「あたたかい言葉かけのスキル」をロールプレイで練習【ソーシャルスキル早わかり6】

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ソーシャルスキル学習は、対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」の学びです。今回は、相手を認める「あたたかい言葉かけ」について、3つのテーマにわけて学習していきます。

執筆/荒木秀一

少年と少女

ソーシャルスキル学習とは?

ソーシャルスキルとは、対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」です。
かつては家庭や地域社会での集団の遊びなどの中で自然と身についたソーシャルスキルですが、現代では少子化や地域の教育力の低下といったさまざまな要因によって身につけることが難しくなりました。そこで近年では、集団生活を基本とする学校での学級単位のソーシャルスキル教育の重要性が強調されています。
ソーシャルスキル学習は、「インストラクション」「モデリング」「リハーサル」「フィードバック」「定着化」の5段階で展開されます。詳しくは下記のリンクからご確認ください。
ソーシャルスキル早わかり(1)基礎知識その1
ソーシャルスキル早わかり(2)基礎知識その2

うれしそうな友達にかける言葉

子どもたちを観察すると、攻撃的で冷たい言葉がいろいろな場面で使われていることがわかります。自分の言葉で相手がどんな気持ちになるかを考えたうえでの、相手を認める「あたたかい言葉かけ」は、好ましい人間関係を築くための重要なスキルです。

ここでは「あたたかい言葉かけのスキル」を3テーマに分けて学習していきますが、3年生以上でスキル学習に慣れている場合は、一度にまとめて実施してもいいでしょう。そのときは、それぞれのリハーサルの場面を入れます。

授業の基本的な進め方

  1. 友達関係のアンケート(教育相談のアンケートなど)を利用して場面を提示する
  2. 問題場面をロールプレイで提示し、モデリングと話し合いでポイントを整理する
  3. あたたかい言葉かけの練習▶個人、グループ、全体で
  4. 学習のふり返り▶ふり返りカードを書く

授業の実際①「友達が賞をとったとき」

①つかむ インストラクション

アンケートをもとに、冷たい言葉やあたたかい言葉をかけられたときの気持ちを話し、めあてにつなげます。計画係や仲よし係などにアンケートの結果をプレゼンテーションさせると、学級の問題としての意識づけにつながるでしょう。

授業の約束を確認します。


②気づく モデリング

「あたたかい言葉かけ」の二つの場面をロールプレイで見て、感じたことや考えたことを話し合います。

教師同士や教師と子ども、子ども同士で演じます。授業協力者に演じてもらってもいいでしょう。学級の実態に合わせて変えていきましょう。そして、どんな意見も肯定的に認めます。

【ロールプレイ】

賞を獲った子に対して「きみが賞をとるなんてめずらしいね。」と言う子
賞を獲った子に素直に「すごいね!」と伝える子

スキルのポイント

○相手に近づく
○相手の目をしっかり見る
○相手に聞こえる声で言う
○気持ちをこめてやさしく言う


③やってみる リハーサル

●グループでする場合

①学習班(4〜6人)になる。
②一人があたたかい言葉をかける人、一人が賞状をもらってうれしそうにしている場面で、練習する。
③ほかの人はあたたかい言葉かけをした友達のどこがよかったかを、スキルのポイントをもとに伝える。

あたたかい言葉かけをした子のどこがよかったかを伝える様子

行動面(近づく、目を見る)、言語面(聞こえる声でやさしく言う)の両方のポイントを示すことも必要です。

先生や授業協力者は個別にくり返しほめて、スキルを強化します。

リハーサルの場面設定は、モデリングと同じにするのがいいでしょう。スキル学習をすでに経験していれば、違う場面で練習するのもいいでしょう。


④ふり返る フィードバック

上手にできた子どもに再度ロールプレイをしてもらい、よかった点を確認しながら、教師はくり返しほめます。その後、スキルのポイントを書いたふり返りカードに感想も含めて書きます。

「あたたかい言葉かけ1」ふり返りカード
クリックすると別ウィンドウで開きます

⑤生かす 定着化

「あたたかい言葉かけ」は、教師が子どもたちのようすを意識して観察すると、よく見られるようになるはずです。

帰りの会の「ありがとうコーナー」や先生の話のときに、今日見かけた「あたたかい言葉」と、そのときのようすを具体的に話します。子どもたちの意欲がさらに高まり、より定着化するでしょう。

困っている友達にかける言葉

困っている友達に言葉をかける実践的な学習に取り組みます。友達が困っているときにあたたかい言葉をかけると、自分もよい気持になることを知り、上手に言葉をかけられるようになることがねらいです。相手の立場を考え、思いやりのある言葉をかける体験をできるだけ多くさせたいものです。

授業の基本的な進め方

  1. 前時のようすと、数名の子どもの感想をふり返りカードを紹介して意欲づける
  2. 問題場面をロールプレイで提示し、モデリングと話し合いでポイントを整理する
  3. あたたかい言葉かけの練習▶個人、グループ、全体で
  4. 学習のふり返り▶ふり返りカードを書く

授業の実際②「友達が重い物を運んでいるとき」

①つかむ インストラクション

前時の学習の感想を聞き、がんばった子どもをほめます。そして、数人の子どものふり返りカードの感想を読みます。「あたたかい言葉かけのふり返りカードを見ました。みんなとてもよくがんばったようですね。この前の授業の感想に、こんな意見がありましたよ…」などと、前時の内容を思い起こさせるよう語りかけます。

授業の約束を確認します。


②気づく モデリング

「あたたかい言葉かけ」の二つの劇をロールプレイで見せ、最初の劇でどこが問題なのか考えさせます。そして、次の劇で、どんなところがよかったのか発表させます。

【ロールプレイ】

ポイントの中の「やさしく言う」ことの内容について考えさせるといいでしょう。「どうしたの? 手伝おうか。」とか「大丈夫?一緒に運んであげる。」など、子どもが自分なりに考えた言葉で進めていきましょう。

スキルのポイント

○相手に近づく
○相手の目をしっかり見る
○相手に聞こえる声で言う
○やさしく言う


③やってみる リハーサル

●グループで

①学習班(4〜6人)になる。
②一人があたたかい言葉をかける人、もう一人は重そうな植木鉢を運んでいるという場面で、グループ内でくり返し相手をかえて練習をする。
③ほかの人はあたたかい言葉かけをした人のよかったところを、ポイントをもとに発表する。

●みんなの前で

①二人一組になる。
②一人があたたかい言葉をかける人、もう一人は重そうな植木鉢を運んでいるという場面で、練習をする。
③ほかの人はあたたかい言葉かけをした人のよかったところを、ポイントをもとに発表する。


④ふり返る フィードバック

ほかの場面(給食の配膳のときおかずをこぼしてしまった友達に言葉をかける、帽子をなくして困っている友達に声をかけるなど)で、「あたたかい言葉かけ」にチャレンジさせます。

よかった点を子どもたちと確認しながら、教師はやった子どもたちをくり返しほめます。その後、ふり返りカードに記入し、感想も書きます。

「あたたかい言葉かけ2」ふり返りカード
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⑤生かす 定着化

スキルのポイントを掲示し、子どもたちがいつでもふり返ることができるようにします。このスキルは、日常生活の場面によくあることなので、教師は「あたたかい言葉かけ」をしている子どもを見つけたら、すぐその場でほめるようにしましょう。

あたたかい言葉に応える

あたたかい言葉をかけてくれた友達にあたたかい言葉を返すという、友達とよりよい関係を築くうえで欠かせないスキルの学習です。

ソーシャルスキル学習は、人間関係をよくすることが目的です。どちらか一方が働きかければよいというものではなく、双方向で関係づくりを進めるのがベストなのです。これまでの「あたたかい言葉かけ」は、がんばっている友達や困っている友達に対する言葉かけでしたが、ここでは、かけてもらったあたたかい言葉に応える「あたたかな言葉かけ」を体験します。

授業の基本的な進め方

  1. 前時のふり返りカードの記述や保護者からの感想(連絡帳や手紙)などを紹介し意欲づける
  2. 問題場面をロールプレイで提示し、モデリングと話し合いでポイントを整理する
  3. あたたかい言葉かけの練習▶個人やグループ・全体で
  4. 学習のふり返り▶ふり返りカードを書く

授業の実際③「忘れ物を友達が届けてくれたとき」

①つかむ インストラクション

前時の困っている友達に対する「あたたかい言葉かけ」の復習をして、実際にそのときにがんばっていた子どもをほめます。困っている友達に対する「あたたかい言葉かけ」のチャレンジカードや学校生活の中で、あたたかい言葉かけが実際にできている子どもがいたら必ずほめましょう。

また、保護者からのエピソードを伝え、学習の意欲づけをします。

授業の約束を確認をします。


②気づく モデリング

[体育館に忘れた帽子を友達が届けてくれました] 。ロールプレイの二つの劇を見せて、そのとき自分ならどうするかを考えさせます。

【ロールプレイ】

教師と子どもたちでロールプレイをし、問題点やよかった点を整理します。その後、子どもたちがそれぞれ自分で考えたあたたかい言葉のかけ方を、数人の子どもに実際にみんなの前でやらせてみましょう。ポイントがより明確になるでしょう。

スキルのポイント

○相手に近づく
○相手の目をしっかり見る
○相手に聞こえる声で言う
○感謝の気持ちをこめてやさしく言う


③やってみる リハーサル

●グループで

①学習班(4~6人)になる。
②一人が帽子を届けてくれる人、もう一人がそれに対してあたたかい言葉を返すという場面で、グループ内でくり返し相手を代えて練習をする。
③ほかの人はあたたかい言葉かけを返した人のどこがよかったかを、ポイントをもとに伝える。

先生や授業協力者は子どもを個別にくり返しほめて、スキルを強化します。


④ふり返る フィードバック

学習した「あたたかい言葉かけ①〜③」を、さまざまな場面を設定してチャレンジさせます。そして、よかった点を子どもたちと確認しながら、教師はやった子どもたちをくり返しほめます。その後、ふり返りカードに記入し、感想も書きます。

「あたたかい言葉かけ3」ふり返りカード
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⑤生かす 定着化

今日見かけた「あたたかい言葉」の発展形として、帰りの会の「ありがとうコーナー」や先生の話のときに、今日どんな「あたたかい言葉」のお返しを見たか、子どもたちに発表させましょう。

イラスト/宮地明子

「COMPACT64 ソーシャルスキル 早わかり」より

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