小5 国語科「どちらを選びますか」全時間の板書&指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「どちらを選びますか」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小五 国語科 教材名:どちらを選びますか(光村図書・国語 五)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立大鳥小学校・角田峻介

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、児童それぞれが自分の立場を意識した対話を通して、互いの立場や意図を計画的に話し合い、考えを広げたりまとめたりする力を育てていきます。

本指導アイデアでは、対話をディベートの形式で行うように設定しました。それぞれの立場に分かれて根拠を明らかにしながら話し合うことで、互いの主張の長所や短所を整理し、多面的な視点で話すことができるようにします。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本教材は、「対話の練習」として取り上げられていることからも、相手意識や目的意識をもって取り組む学習というよりも、対話をすることを楽しみながら、よりよい話合いができるようにディベートのようなゲーム形式で学習を展開するように示されています。
ディベートは、二つの対立する立場に分かれて話し合うことで、同じ問題を二つの立場で捉えることができます。

本提案は、ディベートで対話することを楽しみながら話し方を学ぶことが趣旨となっているため、単元内で話題や立場も決定していくように構成していますが、「低地の暮らし方と高地の暮らし方」「北海道の暮らし方と沖縄の暮らし方」といったような話題を取り上げ社会科と関連させたり、学級会の議題を二つの立場に分かれて話し合わせたりするなど、他教科と関連させて学習を進めることも可能です。

この単元の後には、「よりよい学校生活のために」という教材が控えており、そこでは「立場の違いを明確にして、計画的に話し合う」学習が設定されています。
本単元で、二つの立場から考え、話し合う力を身に付けておくことで、本単元以降の学習でも活用できるようにしていきましょう。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 立場を主観で選ばないことで話し方に焦点を当てた学習

本提案では、二つの立場それぞれから話題について考えることが大切です。そのため、「ぼくは犬を飼っているから断然犬派。」「わたしは、犬に吠えられて嫌な経験をしたことがあるから猫派。」というように、個人的な経験や感情から立場を決定するのではなく、どちらの立場に立ったとしても主張を考えられるようにする必要があります。
しかし、上記で触れたような経験などは、他にも同じような経験をしたことがある聞き手がいるかもしれないという観点から、主張を支える事例や質問として活用できる場合があります。一方の長所が、もう一方にとっては短所にもなり得るという視点の切り替えが、考えを広げたりまとめたりする上で大切になります。

〈対話的な学び〉 「説得力」を具体化することによる明確な判断規準の設定

ディベートの最後には、どちらの立場の主張に、より説得力があったかで勝敗を判定します。
教材では、「校長先生が家で飼うペット」という設定のため、犬と猫のどちらが、より校長先生が飼うのに適しているかが判断規準となります。その場合、「校長先生がペットに求めているもの」や、「校長先生の家の約束(大きな音を立てられない、壁紙や家具を傷付けたくないなど)」「世話ができる時間」など、条件にどれだけ適しているか意識しながら話し合うことで、審判役も判断しやすくなります。
より活発な話合いを行うためには、各学級に応じた話題で話し合うことが大切です。また、児童の興味や生活経験、知識に差がないものを話題にするとともに、明確な判断規準も学級内で話し合って決定することで、話合いが焦点化され、活発なものになります。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

「話合いの動画」と「審判役の記録動画」を連動させた振り返り

本提案では、二つの立場それぞれの役(2グループ)と審判役(1グループ)の計3グループで活動に取り組みます。
話合いの学習では、話している内容ややりとりそのものが学習となるため、「どこのどの言い方が……」という具体の振り返りが行いづらいという難しさがあります。
そこで、本提案ではICT機器を活用した二つの記録を連動させた振り返りを行います。

一つ目は、「話合いの動画」です。実際にディベートを行っている様子を動画に残しておくことで、話合いの内容を具体で振り返ることができます。何度も再生することが可能ですし、メモ機能を使えば、よかったところや直したいところなども動画と一緒に記録して残しておくことができます。

二つ目は、「審判役の記録動画」です。審判役の児童たちは、下記の<イメージ図>のようなシートを共有ノートで作成し、操作しながら話合いを聞きます。
納得した度合いに応じて自分の名前のカードを左右に動かします。
メモを取りながら話合いを聞いていると、書くことに夢中になって言葉を聞き逃したり、後から読んだ際に自分のメモの意味が分からなくなってしまったりすることがあります。
話合いの最中は、シート内のカード移動を行い、話合い終了後に「話合いの動画」と併せて振り返ることで、細かい言葉のニュアンスや、前後の主張などと重ねながら捉えることができます。

<イメージ図>

イメージ図

6. 単元の展開(2時間扱い)

 単元名: 二つの立場で考えて、より説得力のある話し方で話そう ~決戦 5年○組 ディベート大会~

【主な学習活動】
第1時
ディベートという対話の形式を知り、話合いのテーマと勝敗の判断規準を決める。

第2時
ディベートを行い、二つの立場で考えることの価値を確かめる。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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