小3 A [正直、誠実]正直な心を育てる授業 前文部科学省教科調査官同行監修 動画・道徳科実践レポート

連載
前文部科学省教科調査官同行監修 動画・道徳科実践レポート

前文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官/十文字学園女子大学教育人文学部児童教育学科 教授

浅見哲也

今回は小3の内容項目A[正直、誠実]、主題名「かくさずに正直に」の授業レポートをお届けします。世の中が不安定になっている時代だからこそ、特に道徳性を養う道徳科の授業が重要視されています。道徳教育の研究に取り組んでいる小学校に、浅見哲也前教科調査官とともに伺い、前調査官からのアドバイスを受けつつ、授業実践を動画で分かりやすく紹介します。前調査官と授業者とのミニ対談の動画もご覧ください。

※動画の中の音声が途切れている部分は、子供の名前を消している個所です。

授業者/千葉県公立小学校教諭・亀田陽子

小3 A[正直、誠実]正直な心を育てる授業

主題名:かくさずに正直に 内容項目 A[正直、誠実]
教材名:「まどガラスと魚」(教育出版)
本時のねらい:健一の気持ちや行動について話し合うことを通して、正直に行動することのよさに対する考えを深め、過ちは認め、正直に明るい心で生活しようとする心情を育てる。

導入

1 「自分がいけなかったと分かっていても、正直に言えなかったことがある?」について事前にとったアンケート結果を提示し、子供たちの問題意識を高め、学習課題へとつなげていく。

事前アンケートについて

「自分がいけなかったと分かっていても、正直に言えなかったことがある」という質問に対して、16人が「ある」と答え、4人は「ない」と答えた。

本時のテーマを確認する
テーマ:正直

展開

2 教材を読んで、内容について話し合う

教材の内容を理解し、すべての子供たちが授業に参加できるようにするために、挿絵を使ってあらすじを確認する。

3 貼り紙を見た健一の気持ちを話し合う

正直に謝ろうと思う気持ちや、言おうかどうかと迷う気持ち、正直に話して叱られるのが怖いから言えないと思う気持ちに共感できるようにする。


健一は、貼り紙を見たときにどんな気持ちだったでしょうか?

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このまま黙っていたら、どんな気持ちになるかを考えることができるようにする。


このまま謝らなかったら、どんな気持ちになると思いますか?

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4 山田さんのお姉さんの行動を見た気持ちを話し合う

言うのをためらう気持ちや山田さんのお姉さんの行動をきっかけに、健一に共感して気持ちが考えられるようにする。


健一は、山田さんのお姉さんの行動を見た後、どんなことを考えたでしょう。

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健一は、山田さんのお姉さんみたいに謝ったらどんな気持ちになると思いますか?

謝ってよかったという気持ちになると思います。すがすがしい気持ちになると思います。

もやもやした気持ちが消えると思います。

心配していたことがなくなると思います。

健一に、「怖いから謝れない」といった迷う気持ちはないと思いますか?

すぐに謝ろうとは思っていなかったけど、謝るか謝らないかを考えていたと思います。

後悔するから謝ったと思います。

怖い人かもしれないけど、優しい人かもしれないので、正直に言えばよいと思います。

5 正直に謝った健一の気持ちを話し合う

正直に話してよかったと思う気持ちに共感し、正直な行動は相手とのよい関係をつくることができることに気付けるようにする。


健一は正直に言って、おじいさんにボールを返してもらい、どんな気持ちになったでしょう。

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健一が正直に謝って、おじいさんはどんな気持ちになったでしょう。

正直に言ってくれてありがとう。いい子だなと思ったと思います。

大人になってえらい子になると思ったと思います。


正直に行動したことでよかったことは何でしょう。

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終末

6 「今日の学び」を道徳ノートに書く

各自で自分の思いや考えをノートに書く。実践への意欲を喚起する。

本時の板書


正直に言うことは、よいことだと思いました。正直に行動をすることは大切だと思いました。正直に行動したら、頭の中もすっきりするし、もやもやもなくなるからよいことだと思いました。
正直に言ったら心の中がすっきりしてよかったと思うから、正直に言ったほうがよいことを学びました。
もし、まどガラスを割ってしまったら、その家の人が怖くても、嘘はいつかばれるし、ばれなくてもずっと謝らなかったら、もやもやした気持ちやいやな気持ち、気になっていた気持ちが残るから、しっかり謝って正直な気持ちを大切にしたいです。
私は今日の勉強で、正直に謝れば認められたり、「ごめんなさい」の一言を言ったことによってされた人もした人もよい気持ちになったりすることが分かりました。

前文部科学省教科調査官・浅見哲也先生からのアドバイス

授業者・亀田陽子先生とのミニ対談はこちら

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プロフィール
浅見哲也(あさみてつや)
前文部科学省教科調査官・十文字学園女子大学教授/1967年埼玉県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、1990年より埼玉県熊谷市及び深谷市内公立小学校教諭、埼玉県教育局指導主事、深谷市教育委員会指導主事、深谷市内公立学校教頭、小学校校長兼幼稚園長を経て、2017年より文部科学省教科調査官、2023年4月より十文字学園女子大学教授。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追究中。

取材・文・構成/浅原孝子 撮影/北村瑞斗

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