「学ぶ子供に寄り添う」という考え方が大事!【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話⑬】

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「学ぶ子供に寄り添う」という考え方が大事!【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話⑬】

視点を変えて学校改善を図った管理職

現行の学習指導要領は、それまでの授業者の視点から学ぶ子供の側へと大きく視点を変え、整理がなされたことが大きな特徴の一つと言われます。今回は、そのような視点から学校改善を図っておられた管理職のお話をしてみたいと思います。

「中学校は小学校の先生にはかなわないのです」

今から20年近く前のことになります。学校経営の手法について、ある県の県庁所在地の中学校に取材に伺ったときのことです。この学校は、この市の研究をリードする立場の学校で、地域の校長会の会長を務めておられる校長先生に、学校経営についてのお話を伺いに行きました。

その中学校は、教科を超えた教師集団をつくり、互いに学び合うような組織づくりをされていました。そしてその校長先生は、「中学校の先生はもっともっと勉強しなければならない」という趣旨のお話をされたのです。

まだまだ経験不足の記者だった私は、「そうですか? 小学校の先生方は、『中学校の先生方の教科の専門性にはとてもかなわない』とよく言われますが?」と、素直にお話をしました。すると、その校長先生は「いや、そんなことはないんだよ。教科の専門性があるなどと言っても、中学校は高等学校の先生の高い専門性にはかなわない程度のものです。その一方で、学ぶ子供に寄り添って子供の視点で教育を行うという点では、中学校は小学校の先生にはかなわないのです。どちらも中途半端だから、どちらももっと勉強しなきゃいけないわけです」という趣旨のお話をされたのです。簡単な図式にすると、次のような関係でしょうか?

教材研究:小学校<中学校<高等学校
子供目線:小学校>中学校>高等学校

当時は小中連携が少しずつ進められ始めた時期で、小学校と中学校の学校風土の違いという話はよく耳にしていました。それを教科の専門性と学ぶ子供の視点という2点で、簡潔に分析されたということになるのでしょうか。

確か、その校長先生は「専門性については説明する必要はないでしょう? 子供に寄り添うというのは、学齢もあって、小学校では(特別に意識することなく)自然に身に付けてこられた部分もあるのでしょう」というように続けて話されていたと思います。

それまで、教材研究の深さの重要性については、小学校でも中学校でもよく取材で耳にしていましたから、納得のできることでした。しかし、学ぶ子供の視点から授業づくりを話される中学校の管理職の方にお目にかかったことがなかったので、とても意外であると同時に、よい視点を学ばせていただいたと思ったのです。

学ぶ子供に寄り添うという点では中学校や高等学校よりも優れていると言われる小学校の教育。
学ぶ子供に寄り添うという点では、中学校や高等学校よりも優れていると言われる小学校の教育。

学習指導要領を読んでいないのは本末転倒

そこから20年近くが経ったわけですが、現行学習指導要領の下で、このときの校長先生が話された、「学ぶ子供に寄り添う」という考え方がいかに重要だったかが改めて思い起こされます。

どんなに教材研究ができていたとしても、学ぶ子供自身の視点で、主体的に学びたくなるような教材の提示ができなければ意味がないということですよね。実際にこの話を伺った後、取材で訪ねた中学校では、どうしても「教える先生の視点」が強いように感じていました。もちろん今は、中学校や高等学校でも授業改善が進んでいると言われますし、状況は違うのだろうと思います。

その一方で、教材研究や教科の本質について掘り下げることの必要性がなくなったわけでもありません。例えば、各教科の見方・考え方というのも、学習指導要領の重要なキーワードの一つだろうと思います。

ところが昨年、取材でお話を伺ったある小学校の若手の先生は、「よりよい授業づくりについて学校の先生方と対話し、学んでいきたいのですが、私の学校にはその雰囲気があまりないのです。いまだに学習指導要領を読んでいない先生もいます」といったことを話しておられました。学習指導要領が学び手の視点に立ったことで、小学校は一定のアドバンテージを得たと感じていましたが、その学習指導要領すら読んでいないとなると本末転倒ですよね。

さて、この記事を読んでくださっている先生方はいかがでしょうか?

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執筆/矢ノ浦勝之

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