ありがとうが飛び交う教室へ『ありがとうばん』【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】③

連載
鈴木優太「子供同士をつなぐ1年生の特別活動」

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
子供同士をつなぐ1年生の特別活動

1年生の子供たちは、初めて集団活動を体験します。主体的・対話的な態度を育てるとともに、子供同士をつなぎ、よりよい人間関係を築きましょう。この連載では、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)や『教室ギア55』(東洋館出版社)などのヒット著者の鈴木優太先生が、小1「特別活動」のさまざまなアイデアを紹介していきます。

第3回は『ありがとうばん』をご紹介します。

鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)など、著書多数。

ありがとう+当番活動=『ありがとうばん』

学級における仕事を知り、責任感を育むねらいから、決めた仕事に一定期間取り組む「一役当番活動」は1年生の定石です。

しかし!

これらのねらいを達成する当番活動は、何も「一役当番活動」だけではありません。

子供たちも、私たちも、仕事観が大きく変わる『ありがとうばん』を提案します。

「ありがとうばん」

毎日1人1つ以上、学級のみんなのためになることを見付けて取り組む当番活動が『ありがとうばん』です。

返却物を「ありがとう」を引き出す機会に

「くばってくださいコーナー」に載せられた子供たちへの返却ノート

例えば、返却物の例です。

私は、『くばるものコーナー』を設け、ノートやプリントなどの返却物をここに置きます。すると、気が付いた人が、気が付いた時に、どんどん配ります。

決まった当番の人だけが取り組むのではなく、教室の全員誰でもが配り物に取り組むことを奨励します。配ってくれている人に「ありがとう」という言葉が掛けられます。

なるべく多くの人数で行う方が素早く配り終えられることが実感できるようになると、「半分ください」と配っている人に申し出ます。すると、配っていた人からも、「ありがとう」という言葉が交わされます。

女の子が返却ノートをみんなに配っていると、「半分ください」と男の子が声をかけて手伝おうとしている。

毎日の返却物でさえも「ありがとう」を 交わす機会を促し、ほっこり温かいコミュニケーションが教室のいたる所で行われます。

いいと思ったことはどんどんやってみよう!

気が付いた人が、気が付いた時に取り組む当番活動が、『ありがとうばん』です。

「一役当番活動」でも、配達当番になった人+気が付いた人で行えれば同じような子供たちの姿が見られるでしょう。しかし、残念なことに、「当番になった人だけがやるべきだ」とか、「当番の仕事を奪ってはいけない」といった歪んだ仕事観に陥る事例も少なくないようです。

「6月の魔物」の正体

4月、新鮮な気持ちで「ありがとう」が飛び交っていた教室。

しかし、6月頃になると、「一役当番活動」などの学級の仕事をやるのが「あたりまえ」になり、教師も子供たちもやれていない人を責め立てる態度や言葉になりがちです。

これが、「6月の魔物」の正体です!

「ありがとう」の対義語が「あたりまえ」です。「ありがとう」が飛び交う「仕組み」を教室に導入したらよいのです。

「振り返り」が大切

『ありがとうばん』では、配り物も、電気の点灯・消灯も、落とし物の呼び掛けも、気が付いた人がやります。

日直が行うことの多い号令や、健康観察簿を届ける仕事なども、立候補制や指名制で、毎時間、毎日違う人が行っていくのもアリです。

ゆるやかな活動がゆえに、大切にしたいのが「振り返り」です。

今日の『ありがとうばん』はどうでしたか?

ペアトークをしたり、サークルになって聴き合ったり、振り返りを書いたものを大型テレビに映したり、学級通信で紹介したり…全員で共有します。リフレクションとリトライの積み重ねが「主体的」な人を育てていきます。

今日の『ありがとうばん』どうだった?

落とし物のハンカチを見付けたので、みんなに聞いて回ったよ。〇〇さんのだったよ

ありがとう! 〇〇さん、きっととても喜んでいると思うな

ありがとう! □□くんは、今日の『ありがとうばん』どうだった?

やれていない仕事があった時には教師が行います。教師も教室の一員です。

すると、「ありがとう」の尊さを実感できます。教師が子供たちに掛ける言葉や、子供たちから掛けられる言葉が変わります。

学級の仕事のほかにも、学習中に分からないところを一緒に考えた、親身になって相談に乗った、友達にいいところを伝えた…などなど。

自分自身が『ありがとうばん』に当てはまると思えるならOKとし、ゆるやかに取り組んでいきましょう。

決められた仕事や与えられた仕事をこなすだけでなく、みんなのためになる仕事を見付け、それを行動化できる経験が1年生から大切だと考えます。

そして、「自分で自分に◎」と誇れるような1日1日を、子供たちには過ごしていってほしいものです。

教室に溢れさせたい言葉をアンケートすると、1年生~6年生の全ての学年の第1位が「ありがとう」です。

言われた人も、言った人も、温かな気持ちになるパワーワード「ありがとう」が教室に溢れる活動が『ありがとうばん』です。

参照/ 鈴木優太『日常アレンジ大全』(明治図書出版)

イラスト/高橋正輝

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
鈴木優太「子供同士をつなぐ1年生の特別活動」

学級経営の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました