5月の学級通信文例:ルールのゆるみをフォローする
教室の子供たちにも、新しい環境への慣れが見え始める5月。それと同時に、4月に示したルールにもゆるみが見え始めてくる頃でもあります。
今回は、教室の物語を綴った当時の学級通信を振り返りながら「ルール」について考えていきたいと思います。
▼学級通信「つながり」No.14
「みんなで」
今日学校で6時間目に、体育でライン鬼をやりました。やっていたらだんだんあつくなってきました。周りに気をつけなくてはいけないので、大へんでした。【Aさん】
先生に、しつもんなんですけど体育から帰って来る時にれつがぐちゃぐちゃでどうすればいいのかわからないので、いいアイデアを教えてください。【Bさん】
きちんとやろう、みんなでやろうという気持ちがどんどん出てきているのがうれしいです。この日は体育係さんがとくによく声をかけてくれていました。
みんなの体育、みんなのじゅぎょう、みんなのクラス。自分たちで声をかけあえるといいですね。
学級通信「つながり」No.14
目次
5月のゆるみを学級通信でフォロー
自分の仕事に責任をもって取り組んでいるBさん。「どうすればいいか分からないので、いいアイデアを教えてください。」という言葉からは、みんなが並んで帰れることができるように、一生懸命考えを巡らせていたことが伝わってきます。
この日記を取り上げたねらいは二つあります。一つ目は、子供たちで声を掛け合う雰囲気を後押しすることです。
学級通信の内容から、4月に確認した学級のルールや生活様式にゆるみが見え始めていたことが推測されます。学校規模や配置の関係により並んで帰ることが学校のルールになっていたにも関わらず、おそらくおしゃべりをしながら広がって帰っていたのでしょう。
この日記を読んで、翌日に注意をするのは簡単なことです。しかし、それでは自分の力でなんとかしようとした、せっかくのBさんの思いが台無しになってしまいます。もし、次に似たような場面があったとしても、きっとすぐに先生に助けを求めにきてしまうでしょう。
そこで、Bさんの行動と、その背景にある思いを学級通信で取り上げ、学級全体に声を掛け合うことの大切さを示します。ルールは「先生が言っているから守る」のではなくて「みんなで心地よく生活するために守る」ものです。こうして、教師がルールを確認するのではなく、自分たちの力でルールを守っていくことができるように後押しすることが、ルールの浸透につながっていきます。
もう一つのねらいは、Bさんのようにみんなの問題を自分ごととして考えている存在がいることを周知させることです。おそらくBさんの他にも、整列の仕方に問題意識を持った人はいることでしょう。また、他の場面でも「あれはいけないな」「こうした方がいいな」という思いを持っているかもしれません。
そんな時に、批判したり、すぐに先生に頼ったりするのではなく、自分にできることを考えられるように、こうした仲間の頑張りを伝えていきます。「Bさんも自分にできることを探していたな」「先生はきっとサポートしてくれるだろうな」そんな思いが子どもの背中を押してくれるのです。
もちろんこれは、学級通信でしかできないアプローチではありません。「Bさんがね…」と子供たちにじっくりと語り掛けるのもいいでしょう。
5月のうちに自分たちでゆるみを見つけ、声を掛け合えるように促していくことが、待ち構える「6月危機」に対する効果的な予防になると考えています。
佐橋慶彦(さはしよしひこ)●1989年、愛知県生まれ。『第57回 実践!わたしの教育記録』特別賞受賞。教育実践研究サークル「群青」主宰。日本学級経営学会所属。子どもがつながる学級を目指して日々実践に取り組んでいる。