考えをはっきりさせるには「なぞる」「描く」【ノート指導5】
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教科書の絵の上にノートを置いてなぞったり、絵を加えて描いたりすることで、自分の考えをはっきりさせることができるのです。文章を書くことは苦手でも、絵を描くことが好きな子にはうってつけの指導法をご紹介します。
執筆/北岡隆行
目次
白いノートを用意する
考えをはっきりさせる方法として「なぞる」「描く」があります。書くことは苦手でも、絵を描くことが好きな子にはうってつけです。
罫線の入っていない白いノートを用意しましょう。そうすると、教科書や資料集に重ねてなぞったあと、コピーして掲示できます。学級通信にのせるとき(個人情報には注意。学校内での報告と保護者に許可を得てから)も、罫線が残らないので便利です。
教科書の絵をなぞって描く
「けむりのきかんしゃ」(教育出版1年上)にえんとつそうじのおじいさんが、落ちた星を煙突の先にのせ、空に返してあげようという場面があります。そのさし絵の星をなぞらせました。
教科書の絵の上にノートをおいてなぞらせ、「おじいさんに、煙突のてっぺんに乗せてもらったとき、星はどんな顔をしているかな? ノートに描いてごらん。」と問題を出しました。
顔の表情を描くことで、自分の考えを決めようというわけです。描き終わったころを見はからって、こう聞きました。
「なぜ、そう思うの?」
その表情に決めた理由を聞いたのです。
どの子もあらためて教科書を読み直し、考えました。
喜んでいる
- 「空に返してあげよう」と言ったから、本当に空に帰れるんだなと思ったの。
- 助けてくれたから、喜んでいるの。
喜んでいない
- 高いところから下を見るとこわいから、泣いている。
- 煙突の中に落ちちゃったら、こわいから。
誰でもできる「絵を描くこと」で、全員を授業に参加させます。そして、描いた絵をもとに、「なぜ?」と理由を考えさせるのです。
絵を描く
「ありの行列」(光村3 年上)の3時間目、2つの実験の前半部分を扱い、絵を描かせました。描くことで文章に戻らざるを得ない場面をつくったのです。
①はじめに、ありの巣から少しはなれた所に、ひとつまみのさとうをおきました。
②しばらくすると、一ぴきのありが、そのさとうを見つけました。
③これは、えさをさがすために、外に出ていたはたらきありです。
④ありは、やがて、巣に帰っていきました。
⑤すると、巣の中から、たくさんのはたらきありが、次々と出てきました。
⑥そして、列を作って、さとうの所までいきました。
⑦ふしぎなことに、その行列は、はじめのありが巣に帰るときに通った道すじから、外れていないのです。
「ありの巣があったんだね。(うん)砂糖をおいたんだね。(うん)どのくらい?」
「ひとつまみ。」
「手でやってごらん。(子どもが手で表現するのを見て)なるほど、このぐらいか。で、どのくらい離れているの?」
「少し離れたところ。」
「何センチくらい?」
という流れで、黒板に絵①を描きながら進みました。
「二番目の文を絵に描いてごらん。巣と砂糖を描いて、ありが砂糖を見つけるまでを線で描いてごらん。」
ノートに描かれた絵に次々と × をつけまし た。どれも②のような絵なのです。子どもたち に、????????が広がります。
たった一人、③のように描いた子がいました。もちろん大きな◎をつけました。
ほかの子は、再び教科書の文を読み始めます。「しばらくすると」はすぐに見つけましたが、「見つけました」の意味はわかりませんでした。
教科書に④のようなさし絵があります。
さし絵④に線を描かせたのが⑤です。
それでできたのが⑥です。
2本は同じ線になるはずですが、それに気づきません。ここで赤ペンの登場です。どの子のノートにも〇がつきませんが、しばらくすると、何人かが気づきます。描いてみて、自分の考えが出ているからこそ気づくのです。
ここでも、描くことで、教科書の言葉に戻らざるを得ない場面をつくりました。子どもたちの「?」が「!」になりました。そして最後に、次の疑問を投げかけて、授業を終えました。
「 列の先頭にいるありは、砂糖を見つけたありかい?」
イラスト/相澤るつ子
「COMPACT64 ノート指導 早わかり」より