ここから始める、新採教員の学校デビュー! 社会人としての基本的なマナーを再確認しよう!【教壇に立つあなたへ】

4月を迎え、新採教員の皆さんは、期待と不安に胸を膨らませていることと思います。たとえ新人でも、学校に入れば1人の教員として扱われます。そこで是非とも確認しておきたいのが、教育現場で求められる社会的なスキルやマナー。これは子どもたちへの指導が中心の生活では、なかなか身につけにくいものでもあります。「教員は社会経験を積んでから教員になるべき」という言葉がよく聞かれるのも、そのせいでしょう。今回は、新採や若手教員のみなさんと一緒に、社会人として必要かつ不可欠な基本的マナーについて、見ていきたいと思います。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

目次
仕事の心構えと姿勢
職員室や学校内での基本的な姿勢に関して、意識すべきポイントをいくつか挙げます。
①困ったときは正しい相手に相談しよう
教職生活では、毎日のように疑問や悩み、相談事が発生します。その時に最初に相談する相手を間違えると、問題が複雑化することがあります。基本的なルールとして、相談先を次のように整理しておきましょう。
⑴ 人事関連は校長
⑵ 勤務関係は教頭(副校長)
⑶ 教育課程・計画は教務主任
⑷ 授業に関することは学年団教員あるいは先輩
⑸ 健康に関することは養護教諭
しかし、あなたにとって最も大切なのは、気安く何でも相談できる身近な先輩を作ることです。是非とも、早くそんな人を見つけられるように、自分から心を開いていきましょう!
②上から目線の言葉に注意しよう
ねぎらっているつもり、敬意を示しているつもりでも、逆効果になる言葉があります。
同僚や先輩が仕事を終えたときに「ご苦労様!」と言いたくなることがありますが、この言葉は目上の人には使わないようにしましょう。なぜならこれは、(自分のために)苦労をかけたね、という表現だからです。目上の人に対しては、「お疲れ様です」がいいですよ。
ただ、人によってはこの表現が好きではなく、「疲れてないよ」などと返してきたりします。
そんな人には「今日も一日終わりましたね」とか「明日もよろしくお願いします」と言った、前向きな挨拶ワードをかけましょう。
また、「感心しました」という表現も上から目線に聞こえがちなので、「感銘を受けました」「感動しました」といった表現に変えると良いでしょう。
③申請書の提出は「お手渡し」で
よほど急いでいるときや相手が長く不在をしている場合を除き、書類のたぐい(例えば、有給休暇の申請など)は、上司に直接手渡しすることが基本です。教育現場では「手交(しゅこう)する」なんて言ったりしますね。あらゆる仕事は、人と人のコミュニケーションで成り立っています。そして円滑なコミュニケーションは信頼関係で作られます。こうした小さなやり取りも丁寧に行うことで、あなたが誠実で信頼のおける人間だと示すことができますよ。
④出張の出発地と帰着地は学校
出張時は、学校が出発地(起点)となり、帰着地となるのが原則です。自分の家から直行・直帰するような場合は、事前に必ず上司の許可を得ておくことが大切です。変更後の移動ルートについては、上司にきちんと報告し、許可をもらうことで、無用なトラブルを避けることができます。
⑤頼まれごとや人からの指示を最優先に
例えば、上司や先輩に呼ばれたときや、何か頼まれごとをされたとき。
のっぴきならない自分の仕事がある場合は別ですが、仕事に優先順位をつけて処理できるなら、人から言われたことを最優先するように考えましょう。特に校長や教頭は忙しいことが多いため、対応のタイミングを逃さないようにすることが重要です。人から言われた仕事を優先することで、仕事の取りこぼしも減らすことができますよ。
電話の受け答え
学校での電話応対も、印象に大きな影響を与えます。以下の点を意識して、丁寧な対応を心がけましょう。
①電話では名乗る
電話に出る際には、まず「○○小学校、◇◇です」と名乗ることが基本です。その後、用件を承った際にも再度名乗ることで、より丁寧で誠実な印象を与えることができます。ただし、いたずら電話や不審な電話に対しては、名乗らないという学校のルールがある場合もありますので、その場合は規定に従って対応しましょう。
②3コール以内で応答
電話は、3コール以内に出ることを心がけましょう。それ以上待たせてしまったら、開口一番「大変お待たせいたしました」と恐縮の気持ちを込めてください。これだけで、相手の印象はずいぶん変わります。
また、電話は相手の顔がわからないため、声のトーンが信頼感を左右すると言っても過言ではありません。明るく、はっきりとしたトーンで話すことを意識しましょう。少しゆっくり話そう、と意識するのもいいですよ。
③不在の場合の対応
上司や先輩でも、外部の人に対してはすべて常体の表現で伝えます。一部でも敬体を入れないように気をつけてください。
良い例:「田中は現在、席を外しております」
悪い例:「田中先生はいらっしゃいません」
取り次ぐ相手が不在の場合、まず「お急ぎですか?」と用件の緊急性を確認します。
相手が急いでいる場合は、その理由もあわせて教えてくれるはずです。所在を確認したり、伝言を素早く伝えたりするなどの対応をしてください。
相手が急いでない場合は、「こちらから折り返させていただく」「再度ご連絡を頂戴する」など、その後の対応を相談します。
④電話を切るタイミング
電話をかけた方が先に電話を切るのがマナーです。
会話が終わった後、相手が電話を切ったのを確認してから、受話器をゆっくりと置くようにしましょう。このひと手間を加えることで、相手に対して丁寧な印象を与えることができます。
言葉遣い
学校内外で使う言葉遣いは、教員としての信頼を築くために非常に重要です。言葉ひとつひとつが相手に与える印象を大きく左右します。適切な言葉遣いを意識することで、より良い人間関係を築くことができ、信頼される教員として成長することができます。
①万能ワード「恐れ入ります」「恐縮です」
「恐れ入ります」は、感謝や謙遜を表す万能ワードです。相手から褒められたときや、感謝の気持ちを伝えたいときに「恐れ入ります」と謙虚に返すことで、相手に対して敬意を示すことができます。この表現を上手に使うことで、相手との信頼関係を深めることができます。
また、「恐縮です」は、相手に何かをしてもらったときに「恐れ入ります」と同じ意味で使えるほか、何かを断るときにも使える便利な言葉です。
「恐縮ですが、私は遠慮させていただきます」
などといった感じです。
②依頼時には「さしつかえなければ」
何かをお願いする際に「さしつかえなければ」という言葉を加えると、相手が依頼を快く受け入れやすくなります。この一言を添えることで、依頼の印象が柔らかくなり、相手に対して配慮を感じさせることができます。
③「おかげさまで」の使い方
相手に感謝の気持ちを表す際に「おかげさまで」を使うことで、相手への感謝や敬意を強調することができます。この表現は、感謝を伝えるだけでなく、相手の支援や協力に対する深い感謝を示すことができ、より強い印象を与えます。
服装
教員としての清潔感を保つために、服装にも十分な配慮が必要です。適切な服装は、教職にふさわしい印象を与え、児童や保護者、同僚に対して信頼感を与えるためにも大切です。
①スポーツソックスはNG
学校でよく見かけることとして、スーツにホワイトソックスやカラフルなソックスを合わせることがありますが、これはマナー的にNGです。スーツには、落ち着いた色味のソックスを選ぶことが基本です。シンプルで清潔感のある服装が、教員としてふさわしい印象を与えます。
②清潔感を大切に
汚れた服やしわのあるシャツでは、清潔感が欠けて見えます。常にきちんとした服装を心がけ、児童や保護者に良い印象を与えるようにしましょう。服装だけでなく、手入れの行き届いた服を着ることが、プロフェッショナルとしての第一歩です。
③ジャージ通勤は避ける
運動会や体育大会などの特別な場面を除き、ジャージで通勤することは控えましょう。地域社会の目もありますので、公共の場での印象を大切にする必要があります。特に、ホーム着のようなパーカーやスウェットでの通勤は避けるべきです。教員として、社会的な場にふさわしい服装を意識しましょう。
時間の管理
時間の管理も教員として大切なマナーの一つです。
①出勤時刻は余裕をもって
家庭の特別な事情がある場合を除き、始業30分前には学校に到着し、準備を整えることが大切です。
また、何かを書いたりまとめたりと言った
ゆとりをもつことでいい児童といい朝の出会いを迎えることができます。
②集合は15分前に到着
研修や教員同士の集団行動などは、必ず15分前には到着するように心がけましょう。
「集合時間までに集まる」のではなく、「集合時間に行動を開始する」というのが本来です。
集まりが悪いと全体の士気にも関わりますし、研修の場合は主催者側の事前準備を円滑にする配慮にもなります。もし遅れる場合は、事前に上司を通じて主催者に連絡を入れることが必要です。
ただし、あせって事故を起こしたり、事故に巻き込まれたりするなら遅刻の方がましです。安全第一、健康第一を心がけてください。
③訪問時は約束の時間の1分前に
集団行動以外の外部訪問は、約束の時間の1分前くらいに訪れるようにします。
特に家庭訪問で保護者のところに行く場合などですね。約束の時間の1分前くらいに、ノックしたり呼び出しベルを押したりします。もっと早いほうが印象が良いのでは? と思われる方もいらっしゃると思いますが、訪問先の相手が準備するのにも配慮している、という観点から、早すぎないほうがいいのです。
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教職における基本的なマナーについて基本中の基本を紹介してきました。これは単なる形式的なものではなく、職業としての責任感やプロフェッショナリズムを育むために欠かせない要素です。特に、新年度を迎えるにあたり、これから教職に就く皆さんや経験の浅い教員の皆さんにとって、社会人としての心構えをしっかりと持つことが大切です。教職の現場では、児童との関わりを通して多くの学びがありますが、その中でも「他者を尊重する」という姿勢が常に求められます。社会で働く上での基本的なマナーや礼儀作法は、同僚や保護者、地域の人々との信頼関係を築くために非常に重要な役割を果たします。
教職に就いてからは、すぐにでも実践すべきマナーが多くありますが、それらを身につけることは長い目で見れば、自分自身の成長にもつながります。例えば、電話の受け答えや言葉遣い、時間の使い方など、日々の小さな行動が積み重なっていくことで、周囲の信頼を得ることができます。それは、単に外見的なマナーに留まらず、自分の内面的な成長を促し、教育現場での役割を果たすための土台を作ることにもつながります。
さらに、教職におけるマナーは、単なる「守るべきルール」ではなく、他者に対する気配りや思いやりの表れであることを忘れないようにしてほしいです。児童や保護者、同僚とのコミュニケーションは、職場内での円滑な人間関係を築くだけでなく、教育活動そのものにもいい影響を与えるからです。たとえば、コミュニケーションにおいて丁寧で礼儀正しい態度を取ることが、児童にとってもいい模範となり、信頼関係を築く第一歩となります。 新年度を迎えるにあたり、社会人としての心構えを持ち、教職生活を充実させるために日々意識していきましょう。他にも多くのマナーがありますので、しっかりと学び続けていくことをお勧めします。
【参考図書】
・『教師のための実践マナーブック』(教育開発研究所)
・『もっと愛される「大人のマナー・常識」辞典』(大和書房)
・『知らないとゼッタイ恥をかく社会人のマナー186』(角川文庫)
山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。