新学期にお薦めの「話合い活動」実践例|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
独特の実践で子供のやる気を伸ばすカリスマ教師、沼田晶弘先生。今回は、子供たちの関係性を深め、お互いの意見の違いを認め合う温かなクラスづくりに役立つ、新学期にお薦めの「話合い活動」の実践例を教えていただきました。
目次
「どうでもよいネタ」をテーマにした「クリティカルディスカッション」
ボクのクラスでは、国語の授業や朝の会で、よく話し合いをする。
ボクはこの話合いを「クリティカルディスカッション」と呼んでいる。クリティカルの和訳は、「批判的」だけど、ボクのクラスでは、「戦略的・分析的な話合い」という意味で使っているんだ。
クリティカルディスカッションでは、
- 「この3つのお菓子の中で、最強のお菓子はどれだ?」
- 「昔話の『ももたろう』。真のMVPは誰? キジ? イヌ? サル?」
- 「目玉焼きには何をかける? 醤油派? ソース派? 塩コショウ派?」
など、どうでもよいネタでディスカッションをする。
実は、この「どうでもよい」ことをテーマにすることがポイント。
どうでもよいことがテーマだと、話合いで負けても、とくに学校生活で不利になることは何もないから喧嘩にはならない。同じ意見の人に親近感を抱くことはあっても、別の意見の子に対して、嫌悪感を抱くことはまずない。
単に意見の違いを楽しみながら、いろいろな考えを知ることができるという点でも、まだクラスの中で信頼関係ができあがっていない新学期にはお薦めの活動だ。
ただし、「一番おいしいお菓子はどれか?」とか「一番好きなお菓子はどれか」というテーマを設定してしまうと、誰かの好みを否定してしまうことになるし、決して合意には至らないので避けたほうがいいだろう。相手を「批判」するというよりも、「非難」にもなりかねない。だから、3つのお菓子を提示して、「この中で『最強』のお菓子はどれ?」といった、緩いテーマで議論するといいだろう。
クリティカルディスカッションとディベートの違い
どうでもよいネタを話し合うといっても、ちゃんと勝ち負けも決めるよ。
一見、ディベートのようだけれど、ディベートとこのクリティカルディスカッションには明確な違いがあると思っている。
まず、ディベートは、賛成・反対など、2チームに分かれて、相手を論破することを目的として行うけれど、クリティカルディスカッションでは、クラスを3~4チームに分けて行っている。
なぜなら賛成・反対という2択になると、人数が多くて発言できる子が限られるし、勝ち負けがすぐにはっきりしてしまうから、諦めてしまう子もでてくる。
3チーム以上になると、発言の機会が増えるので、ダイナミックな話合いになる。 またどこかのチームが勝ちそうになったら、劣勢のチームは、もう一つのチームと協力して追いかけることもできるので、ゲーム性が増してより楽しめる。
クリティカルディスカッションで深く思考する力、話を聞く力も身に付く
そもそも、どうでもいいようなネタで議論を始めたのは、いくつか目的があったから。
感じ方、ものの見方は人それぞれ違うことを教え、互いに認め合える関係を作るという目的もあったし、非難し合うことなく、ディスカッションの能力を高めることも目的のひとつ。
ディスカッションの重要性は、学習指導要領でも指摘されているからね。
でも続けていくうちに、もっといろいろな効果があることに気付いた。
例えば、自分の意見を言うだけではなく、相手チームにどう反論されるか想像しながら発言するので、より深く思考して発言するようになった。また、自分が反論するためには、相手の話をよく聞かなくてはならないので「聞く力」も身に付いた。
慣れてきたら、話し合うテーマを子供たちに提案してもらうのもよいだろう。
この「クリティカルディスカッション」については、『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』(中央公論新社)に、詳しく書いているので、よかったら参考にしてみてほしい。
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沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
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取材・構成・文/出浦文絵