12月の学級通信:人の幸せを喜べる人に
12月に入り、この学級で過ごすのもあと4か月となりました。今月は他者との関わりについてお伝えしたいと思います。友達のことを自分ごととして捉え、その様子をともに喜べる子供の成長ぶりを、この時期は学級通信を通じて発信していました。喜びを分かち合える瞬間を少しでも多く引き出し、残りの日々を大切に過ごしたいものです。
目次
「他者と生きる喜び」への気付きが、視野をさらに広くする
2学期もいよいよ終わりが近づいてきました。同時に今の学級で過ごす日々も残すところあと4か月。一年の終わりに向けて、仲間と協力して取り組んだり、アイデアを出し合ったりする時間をたくさん設けたいところです。
そうした活動の一環として、この一年は体育のポートボールの時間を活用していました。チームで作戦を立てたり、一緒に練習をしたりしながら、仲間と力を合わせる喜びを感じてほしい。そんな願いを持ちながらポートボールの実践を行う中で、次の通信を発行しました。
▼学級通信「つながりNo.135」
「人の幸せをよろこべる人に」
【子供の日記】
火曜日に家でキャッチボールの練習をしたので、今日のポートボールで、「少しうまくなっているだろう」と思っていたら、本当にうまくなっていました。うれしかったです。また、やりたいです。【Aくん】
今日ポートボールをしました。練習の時にAくんにボールをわたしたら、キャッチしてくれました。「キャッチができるようになったんだ!」と思いました。聞いてみると練習したと言っていました。なぜかうれしかったです。【Bさん】
【教師のコメント】
「なぜかうれしかった」という言葉から、なんともいえない気持ちが伝わってきて、温かな気持ちになりました。うまくできなかったことに向き合って、がんばろうとしたこともすてきだし、その変化(へんか)に気が付いて、人のよろこびを一緒にうれしく思えるのもすてきです。
だれかのよろこびを自分のよろこびにできる人でありたいと思いました。
12月14日 学級通信「つながり」No.135.
Aくんは、今までボールをキャッチすることがまったくできませんでした。ゴール型スポーツのポートボールで、ボールがキャッチできないのはなかなかの痛手。すぐに相手ボールになってしまいます。
しかし、Bさんをはじめとするこのチームのメンバーは、ボールを捕れないAくんをとがめませんでした。ボールを落としてしまう度にみんなで励ましの声を掛け、一緒に練習をしていました。それがきっとAくんのやる気に火をつけたのでしょう。お家に帰ってからも練習に取り組んでいたようです。
日記のコメントにも残しましたが、自分の苦手なことと向き合って努力できることは、なかなかできることではありません。「ボールをキャッチできた」という一つの出来事ですが、その背景には様々なストーリーが隠れています。
さらに素晴らしいのは、Bさんがその喜びをともに分かち合っていることです。ボールをまったく捕れなかったこと、それでも前向きに練習に取り組んでいたこと。そんなストーリーを共有しているからこそ、この喜びを分かち合うことができているのでしょう。
そして、Bさんはその喜びを「なぜかうれしかった」という言葉で表しました。自分のことではないのにどうしてうれしいんだろう、と思ったのでしょうか。いつものうれしさとは質の違ううれしさを感じたのでしょうか。この「なぜかうれしかった」という繊細な表現からは「他者と生きる喜び」への気付きが感じられます。
Bさんはこの後、さらに学級全体へと視野を広げていきました。今日は○○さんが算数を頑張っていた。いつも手を挙げていない△△さんが今日は頑張って手を挙げていた。そんな他者の頑張りや成長を喜ぶ日記を毎日のように書いてくるようになりました。Aくんの一件が、Bさんに大きな気付きを与え、他者への見方を変えたのだと思います。
Bさんが言った、他者の幸せや成功を「なぜかうれしい」と感じるような瞬間が他の子供たちにも起こることを少しでも促せるように、この時期の学級通信では他者に目が向いている日記をよく紹介するようにしています。
縁あって同じ学級に集ったメンバーです。残すところ数か月となりましたが、こうした他者と喜びが分かち合えるような瞬間を少しでも多く引き出していけたらと思います。
佐橋慶彦(さはしよしひこ)●1989年、愛知県生まれ。『第57回 実践!わたしの教育記録』特別賞受賞。教育実践研究サークル「群青」主宰。日本学級経営学会所属。子どもがつながる学級を目指して日々実践に取り組んでいる。