ポストコロナ時代の「学校の新しい生活様式」を踏まえた学校運営
コロナ禍に揺れる教育現場。子どもたちの安全を守りながら学校教育を再開し、児童生徒の学びの機会を保障していくには、どのような手立てが必要でしょうか。コロナ時代からポストコロナ時代への学校マネジメントについて考えます。
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学校再開後も元の生活は困難
世界中の人々の生命を脅かし、都市機能を停止させるなどの大きな影響をもたらした新型コロナウイルス。日本の学校教育も、安倍首相による全国一斉の休校要請を受けてほとんどの学校が休校に入り、多くの地域で5月末まで続くことになりました。
子どもたちにとってはおよそ3か月の学校生活が失われてしまったことになり、学校が再開したからといって、すぐに元の生活に戻れるわけでもありません。失われた時間をいかに取り戻し、そして新しい形の学校生活をつくり出していくか。学校リーダーの適切なマネジメントが、これまで以上に求められることになります。
学校再開にあたっては、5月21日に文部科学省が「学校再開等に関するQ&A」を更新、さらに5月22日には「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜『学校の新しい生活様式』〜」を通知し、学校再開後の具体的な新型コロナウイルス感染症対策や、具体的な教育活動の進め方、家庭との連携のあり方などを示しました。
このうち、「衛生管理マニュアル」においては、政府が提唱する「新しい生活様式」を踏まえ、地域の感染状況(レベル1〜3)ごとに、身体的距離の確保や、感染リスクの高い教科活動、部活動(自由意思の活動)についてそれぞれの行動基準を明示しました。そのうえで、感染症対策についての学校の役割として、保健管理体制の構築や学校医、学校薬剤師との連携、朝の検温や共用物品の消毒などの実施、感染者が確認された場合の連絡体制の確認などを求めています。
「新しい生活様式」を踏まえた学校の行動基準
子どもの学びを保障するために見通しをもった教育課程編成を
「学校の新しい生活様式」への確実な移行とともに、この約3か月間の学習の遅れをどう取り戻すかも大きな課題です。
再開後もしばらくは分散登校や短縮授業などで学習時間の確保が難しい状況が続きます。夏休み、冬休みの短縮や土曜授業の実施、さらには学校行事の縮小・中止などに加え、ICTを活用した遠隔学習の実施や、その成果をどう評価するかといった点も含めて、柔軟な発想での対応が必要になるでしょう。学習の遅れを複数年で解消していくという文部科学省が示した特例的対応を含め、見通しをもった教育編成が求められます。
また、今回の休校措置に伴い、「9月入学」の議論も急浮上しました。これについては、欧米のスタンダードに合わせるという意味でのメリットは認めつつも、拙速な導入には反対、という声が多くありました。ただでさえ先の見通せない不安な状況にある児童生徒のためにも、慎重な検討が必要です。
なお、このたびの新型コロナウイルスをめぐる日本国内の対応においては、各自治体の首長によるメッセージ発信、リーダーシップ発揮が注目されました。同様に、このコロナ禍における学校運営においても、スクールリーダーたる校長のリーダーシップおよびマネジメント力が大いに問われることになるでしょう。
構成・文/葛原武史(カラビナ)
『総合教育技術』2020年7/8号より