個人のお悩み解決アイデアを聴き合う『サークルタイム』第3段階【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】⑥

連載
鈴木優太「子供同士をつなぐ1年生の特別活動」

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
子供同士をつなぐ1年生の特別活動

1年生の子供たちは、初めて集団活動を体験します。主体的・対話的な態度を育てるとともに、子供同士をつなぎ、よりよい人間関係を築きましょう。この連載では、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)や『教室ギア55』(東洋館出版社)などのヒット著者の鈴木優太先生が、小1「特別活動」のさまざまなアイデアを紹介していきます。

第6回は、聴き合いで問題解決集団を育む『サークルタイム』の第3段階を取り上げます。

鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書)など、著書多数。

『サークルタイム』第3段階とは?

「話合い」=「聴き合い」です。「聴き合う」豊かな体験の積み重ねが、話合い活動のできる課題解決集団を育むのです。

全員で「輪」になって「聴き合う」時間を『サークルタイム』と呼んでいます。

今回は、『サークルタイム』を円滑に導入するための第3段階の活動です。「クラス会議・ショート」の実践を紹介します。

クラス会議は、先行実践や参考になる文献や資料がたくさん出回っています。今回掲載したものは、出会った子供たちと私なりに紡いできたほんの一例の実践です。クラスの数だけクラス会議の形があります。不完全でも、始めてみる「勇気」が大切です。

※『サークルタイム』第1段階~第2段階は、連載第5回をご参照ください。第4段階(クラス会議・ロング)は、第7回で紹介します。

「サークルタイム」第1段階~第4段階(表)

「議題箱」を教室に設ける

議題箱

「議題箱」を教室に設けましょう。自分たちの「声」でコミュニティをつくっていく民主的な学級の象徴です。

議題箱を手作りする子供たち

子供たちが「手作り」したものが望ましいです。学級目標と結びついたデザインであるといっそう素敵です。

議題提案書

議題を書く紙は、上記のようにできるだけシンプルにします。

1 個人のこと
2 学級のこと

どちらかに丸を付けるのが大きな特徴です。

そして、「どうしたい?」の欄に願いを記入し、「議題箱」に投函します。

朝、すっきり起きられるようにしたい

誰でも、いつでも記入して投函できます。定期的に書く機会を設け、議題を集めるのもよいでしょう。

私は、「記名制」にしています。意見として発信することへの「責任感」を育みたいと考えるからです。

下欄は、学級での話合いをしたあとで、決めたこととやってみる期間を記入します。期間中、教室の目立つ場所に貼り出します。

寝る前に、起きる時刻を5回書いてみることに決めました

「議題箱」の運用法や話合いの仕方に、絶対解があるわけではありません。しかし、「友達が嫌な思いをする議題は書かない」や「開けるのは先生だけ」と取り組み始めるのが、導入期では混乱しません。特定の子供同士のトラブルなどは、別の場で教師が聞き取りながら解決を支援することが望ましいです。納得できる取り組み方を子供たちといっしょに考え続け、自分たちに合ったルールに少しずつ変えていきましょう。

大切なのは、「議題箱」が教室にあることです。

『サークルタイム』の助走として「ハッピーリレー」を行う

『サークルタイム』の助走として行うのが、前回でも少しだけ説明した「ハッピーリレー」です。

「ハッピーリレー」は、「コンプリメントの交換」という活動です。コンプリメントとは、ほめ言葉や賛辞、丁寧なあいさつという意味です。

トーキングスティックを順番に回しながら、最近あったうれしかったこと、誰かへの感謝、友達の尊敬することなど、肯定的な発言を全員で聴き合う活動です。ほっこりとした温かな気持ちになるため、『サークルタイム』の助走として毎回行います。

朝の会で『サークルタイム』で行う場合には、健康観察も兼ねた『健康観察ハッピーリレー』として取り組んでもよいでしょう。「ありがとうみつけ」だけに限定するクラスや、「ハッピー・サンキュー・ナイス」というネーミングにしているクラスもあります。活動の中身や名前は、子供たちの実態によって変えていってかまわないものです。

個人のお悩み解決アイデアを聴き合う

『サークルタイム』の第3段階は、個人のお悩み解決アイデアを聴き合います

「サークルタイム」第3段階進行表

「ハッピーリレー」と合わせても、10分~15分ほどの短時間で完結する話合い活動です。ぜひ、授業開始前の朝の時間で取り組まれることをおすすめします。私は、毎日の朝の会を『サークルタイム』として行っていたことがあります。例えば、「水曜日の朝の会は『サークルタイム』で個人のお悩み解決をする」と、曜日を決めて行うやり方もあります。

経験を積めば積むほど、子供たちは話合いの力がメキメキと付くからです。経験を積まないことには話合いは上達しません。

運動などと同じで、コミュニケーションも経験「量」が必要です。そのために大切なことが「やり続ける」ことと、続けるための教師の「覚悟」です。「〇曜日の朝の会はサークルタイム!」と、学級システムの中に組み入れてしまうのが、継続しやすい手段です。

鈴木先生作成の話合い活動マニュアル「個人のお悩み解決版」
鈴木先生作成の話合い活動マニュアル「個人のお悩み解決版」

個人のお悩み解決の議題は……
「朝すっきり起きられるようにすること」
「忘れ物を減らすためにできること」
「将来サッカー選手になるためにやるとよいこと」
などが考えられます。

背伸びのない、かしこまらないことでかまいません。主に、学級活動(2)や(3)の内容です。

議題も解決策も、平凡なことに決まることが多々あります。しかし、平凡の中にドラマが生まれます。時として深い意見が交わされたり、あの子の意外な一面が見られたり、学級をも大きく動かすような岐路に立ち会ったりすることもあります。もちろん、こうしたことが起こらない日もあります(笑)。しかし、続けていくことで、着実に中身が充実していきます。そして、実践的な話合いの力が堅実に育っていきます。

誰かのためになるって心地良いな

教室の仲間は親身になって自分の悩みを聴いてくれるんだ

この仲間だったら相談してみようかな

このような「聴き合う」豊かな体験の積み重ねが、話合い活動のできる風土を育んでいきます。お互いを尊重して意見を「聴き合い」、仲間の自己決定を見守ることや、集団決定する経験(次回紹介する第4段階)を積み重ねることで、主体的に問題解決しようという雰囲気が学級の中に醸成されていくのです。

「まずは1週間(1度)やってみましょう!」を合言葉に、振り返り、修正していく「サイクル」を積み重ねるのです。

参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『日常アレンジ大全』(明治図書)
   赤坂真二『クラス会議入門』(明治図書)
   諸富祥彦監修・森重裕二著『1日15分で学級が変わる!クラス会議パーフェクトガイド』(明治図書)

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