小5 B[相互理解、寛容]相手を許す心を育てる授業 前文部科学省教科調査官同行監修 動画・道徳科実践レポート<最終回>

連載
前文部科学省教科調査官同行監修 動画・道徳科実践レポート

前文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官/十文字学園女子大学教育人文学部児童教育学科 教授

浅見哲也

今回は小5の内容項目B[相互理解、寛容]、主題名「相手を許す心」の授業レポートをお届けします。世の中が不安定になっている時代だからこそ、特に道徳性を養う道徳科の授業が重要視されています。道徳教育の研究に取り組んでいる小学校に、浅見哲也前教科調査官とともに伺い、前調査官からのアドバイスを受けつつ、授業実践を動画で分かりやすく紹介します。前調査官と授業者とのミニ対談の動画もご覧ください。

※動画の中の音声が途切れている部分は、子供の名前を消している個所です。

授業者/千葉県公立小学校教諭・安田 愛

小5 B[相互理解、寛容]相手を許す心を育てる授業

主題名:相手を許す心 内容項目 B[相互理解、寛容]
教材名:「銀のしょく台」(教育出版)
本時のねらい:銀の食器を盗んだジャン・バルジャンに対して、銀の燭台まで手渡し、罪を許したミリエル司教の気持ちや銀の燭台を渡されたジャン・バルジャンの気持ちを話し合うことを通して、広い心で相手と関わることへの理解を深め、自らの生活に生かそうとする態度を育てる。

導入

1 「許す」「許さない」の経験について発表する

子供の経験を想起させることで、本時の学習への関心を高める。

相手のことを許せなかったことはありますか。

好きなものを変なふうに言われたとき。

自分のものを許可なく勝手に使われたとき。

嫌なことを言われたとき。

許したことはありますか。

きちんと謝ってくれたら、反省していることが伝わってくるから許せると思います。

何回も繰り返さないで、1回で終わったら許します。

展開

2 ジャン・バルジャンの様子やミリエル司教の行動を整理する

教材を事前に配付し、内容を理解するために読んでおくことを指示しておく。場面絵を貼り、登場人物や状況を確認しながら、内容について共通理解できるようにする。また、それぞれの性格や印象を自由に発表し、板書をしてまとめる。

3 本時の学習問題を確認する


相手を許すには、どんな思いが大切だろうか。

どんな思いが大切なのか最後の考えと比べるために、初めて読んで考えたことをノートに書く。


自分が司教の立場だったら、許す? 許せない?

「心情メーター」の用紙を子供たちに配付。自分の考えが「心情メーター」のどの位置にあるかを明確にし、理由を書く。
「心情メーター」を板書し、各自の考えの位置にネームプレートを貼る。

授業の動画はこちら

<許す>

これから変わっていくと信じたいので、許す。

この場で更生させ、二度と盗まないようにさせるためのきっかけになるかもしれないから、許す。人のやさしさが分かるようになるかもしれない。

<許せない>

許したら、他の場所でもっと悪いことをするかもしれないから、許せない。

泊めて、食事まであげたのに、高価な食器まで盗むのは許せない。

<許すと許せないの中間>

銀の食器を盗まれて許せない気持ちもあるけど、ジャン・バルジャンは刑務所を出たばかりで貧乏だったから、銀の食器を盗んだことを許すかもしれない。


どうしてミリエル司教は許すことができたのか。

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銀の燭台まで渡されたジャン・バルジャンはどんな気持ちだったのか。

ジャンの気持ちを近くの人と話し合う。

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終末

4 「今日の学び」を書き、学習のふり返りをする

「許すには、どんな心が大切か」、自分の考えをノートに書く。

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本時の板書


相手を許すには、相手の立場になって人の気持ちを理解することが大切だと思いました。
私は相手を許すには、やさしい心が大事だと思いました。理由は、やさしさで人の心は変わると思ったからです。
ミリエル司教のような人が人の心を動かして、気持ちや行動を変えるかもしれない。でも自分が行動を変えないと変わらない。
今日の勉強をして相手を許すには、やさしさや情け深い心が大切だと思いました。なぜかというと、相手が悪いことをしたとしてもチャンスをあげれば、相手は変わってくれるかもしれないからです。

前文部科学省教科調査官・浅見哲也先生からのアドバイス

授業者・安田愛先生とのミニ対談はこちら

※この企画は今回をもって終了になります。長い間、ご視聴いただきましてありがとうございました。

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プロフィール
浅見哲也(あさみてつや)
前文部科学省教科調査官・十文字学園女子大学教授/1967年埼玉県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、1990年より埼玉県熊谷市及び深谷市内公立小学校教諭、埼玉県教育局指導主事、深谷市教育委員会指導主事、深谷市内公立学校教頭、小学校校長兼幼稚園長を経て、2017年より文部科学省教科調査官、2023年4月より十文字学園女子大学教授。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追究中。

取材・文・構成/浅原孝子 撮影/北村瑞斗 イラスト/横井智美

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