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授業時間を子どもに預けて伸ばす!ポイントは五つの「かける」

2019/8/26

教師主導の一斉授業には大きな落とし穴が!? 子どもたち全員が有意義な活動ができる授業時間にするために、授業を子どもたちに預けるという大胆な実践を行う金先生に、その内容を紹介していただきました。

執筆/大阪府大阪市公立小学校 金大竜先生

授業時間を子どもに預けるイメージ
撮影/金川秀人

良い授業って何かを考えると・・・

あなたがイメージする良い授業とはどのような授業でしょうか。

・教師が設定したゴールに向かって、全体に投げかけた発問について、一生懸命考えたり、話し合ったりしている。
・学習規律や発表のルールがしっかり定着していて、それを子どもたちが生かしながら、主体的に全体で話し合いを深めることができている。
・教師の一つの発問に対し、子どもたちが自分達でつなげ合いながら、全体で話し合っている。

こんな風景が目の前に広がっていたら、良い授業でしょうか。僕自身、このような授業を目指し、今も取り組んでいますし、実際このような授業を行っています。これらが悪い授業だとは全く思いません。

しかし、こうした教師主導の一斉授業ばかりしていてはいけません。なぜなら、実は教室の何人かは、この話合いに参加しているフリを一生懸命しているだけで、主体的に学んでいるどころか、授業に参加できていないことがあるからです。そうした状況が1日に6時間、毎日のように続けば、教室のあの子はどんな気持ちで授業を受けるのでしょうか。

だから、子どもたちに授業を預けます。授業時間を子どもに預けることにはいろいろなメリットがあります。

・子どもが自分に合った方法、ペース、仲間を選択し、主体的に学べる。
・子どもが集中できなくなった時に合法的に立ち歩けるので、集中を持続できる。
・教師に時間ができるので、時間をかけてじっくり子どもと関われる。
・一斉授業では見えない子どもの姿が多く見られ、じっくり観察できる(一斉授業で活躍している子が戸惑う場面があったり、子ども間の人間関係が見えたりするなど)。

では、実際にどのようにしていくとよいのでしょうか。子ども自身が明確な課題を持っていたり、何についてどのように活動するのかを知っていたりすることは前提として、まず絶対的に、こうした場を多く経験できるようにすることです。1回や2回ではうまくいきません。何度も繰り返す中で、子どもが得ていくものがあります。

何事も
知識(知っているだけ)

技術(意識して使える段階)

技能(無意識に使える段階)
の段階を踏みます。

ただ、やはり回数をこなすだけでは、子どもは成長しません。今日の活動が自分にとって良かったのか、共に学んだ子にとって良かったのか、クラス全体として良かったのかを考える機会が必要です。

子どもたちが振り返る時には、いくつかの視点を与えてあげることが必要ですし、教師が見ていて良いと思った行動は価値付けをし、子どもたちと共有することが必要です。子どもたちが活動を振り返る視点の一つについて、大阪の福島哲也先生から以前、教えて頂いた「五つの『かける』」があります。

気にかける
目をかける
声をかける
時間をかける
願いをかける

まずは、あの子はどうだろうと、気にかけることから何事も始まります。そして、気になったら目をかけます。その子が一人でできそうなら声をかける必要はありません。「一緒にやる?」などと声をかけて、必要であれば、時間をかけて関わっていきます。こうした活動時には、クラス全員が伸びるといいなという願いをかけます。そうすれば、自分達が話す声の大きさも周りに迷惑にならない程度になっていくものです。

この順序は、子どもだけでなく、教師も同じです。いきなり「声をかける」のではなく、その前に、気と目をかけることが大切です。その辺りができるかどうかは非常に大切です。気と目をかける時に誰がどの段階まで進んでいるのか分かるよう、黒板に子どものネームプレートをはって、それぞれの進行度合いが分かるようにしています。

こうした活動は、班内の協働的な学習として取り組むこともありますが、多くは自分で自由に学び方を選択して行っています。その際は、大きく三つから選択するように伝えています。

①最初から最後まで個人
②個人→集団→個人
③集団→個人

「個人」というのは、一人でじっくり考えることを指します。「集団」というのは、ペアや複数人で学ぶことを指します。

「個人で考えることなく、いきなり人に聞いて学びになるのか?」という心配もあるかと思いますが、自分では全く手が出ないのであれば、それもありです。僕たち大人も自分でじっくり考えるために、まずは情報収集から始めることもあります。ただ、すぐ人に聞くことでその子が思考を止めていないかどうかは、ノートや話し合っている様子をよく観察し、声かけをしていく必要があります。

こうした活動を始めたばかりの時は、「仲良しのあの子じゃなきゃ」という感じで動く子もいましたが、先ほどの「五つのかける」も含め、自分も相手も伸びていくことを軸に振り返りを行っていく中で子ども自身が気付き、変容していきます。その変容は、たとえ小さな変容でも見逃すことなく、価値付けをし、「いつでも、どこでも、誰とでも学び合えるっていいな」という学級風土をつくっていきたいと考えています。

こうしたことも一度や二度で変容するものではありませんし、学習場面以外でも、子ども同士が安心して繋がり合えるムードづくりをしていく必要があります。不安によって、特定の子としか繋がれない場合がよくあることも事実ですから。

実際の場面ではどのように行うのか?

このような活動をする第一歩として、教師にとっても、子どもにとってもやりやすい場面を紹介します。やりやすい場面からスタートすることで、子どもたちもどのように学んでいけばよいのかを理解できますし、教師自身も落ち着いて取り組むことができます。

最初は算数の時間からスタートするとよいでしょう。その時間の練習問題や単元末の復習を行う時間を活用します。そうした時間であれば、教師も挑戦しやすいものです。

活動を始める前には、どのようなことに、どの順序で取り組むのかが、一目で分かるようにしていきます。解答は前においてありますので、子どもたち自身で丸つけも行います。ネームプレートを貼るところには「自由」というコーナーもつくっておき、この段階の子どもは何をしてもよいことになっていて、何をするのかを自分で考えます。

教室の後ろには様々なドリルが置いてあるので、それに取り組む子もいますし、その単元のことをノートにまとめている子もいます。また、他の単元を復習したり、次の単元を予習したりしている子もいます。もちろん理解できていない子のフォローをしている子もいます。何をどのように活動するのかを自分で選択することで、自分に合った学びの方法を見つけていけるようにしたいと考えています。

だんだんと慣れてくれば、問題提示をした後から授業終了まで、子どもたちが自分に合った学習方法を選択しながら進めることができます。どの授業時間でも可能ですが、僕個人は計算や図形を描く技能を習熟する時間を中心に取り組んでいます。

子どもたちはただ問題を解くだけでなく、どんな説明や図を描き加えれば相手に伝わるかを考えて、まとめるようになっていきます。もちろんこうしたことは、一斉指導の中で最初に指導します。

例えば、数式という抽象的なものを、その問題が分からない相手に説明するために、数直線や線分図などの半具体で表すと伝えやすいことや、この問題を解くときのポイントを文字でノートに書き込んでおくことなどについて、実際にみんなで書きながらその良さを味わえるようにしていきます。

それだけでなく、「ノートはどのように見せ、相手に説明すると伝わるのか」や「教科書などを一緒に見て学ぶ際には、それぞれが教科書を持つのではなく、1冊を一緒に見て考えることがよい」ことを、体験を通しながら子どもたちに指導していきます。

多様な考えに触れ、深める場面での展開例

算数を手始めに子どもたちが慣れてくれば、様々な場面で行っていきます。子どもに授業を任せる際も、僕は基本的に導入を一緒に行いますが、その後の展開場面、場合によってはまとめの場面までを子どもたちに委ねます。

ここからは、二学期の6年社会科のスタートになる、単元「(江戸)幕府の政治と人々の暮らし」の1時間を例に、どのように授業を進めていくのかを紹介します。

小単元名「江戸幕府と大名」

【目標】江戸幕府の政治について調べ、そのねらいについて考えることでどのように大名を支配したのかを理解できる。

●導入(10分程度)●

  1. 教科書や資料集にある大名の配置図を電子黒板や黒板に拡大して掲示する。まずは、表題と凡例を確認する(この時に子どもたちは教科書や資料集はまだ見ない)。
  2. 親藩、譜代、外様を板書し、どのようなものかを伝える。
  3. 見て分かることを話し合う(ノートには書かない)。
  4. なぜ、このような配置なのかを考える。
  5. 大名が力をつけすぎないよう、政治として他にどのようなことをしたのかを予想する(この後の調べる活動の観点)。

●展開(25分程度)●

  1. この後の活動について、説明し、板書する。
    ・最初に、幕府がどのようなことをしていたのか、事実・事象(本時は「武家諸法度」)について資料から調べる。
    ・次にそれらにどのようなねらいがあるのかを考える。その際は導入の大名の配置のねらいを基に考えていく。
    ・この1時間の学びをまとめると、江戸幕府にはどのようなねらいがあったのかを考える。思いついた人は、黒板に書きに来る。
  2. 子ども達が学び方を選び、活動する。

●まとめ(10分程度)●

  1. 子ども達が板書した内容を基に簡単に話し合い、この時間の最後の自分の考えをノートにまとめる。
  2. この時間の学び方の良かったところを教師から話し、その後、個人個人、ノートに書く。

これが1時間の展開です。こうした活動は、すぐにできるようになるわけではありません。任せたからには、任せきる覚悟と簡単に介入しない我慢が必要です。教師は、ちょっと気になることが目に入ると指導をしてしまいますが、一つの出来事を指摘したために、それまで積極的に学んでいた子どもの意欲を低下させる可能性が大いにあります。そうならないためも、以下3点を心がけています。

①導入でどの子どもも同じ土俵に上げる。
②本時の課題がはっきりしていて、何をすべきかが明確になっている。一度、子どもが活動に入ったら活動を止めなくてすむように、活動前の説明を板書しながら行い、説明後に「何か質問ある人?」と確認する。
③教師がそばにいるだけで、「良い話し合いをしないといけない」と感じる子どもがいるため、教師がどこにいて、どのように関わるのかを考えていく。

ぜひ、先生自身がチャレンジしてみてくださいね。

金大竜(キム・テリョン)先生
金大竜先生

金大竜(キム・テリョン)●1980 年大阪府生まれ。日本一ハッピーな学校をつくることを夢見る小学校教員。「ハッピー先生」と呼ばれる。教育サークル「教育会」代表。著書に『日本一ハッピーなクラスのつくり方』『エピソードで語る 教師力の極意』(明治図書)『一人ひとりの凹凸に寄り添う 「気になる子」「苦しんでいる子」の育て方』(小学館)など。

『小六教育技術』2017年9月号より

「気になる子」「苦しんでいる子」の育て方

金先生の本・・・
一人ひとりの凸凹に寄り添う
「気になる子」「苦しんでいる子」の育て方
著/金大竜
定価本体1400円+税
ISBN 978-4-09-840165-9
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