視写を生かしたシンプルな国語授業で語彙力、文法力を伸ばす

関連タグ

国語授業において、語彙力、文法力(知識・技能)、読み取りの力(読解力)をしっかりつけ、書く力、話す力・聞く力(交流)を伸ばしましょう!  教育技術ムック「 国語力を高める音読と視写のシンプル授業」(著/吉永幸司・北村直也)では、それらの国語授業の基本を通して、しっかりとした語彙力、文法力を身に付けさせる実践を解説しています。今回は、その中の「視写を通して読む力、書く力を身に付ける」指導法を紹介します。

執筆/関西実践教育研究会代表 教育アドバイザー ・北村直也

視写は文と向き合うこと

視写はとてもシンプルな指導法です。意味を考えながら書くと、じっくり文と向き合えます。

子供は言葉をぐんぐん身につけます!

視写は、体全体で文の内容を読むことです。

意味を考えながら書き、じっくり文と向き合います。手で読むともいわれます。子供たちはぐんぐん言葉を身につけていきます。

視写は、作文力をぐんとアップさせます!

視写は、子供たちから書くことの抵抗を取り除きます。少し、続けてみてください。すぐに効果が出てきます。

視写を続けると、姿勢がよくなります!

おへその前で字を書いていくことが基本です。その時、「あしうらぺったん、背中はぴん、背中とおなかにぐう一つ」の姿勢が大切です。字を正しく書くことは、姿勢をよくしていくことです。書写の技術を鍛えることにもなります。

正しい姿勢の図解
足裏ぺったん、背中はぴん、背中とおなかにグーひとつ

授業のポイントに視写を使いましょう!

授業では、しっかり考えさせたい箇所の文章を視写させ、文の内容を深く理解させ、考えさせるようにしましょう。

先生の板書力が、飛躍的にアップします!

先生が、子供のモデルです。「板書に自信がない」と言われる先生が、少しずつ文字練習をされ、板書力を大きくアップされた姿をたくさん見てきました。一日一分文字練習で板書を向上させましょう。

子供にやる気と、集中力が生まれます!

「視写を始めると子供たちが落ち着いてくる」とよく言われます。続けていくと、普段の学習から、生活まで落ち着いてきます。それは集中して一つのことに取り組むことによる効果です。

黒板の消し方で、教室の雰囲気が美しくなります!

美しい黒板は教室の雰囲気を変えます。下の絵のように真っすぐな縦線で、美しく黒板を消すと、子供に整った黒板を見せることができます。書かれる字も、整ったものになります。

マス目ノートが基本です!

筆圧を大切にさせながら、マス目いっぱいにしっかり書かせましょう。

文のかたまり(文節)を覚え、意味を考えながら書くようにさせましょう。意味を考えずに一文字ずつ、手本を見ながら書く子がいます。字の形の練習にはよいのですが、読みとしての視写の学習効果は上がりにくくなります。

視写・音読で、言葉に触れる絶対量を増やしましょう! それが、読書力も育てます!

言葉に触れる小さな積み重ねは、言葉の力を伸ばす原動力になります。高学年になっても読書の時間に、文字をスラスラ読めない子を見かけます。文字に触れる絶対量が少ないのもその理由でしょう。

子供に語彙力、文法力をつけるには、文字に触れる絶対量が必要です。繰り返し音読や視写を行い、多くの言葉や文に触れる機会を保障しましょう。

板書での「←」の効用を活用しましょう!

「うみのかくれんぼ」(光村図書1年上)を教材にした音読と視写の授業例を紹介します。

板書例
クリックすると別ウィンドウで開きます。

板書で言葉を矢印でつなぐことは、ちょっとしたことですが、大きな効果があります。

★言葉同士の関係や結びつきが一目瞭然です。視覚的に理解されます。

板書例 「からだのいろをかえる」
         ↓
    「まわりとおなじいろ」

★言葉や文の意味を、広げたり深めたりするときに有効です。このことにより、文に含まれている豊かな世界を学びます。

板書例 「たこがかくれる意味」
         ↓
    「てきからかくれる」

ためで、てきには、おおきなさかな、サメ、イルカがいる

板書例  「たこがかくれる意味」
         ↓
    「えものをつかまえる」

ためで、えものには、小さなさかな、えび、かにがいる

この「←」を有効に使っていくと、言葉や文の仕組みが分かる文法力、語彙の意味を豊かに理解する語彙力が身につきます。

ただ、「←」の数が多い板書は、かえって分かりにくくなる場合もあります。適切な使い方が必要です。

先生の発問・指示

板書例
クリックすると別ウィンドウで開きます。

写真の板書例に沿った音読、視写を活用した授業で、発問は以下のようなものが考えられます。

これまでに習った場面を音読しましょう。
今日は「たこ」の場面を勉強します。 めあてを視写してから、音読しましょう。

今日の場面を音読しましょう。(④⑤段落)

(④段落のカードを貼る)

音読しましょう。
隠れているのは誰? どこに? 「うみのそこ」とは、どこのことでしょう。

⑤段落を音読しましょう。
⑤段落を視写しましょう。
⑤段落を音読しましょう。

「からだのいろをかえる」のは、どのように変わるのですか?(周りには、何がありますか)。 なぜ、自分の体を隠すのでしょう。その訳を考えノートに書きましょう

★はまぐりは「かくれる」、たこは「かくす」の違いにも気づかせましょう。
★「たこがまわりとおなじいろになって、からだをかくすのは」の後に書かせましょう。

発表しましょう。

(交流)

今日勉強したところを音読しましょう。 次の時間は「〇〇〇〇」の場面を勉強します。


国語力を高める音読と視写のシンプル授業
著/吉永幸司・北村直也 定価:本体1300円+税 
ISBN:978-4-09-105060-1
https://www.shogakukan.co.jp/books/09105060
ためし読みはコチラ

イラスト/やひろきよみ

『小一教育技術』2018年9月号より

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
関連タグ

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました