教室でのイライラ・ムカムカを笑い飛ばそう~現役教師が絵本作りでみつけたもの~

気がつけば、教室でいつもイライラ、ムカムカ。特定の子ばかり怒っていたりして、クラスの雰囲気をドンヨリさせたり、白けさせたり・・・。
そんな悩みは、先生誰しもが抱くもの。悩んだ末、怒りを笑いに昇華させる術をみつけ、自らの体験をもとに絵本として発行した松下隼司先生に、お話を伺いました。

ぼく、わたしのトリセツ

自分の「怒りっぽい性格」と向き合い、悩んだ日々

松下隼司(まつした じゅんじ)/大阪府公立小学校教諭
松下隼司(まつした じゅんじ)/大阪府公立小学校教諭

筆者:絵本を書こうと思われたくらいですから、先生はもともと、「怒り」に対する悩みをお持ちだったのですか?

松下(敬称略):私は、大阪の小学校で教師をして17年目(2021年1月現在)になります。もともと怒りっぽい性格で、初任のころは、お腹が減っただけでイライラしてしまってたんですよ。 今は慣れたのですが、初任のころは、12時半ごろから給食を食べるのが耐えられませんでした(笑)。
それで教師になって9年目のとき、自分の怒りの感情をコントロールできるようになりたくて、アンガーマネジメントの資格をとったんです。20万円ぐらいかけて、ファシリテーターとキッズインストラクターの資格を取得しました。

筆者:時間とお金をかけて、問題に向き合ったわけですね。その効果は?

松下:アンガーマネジメントの勉強をして、自分の怒りっぽい性格を冷静に分析できるようになりました。
分析すると、必要以上に「すぐ怒る」「長く怒る」「強く怒る」「以前にあったことをまた怒る」と、私は子どもにとって最悪の「怒り気質」だったことが分かりました

筆者:自分の気質を客観視できるようになったのは収穫ですね。具体的なマネジメントの技術で、有益だったものは何ですか?

松下:それが・・・。 アンガーマネジメントの理論は知識としては勉強になりましたが、自分は学校現場で使いこなせるようにはならなかったんですよ。
例えば、アンガーマネジメントには「6秒ルール」というテクニックがあります。簡単に言うと、すぐに怒るのを防ぐテクニックです。
でも、かなりの怒り気質の私にとって、6秒ルールは逆効果でした。時間が経てば経つほど、怒りの感情が膨れ上がっていくわけです。
例えば、放課後に保護者から「子どもがいじめられた」と連絡があれば、加害の子どもへの怒りがどんどん膨れ上がっていきます。
本来は、まず事情を確認するのが大切なのですが・・・。
自転車に乗って帰宅しているとき、翌日にどうやって怒るか、怒り言葉をぶつぶつ呟いて練習することがありました。すぐに怒れないことが、かえって怒りの感情が大きくなる原因になっていました。叱るのではなく、ただ怒ってたわけですね。

筆者:しかし、怒りを鎮めて冷静になるのは、相当難しいですよね。

松下:そうなんです。他にも、「コーピングマントラ」というアンガーマネジメントのテクニックも、自分には不向きでした。
コーピングは「対処」という意味で、マントラは「呪文」という意味です。
怒りそうな場面になったとき、自分を落ち着かせる「魔法の言葉」をつかって自分に言い聞かせるテクニックです。
具体的な言葉には、「まぁ、いっか」「大丈夫」「そう、きましたか」などがあります。「まぁ、いっか」と心の中で唱え続けていると、だんだん「全然、良くないわ!」に変わってきました。「大丈夫」が「大丈夫やないわ!」に、「そう、きましたか」が「そう、きやがったか!」と、だんだん怒りの感情が必要以上に膨れ上がってきてしまうタイプでした。

筆者:これは完全に逆効果ですね(笑)。

松下:ええ(笑)。高いお金とたくさんの時間をかけてもうまくいかずショックは大きかったですが、切り替えるきっかけになりました。

筆者:そこでプラス思考が。

松下:「怒りの感情をコントロールしよう」はやめて、「“怒り”の場面を、どうやったら“笑い”に変えられるか」と考えるようになりました。
「冷静になろう」という意識を捨てることで、気持ちが楽になったんです。すると、だんだん、必要のない怒りの感情の爆発、子どもにとって効果のない怒りの感情の爆発をコントロールできるようになりました。

筆者:良い意味で吹っ切れたわけですね。

松下:ええ。 怒りどころ・怒られどころを、逆に“笑い”で包む楽しいお話にしてみようと思いました。

怒り・怒られる状況を、双方が笑いあえる場に

ぼく、わたしのトリセツ

例えばこの本には、自分が悪いことをしたのに素直に「ごめんなさい」を言えない子が登場します。
「ちゃんと謝りなさい!」と怒鳴ってしまったりネチネチ怒ったりすると、子どもは心を閉ざしてしまいます。怒る方も、余計にイライラが大きくなってしまい、逆効果です。
そこで、こちらが「ごめんなさ」まで言ってあげるんです。こういう子も、残りの「い」の1音くらいは言えます。
そして、次は、こちらが「ごめんな」まで言ってあげると、残りの「さい」の2音を言えるようになります。
さらに次は、「ごめん」まで言ってあげると、「なさい」を言えます。
そして次は、「ごめ」だけ言います。すると、「んなさい」と子どもは言います。
「んなさい」が言いにくくて、笑いに包まれます。
最後にとうとうこちらが「ご」の1音だけを言うようになります。すると、子どもは「めんなさい」と言います。言う子どもも笑顔、周りの子どもも笑顔、教師も笑顔です。
最後は、「最初から言ってごらん」と手でジェスチャーをします。
子どもが最初から「ごめんなさい」を言うと、まわりから拍手喝采が起きます♪

「い」→「さい」→「なさい」→「んなさい」→「めんなさい」→「ごめんなさい」

その子の成長をまわりも見ているから、感動場面になります。そして、合計6回も謝っていることになりますから、それも褒めて伝えると笑いに包まれます♪

筆者:頭ごなしではなく、子どもの目線まで下りていくという。

松下:そうです。世の中には、たくさんの「トリセツ本」があるじゃないですか。息子、娘、夫、妻、男、彼女、親、小児感染症、足、英文法、北海道、大阪・・・などなど、本当にもう、さまざま。
でも、これらトリセツ本のほとんどは、「扱う側」目線で書かれたものばかりですよね。
「大阪のオススメはこんな場所ですよ」
「英文法は、こうやって取り組んだらいいですよ」
と、”上から目線”で書かれた本ばかりです。
だから逆に、「扱われる側」の視点に立ったトリセツ本を、絵本という形で表現しました。「私をこうやって扱って♪」と、扱う人に対して上から目線で伝えるトリセツ本にしたんです。

筆者:なるほど。先生のステキな実体験がもとになっているわけですね。

ぼく、わたしのトリセツ
ぼく、わたしのトリセツ

松下:はい。この本には他にも、
●すぐ拗ねる子ども
●拗ねたら長い子ども
●喧嘩っ早い子ども
●自分勝手な子ども
●素直に謝れない子ども
●仲直りが苦手な子ども
●下品なことを言う子ども
・・・などなど、私が出会った様々な子どもたちが登場します。怒ってばかりいた大人、怒られてばかりいた子ども、どちらもが笑顔になれる方法を考え、実践した内容に基づいています。
だからぜひ、みなさんならどうする・・・と考えながら読んでいただき、他に名案があれば、教えてもらえたら嬉しいです。

筆者:実体験で成長されただけでなく、この本の印税で、投資した分も戻ってきそうですね。

松下:それが、私は公務員なので、この本の収入はすべて辞退してるんですよ(笑)。

筆者:それは大変失礼しました(笑)。本当にステキな内容の絵本ですが、先生のまわりでの評判はどうですか?

松下:実は、海外の出版社から外国版の出版オファーが来たんです。今、具体的な検討に入ってるんですよ。世界中の子どもや教育に関わる大人の方の笑顔につながることになればとても嬉しいです!

筆者:それはまた、とびきりの評価ですね! 今後のご活躍に期待しています。どうもありがとうございました。

ぼく、わたしのトリセツ

ぼく、わたしのトリセツ

文:まつした じゅんじ
絵:kanoaki
アメージング出版
発売中(オンデマンド)

取材・構成/みんなの教育技術

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