考えをはっきりさせるには「なぞる」「描く」【ノート指導5】
- 連載
- ノート指導早わかり
教科書の絵の上にノートを置いてなぞったり、絵を加えて描いたりすることで、自分の考えをはっきりさせることができるのです。文章を書くことは苦手でも、絵を描くことが好きな子にはうってつけの指導法をご紹介します。
執筆/北岡隆行
![教科書の挿絵の星をノートになぞって描きうつす子](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/dec70f8ce2c6e01b4177dc7ab443595f-1024x924.jpg)
目次
白いノートを用意する
考えをはっきりさせる方法として「なぞる」「描く」があります。書くことは苦手でも、絵を描くことが好きな子にはうってつけです。
罫線の入っていない白いノートを用意しましょう。そうすると、教科書や資料集に重ねてなぞったあと、コピーして掲示できます。学級通信にのせるとき(個人情報には注意。学校内での報告と保護者に許可を得てから)も、罫線が残らないので便利です。
教科書の絵をなぞって描く
「けむりのきかんしゃ」(教育出版1年上)にえんとつそうじのおじいさんが、落ちた星を煙突の先にのせ、空に返してあげようという場面があります。そのさし絵の星をなぞらせました。
教科書の絵の上にノートをおいてなぞらせ、「おじいさんに、煙突のてっぺんに乗せてもらったとき、星はどんな顔をしているかな? ノートに描いてごらん。」と問題を出しました。
顔の表情を描くことで、自分の考えを決めようというわけです。描き終わったころを見はからって、こう聞きました。
「なぜ、そう思うの?」
その表情に決めた理由を聞いたのです。
どの子もあらためて教科書を読み直し、考えました。
![星の挿絵に表情を書き入れる(喜んでいる顔と喜んでいない顔)](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/hosi.jpg)
喜んでいる
- 「空に返してあげよう」と言ったから、本当に空に帰れるんだなと思ったの。
- 助けてくれたから、喜んでいるの。
![「喜んでいる」という意見の子](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/086725540791e1fa7cf60b99b97ff704.jpg)
喜んでいない
- 高いところから下を見るとこわいから、泣いている。
- 煙突の中に落ちちゃったら、こわいから。
![「喜んでいない」という意見の子](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/240fa9dab21bad1228f249bb5c05ab97.jpg)
誰でもできる「絵を描くこと」で、全員を授業に参加させます。そして、描いた絵をもとに、「なぜ?」と理由を考えさせるのです。
絵を描く
![アリ](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/8fbfe50a355be7fdb6cecb37e8dad9d0.jpg)
「ありの行列」(光村3 年上)の3時間目、2つの実験の前半部分を扱い、絵を描かせました。描くことで文章に戻らざるを得ない場面をつくったのです。
①はじめに、ありの巣から少しはなれた所に、ひとつまみのさとうをおきました。
②しばらくすると、一ぴきのありが、そのさとうを見つけました。
③これは、えさをさがすために、外に出ていたはたらきありです。
④ありは、やがて、巣に帰っていきました。
⑤すると、巣の中から、たくさんのはたらきありが、次々と出てきました。
⑥そして、列を作って、さとうの所までいきました。
⑦ふしぎなことに、その行列は、はじめのありが巣に帰るときに通った道すじから、外れていないのです。
「ありの巣があったんだね。(うん)砂糖をおいたんだね。(うん)どのくらい?」
「ひとつまみ。」
「手でやってごらん。(子どもが手で表現するのを見て)なるほど、このぐらいか。で、どのくらい離れているの?」
「少し離れたところ。」
「何センチくらい?」
![先生と子供](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/efa3794a456cc45a5f4490840248f4e1.jpg)
という流れで、黒板に絵①を描きながら進みました。
![アリの巣と砂糖](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/1-2.jpg)
「二番目の文を絵に描いてごらん。巣と砂糖を描いて、ありが砂糖を見つけるまでを線で描いてごらん。」
ノートに描かれた絵に次々と × をつけまし た。どれも②のような絵なのです。子どもたち に、????????が広がります。
![ノートにアリの軌道を書き入れる(アリはまっすぐ進む)](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/2-2.jpg)
たった一人、③のように描いた子がいました。もちろん大きな◎をつけました。
![ノートにアリの軌道を書き入れる(アリの軌道はぐにゃぐにゃ](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/3-1.jpg)
ほかの子は、再び教科書の文を読み始めます。「しばらくすると」はすぐに見つけましたが、「見つけました」の意味はわかりませんでした。
教科書に④のようなさし絵があります。
![アリの挿絵](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/ari4-1-1024x264.jpg)
![先生「列をつくってと書いてあるけど、行列が見えるかい?1本の線で描けるかい?」](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/1209db4113448ca328630bd89d27b631.jpg)
![「うん」と答えながらノートに記入する子](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/05053bfaff0311329e53233e040c1a72.jpg)
さし絵④に線を描かせたのが⑤です。
![挿絵に線を書き入れたもの](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/ari5-1024x257.jpg)
![先生「はじめのありが巣に帰るときの道を、赤鉛筆で描いてごらん」](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/0779231a68552b7990c9d256730059ad.jpg)
それでできたのが⑥です。
![挿絵に赤鉛筆で記入したもの](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/ari6-1024x252.jpg)
2本は同じ線になるはずですが、それに気づきません。ここで赤ペンの登場です。どの子のノートにも〇がつきませんが、しばらくすると、何人かが気づきます。描いてみて、自分の考えが出ているからこそ気づくのです。
ここでも、描くことで、教科書の言葉に戻らざるを得ない場面をつくりました。子どもたちの「?」が「!」になりました。そして最後に、次の疑問を投げかけて、授業を終えました。
「 列の先頭にいるありは、砂糖を見つけたありかい?」
![先生「あれ、同じ線じゃないか?はじめのありが通った道筋からはずれてないって書いてあるもの。」
子「あっ、そうだ!」](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2019/11/2e9b82e7b36d124def528a9d2f6c2f48.jpg)
イラスト/相澤るつ子
「COMPACT64 ノート指導 早わかり」より