夏休み、せんせいも「ボランティア」活動しませんか? ~ストレスフルな日々からアナザーライフへ~

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マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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教師の夏休み特集:研修活用・自己研鑽・過ごし方のヒント
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

教育公務員は、副業禁止とされ、本務以外では原則的に対価をともなう仕事に就くことはできません。しかし、常に重責を伴う教員として過ごしている日々は、何かとストレスフルでもあります。
そこで、こうした日常から少し離れてリフレッシュする意味でも、ボランティア活動にチャレンジしてみてはどうでしょうか? そこには、きっとステキなアナザーライフが待っていると思います。
教育職で培ったさまざまなスキルを使い、学校以外で社会貢献できることにもつながるでしょうし、趣味や個人的な研究、これまで学んできたことなどから、ある分野に深い造詣をおもちの方なら、それを生かすチャンスも広がってきますよ。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

教員であるわたしたちだからこそ

これは福祉大国と言われるスウェーデンへ、視察に行った人から聞いた話です。旅先で見かけた、ある印象的な光景を話してくれました。

「公園で、車椅子の人が子どもたちの側を通りかかったところ、子どもたちがその人のもとに駆け寄って、当たり前のようにスロープで車椅子を押し上げるなどの介助をしていた。用が済むと元の場所に戻って、何事もなかったかのように遊びを続け、介助された方も、軽い会釈程度でその場を立ち去ったんだ。
これには感激したよ! 『ボランティア精神』とは、こういうものだと思った。
日本だと、動こうと思ってもなかなか動けない人が多いし、何だか過剰なほどお礼を言われることも多いけど、この国では、あまりにも当たり前になっていて日常なんだ。これが本当の共生社会というか、高度な福祉国家なんだろうなあ…」
実は、これを話してくれたのは、介護保険導入の最前線で行政サイドの実務責任者として働いていた、わたしの義兄でした。そして、後年病に倒れ、自らが全力で整備した介護保険のお世話になって、この世を去りました。わたしがボランティアについて考えるとき、真っ先に思い出すエピソードです。
ボランティアは尊い行いです。称賛されるに値することだと思います。しかし、それが当たり前となり、誰もが自然に行えるようになったら、わたしたちの社会は、もう一段高みへと成長した、と言えるのではないでしょうか? 多くの児童と密に関わり、大切なことを伝えられる立場にある者として、ぜひ皆さんにも、ボランティアについて考えていただけたらいいなぁ、と思います。

ストレスフルな毎日から

学校での教職生活は毎日ストレスでいっぱいです。
特に小学校教員は、朝通勤したその時から、常に何かを判断し、正しく対応することを求められます。給食や授業後の清掃まで、気を抜く暇がありません。
「ストレスは、発散することはできません。溜まる一方だからストレスを忘れるしかない」
「社会を自分に合わせてもらうことは不可能だが、自分が社会に合わせることはできる」
そんなことを言う人がいます。確かにその通りです。
仕事でストレスを感じるのは、もう仕方ないことです。だとしたら、それはそれとして甘んじて受け入れ、勤務時間外で、いっときストレスから解き放たれる、アナザーライフをもつことがいいのかもしれません。そしてそれが、自分の財産になれば、より素晴らしいですね!
わたしの知り合いのせんせいたちには、こんな素晴らしいアナザーライフを過ごしている方たちがいます。ちょっと実例を見ていきましょう。

教員のボランティア活動11事例

【20代男性】大学時代、小児医療関係の研究で病院に通って児童と触れ合いをもっていました。自分が何ができるのか、子どもが一生懸命生きることに対して、具体的にどういった応援ができるのかを確かめたかったからです。今でもこの活動は続けていて、休日などに活動し、「生きる」ということはどういうことなのかを考え続けています。

【40代女性】わたし自身が競泳をしてきたこともあり、自分の息子たちにも競泳に取り組んでもらっています。休日には各種競泳の大会があり、競技委員として次世代の人々を応援しています。水泳連盟のキャッチコピーに
「以前は中から夢を追いかけた。今度は外から、夢を後押しする」
というのがあります。これをわたし自ら、実行しています!

【50代男性】教員をしながら住職をしています。震災や災害などで亡くなった方がいる場合、読経や奉仕活動のボランティアをします。同僚や知人、そのご家族が亡くなった時にも、祈りの気持ちを届けるために読経をさせてもらいます。自分ができることで、亡くなった方の魂を鎮め、少しでも残された方の心に寄り添えたらと思っています。

【50代女性】外国の方のホームステイを積極的に引き受けています。多くの方に滞在してもらい、日本の家庭を楽しんでもらっています。この他、地元に住んでいる外国の方の生活支援をしたり、交流会を企画したりと、国際交流の時間を楽しんでいます。そのおかげで、海外旅行に出かけるのも、まるで国内旅行のような感覚で、ふらっと行けるようになりました。

【40代女性】居住地域の「民生児童委員」をしています。生活に困っている児童や、その保護者の相談相手になっていますが、教員としての経験が非常に役立っていることを実感しています。また、これによって、地域のコミュニティへの関わりが深くなり、さらに同じ活動をしている方々との研修会を通じて委員としての力量を高めることができるなど、人間的な成長もできていると思います。

【30代男性】進んで町内会と関わりをもっています。「お願い!」と頼まれるので、正確にはボランティアと言えないかもしれませんが…。「夏休みの勉強会」の講師や「町内夏のビアガーデン」の実行委員長や町内会を盛り上げる「青年部活動」などをやっています。飲み会も含めて様々な職種の方々と交流するのが楽しいですね。教員仲間では、地域の夏祭りの実行委員として山車を作ったり、踊り手になったり、と余暇も忙しくしている人がいますね。こういうボランティアもいいものです。

【50代男性】中学校や高校のサッカーの試合の審判をしています。大会期間は一日中出ずっぱりで疲れますが、教員の世界とは違った世界を見ることができます。サッカー関係者とお付き合いすると、人脈が広がって楽しいです。自分はもともと小さい頃からサッカーをやってきて、選手として、指導者としてこの世界に関わり続けてきました。今は審判として関わることができ、スポーツ功労者として表彰もしていただきました。やってきてよかったです。

【30代男性】消防団に入っています。操法大会がある時期は練習で大変ですが、集中して取り組むので、日常の細事から離れることができておもしろいです。火事や災害時には、本業に支障がない限り、現場に急行しなければなりません。この心がけが、本業とは違った張り合いを日常にもたらしてくれます。出動時はアドレナリン出まくりです。消防団の仲間との交流…主に飲み会ですが(笑)、これも文句なく楽しいです。事態によっては命を賭けることもあるボランティアですから、結束力が強いですよ。

【60代男性】近くの公園の環境整備をやっています。本来これは行政の仕事なのでしょうが、地区住民として、自宅の環境整備の延長のつもりで、草刈りをしています。この公園を自分が守っているんだという気持ちになっていますね。無心になって草刈り機を動かしています。

【20代男性】大学時代、サークル活動の一環として、近隣の児童から希望者を募って、サマースクールを企画運営していました。児童と接するいい機会でした。教員になってからも、後輩の手伝いで参加しています。教員とは違った立場で児童たちに接することができ、とても新鮮です。「ブラック」と言われる教職ですが、後輩たちには、ぜひ教職のおもしろさや、児童と触れ合うすばらしさを、この活動を通して実感してもらい、教職に就いてもらいたいと願っています。

【50代女性】 学生時代からやっていたスポーツ競技で、県の成人女子代表チームの監督や、スポーツ少年団のコーチをしています。シーズンになると遠征で飛び回っています。
土日まで頑張って、疲れるんじゃない? とよく聞かれるのですが、「縦の関係」がしっかりしている学校組織とは異なり、競技人や協議関係者との関係は「横のつながり」ですので、とても充実感があり、疲れを感じません。若い頃は、周囲からの期待感で、「やらなければならない」とプレッシャーを感じていましたが、今はやることも増え、裁量の幅も大きくなって、毎日が充実している感じです。月曜に学校に行くと、土日にもらったエネルギーが後押ししてくれる感じです。学校での職務、スポーツ推進活動、家庭生活のトライアングルでうまくバランスがとれていますね。わたしにとっては、最高、最上のボランティア活動です。

このほか、退職してから、自宅を開放して近所の児童に勉強を教えている方、絵の描き方を教えている方もいました。
また、30歳前後の方で、学生時代に、東日本大震災の年に現場で奉仕活動をした方、20代の方でその後の復興支援ボランティアに参加された方、学校での学習支援やスクールサポートボランティアで入った方などたくさんのボランティア事例を伺うことができました。特に、震災関係ボランティア経験者は、道徳の授業で「教師の説話」、安全教育でのエピソードなどに活用しているそうです。

「自分の得意なこと」でちょっとした社会貢献や奉仕活動をするアナザーライフをもつことで、「まわりの人たちから元気をもらうことができる!」という多くの声を聞きました。本務でのストレスをすっかり忘れてしまい、逆にストレスで傷ついた部分をエネルギーで満たすことができるようです。休息をとりながらも無理をせず光り輝く週末、長期休みにしたいですね。この夏、何か見つけてみてはいかがでしょう。

厚生労働省ボランティア活動に関わるサイト
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1203-5e_0001.pdf

イラスト/したらみ


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マスターヨーダの喫茶室は土曜日更新です。

山田隆弘先生

山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。

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