は絵を描きます!」 と書いてからやりましょう。もちろん、計算ドリルの復習などのやるべき課題もあるはず。やってみたら、マルつけは家の人にしてもらいましょう。まちがえた問題こそ 「 宝物 」 です。もう一 度ノートにやり直してみたり、まとめてみたりすることが、カシコクなるポイントです。
掟その7 おうちの人の力を借りよう
この通信をおうちの人に見せて、 「 私がカシコクなるために協力してね!」 と伝えましょう。
★保護者のみなさまへ
夏休みに「自主学習ノート」を続けるのは、 なかなか難しいものです。それは、「毎日見てくれる人がいない」というのが最大の理由です。最初はがんばっても、8月に入るころには息切れしていきがちです。ぜひノートを見届けて、一言励ましてください。
大切なことは、ほめ言葉を4、アドバイスを1の「4:1」のバランスを大切にすることです。まずよいところを見つけてほめてください。そして気になったところは、叱るのではなく「明日はこうやってみたら?」と提案してみてください。基本は励ますことからです。保護者のみなさまの40日間の励ましが子供たちの力を大きく伸ばします。1日10分でいいんです。ノートを見て、「がんばってるね!」と励まし、一言コメントを書いたり、シールを貼ったりして、 「いつもあなたを応援しているよ」というメッセージを送ってあげてください。どうぞよろしくお願いします。
掟その8 一人1冊、みんなでやったねパーティー
夏休み、それぞれクラスから離れてがんばってくる時間となります。そして、努力して力をつけて教室に帰ってきたみんなといっしょに、 夏休みやりきったパーティーを盛大に! それに向けて、まずは一人1冊ノートを終わらせてきましょう。夏休みの自主学習は新しいノートで始めましょう。みんなのチャレンジを応援しています。大丈夫。一学期にやってきたんだから。自信をもって!
保護者は学習サポーター
最後に紹介するのは、最近、以下のような支援のポイントを一学期末の懇談会で配付し、一緒に考えているものです。親こそ、よき学びのサポーターになってほしいからです。
1. 子供を受け止め、どんな子に育ってほしいか、どんな親になりたいか願いをもとう
はじめに子供ありき。等身大でまるまる受け止めてみて、子供への願いをもちましょう。そして私たち親の関わり方や心のもち方を振り返ってみましょう。
2. できることに目を向けよう。アドバイスは質問の形でしよう
細かいところについつい目が行きがち。もちろん、大切なことはしっかりと教えます。けれども、子供は自分で気付いて納得しない限り、なかなか自分からやろうとはしないものです。その気付きを引き出すためにも、アドバイスは質問の形でしてみましょう。
3. 子供の好奇心や強みを見つけ、自学ノートでつながろう
子供の好きなことってなんですか? それを学びに活かしてしまいましょう。嫌いなことを無理矢理やらせるよりも、学びの入り口は自分にとって得意なことや好きなことから始めて、段階を踏んで学び方を身に付けさせていきましょう。それには、子供のもつ強みや好奇心をたくさん見つけてください。
4. 惜しみない支援と見逃さない厳しさで、 粘り強さを育てよう
自主的に学び始めるには、そこまでに支援が必要です。「めんどくさいな……」と思ってしまう親自身の気持ちと向き合って、関わり続けてみましょう。学びは、知識の量や考える力だけではなく、最後まで取り組む粘り強さも大切です。小さなガマンを積み重ねられる子が夢の実現へとつながります。
5.ホンモノにふれる体験活動を一緒にしよう
子供が「もっと知りたい! 見たい! やってみたい!」と、思えること。それには、ホンモノに触れることです。そこからは、思ってもみなかった質問が生まれてくるはずです。実際に体験することは、教科書を広げて考えるよりも遙かに多くの学びやすさを生みだします。
6. 成果よりもその努力を認め、チャレンジする心を育てよう
「かちこち頭」から「しなやかな頭」を育てていきましょう。点数といった結果だけに固執することなく、努力し続ける子に育っていくには、どのような支援が有効なのでしょうか。それは学びのプロセスに目を向けることです。
7. 失敗から始めよう。仲間とつながり、成長 を楽しもう
最初からうまくいくことはありません。特に学習においては! 自主学習ノートへの取り組みは、子どもの勉強だけとは思わずに、親も一緒に学んでいけるチャンスと思って取り組んでみましょう。それには、一人で悩むよりも一緒に取り組む仲間を見つけることです。そして、1冊ノートが終わる度に、その仲間や子どもと一緒に成長を喜んでみる。きっと、とても幸せな時間になるはずです。
事前の練習で子供たちの不安を取り除くこと。 保護者に学習のサポーターになってもらうこと。この長い夏休みを乗り切るポイントです。
『小二教育技術』2018年7/8月号より