6年最後の文化祭で「SDGs発表会」!【6年3組学級経営物語16】

連載
学級経営のポイント満載の学級小説「4年3組~6年3組 学級経営物語」

通称「トライだ先生」こと、3年目教師・渡来勉先生の学級経営ストーリー。今回は、「SDGs」の主体的活動にトライします。

総合的な学習の時間で「持続可能な開発目標(SDGs)」の探究学習に取り組む6年生。食品ロスの問題を通して、自分事としてとらえられるようになった6年の子どもたちは、調べたことを多くの人に知らせたいという熱意が高まります。

西華祭の出し物のテーマにきまったまではいいものの、文化祭の出し物として実現するためには、工夫とアイデアも必要です。残り少ない時間で、納得と達成感のある文化祭を実現できるか!? さあ、「SDGs」の主体的活動の実現にレッツトライだ!

文/大和大学教育学部准教授・濱川昌人
絵/伊原シゲカツ

学級経営物語タイトル

11月② 「SDGs」の主体的活動にレッツトライだ!

<登場人物>

トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
教職3年目の6年3組担任。 真面目で子ども好きの一直線なタイプ。どんなことでも「トライだ!」のかけ声で乗り越えようとするところから、「トライだ先生」とあだ名が付く。今年度は、新採のメンターも務める。特技は「トライだ弁当」づくり。


しずか先生(高杉静/たかすぎしずか)
6年1組担任で、学年主任2年目、教職11年目の中堅女性教諭。ベテラン教諭に引けを取らないリーダーシップぶりは、剣道五段の腕前に依るところも。一児の母、子育てと仕事の両立に日々奮戦中。


オニセン(鬼塚学/おにづかまなぶ)
教職生活5年目の6年2組担任。祖父と父が有名校長で母も教師という教育一家出身。イケメンでなおかつ優秀な成績で教育大学を卒業したという、典型的な〝オレ様〞タイプの教師。学級内のトラブルに十分対応できず、再び5年担任を任じられた昨年度、しずか先生率いるチームに育てられ、渡来先生とぶつかりながらも今や切磋琢磨しあう良き仲間に。


神崎先生(神崎のぞみ/かんざきのぞみ)
高学年の音楽・家庭科の専科講師。インクルーシブ教育にも携わる。大学4年生のときに交通事故で片足をなくし、入退院で休学、留年(渡来先生と同じ年齢)。一度諦めかけた教師の夢へと一歩を踏み出し、西華小の常勤講師に就く。大学時代は陸上選手として活躍し、体力には自信あり。


SDGsを伝える難しさ

「思い出すよな、2年前の西華祭のことを…」

●2年前の西華祭のエピソードはコチラ ⇒【4年3組学級経営物語16】文化祭、最も重要な事項は?

グループ別の話合いの途中、ポツリと呟くカズ。手を止めて応える、4年で同級だったヒロ。

「学校が禁止するお化け屋敷をどうしてもやりたいと、渡来先生を困らせた。でも諦めずに創意工夫を続ければ、突破出来ることを教わった」

「その学びを無駄にしない。さあ作業開始よ!」

アキに注意され、頭を搔く2人。SDGsを学校全体に広め、理解を深める―取り組みが始まって数日後。どうしてもアイデアが浮かばないカズたちが、放課後の3組教室を訪れました。

「最後だから、最高の西華祭にしたいんだよ」

「でも壁新聞しか思いつかない。…ダメだよな」

「生みの苦しみだな。誰もが悩むことだが…、ヒントになりそうなホームページを何点か紹介しよう」・・・ポイント1

採点の手を止め、タブレットを示す渡来先生。

「これはユニセフの『SDGsCLUB』というサイト。他の参考資料も見せよう。だけど…」

ヒロやカズたちの顔を見て、優しく応えます。

「我々は、怖いだけのお化け屋敷を楽しく勉強になる『お化けミュージアム』に改造したメンバーだ。やればできるし、振り返ることで道は開ける。先生はそう思って、頑張ってきたんだ」

暫く考え、顔を見合わせて応えるカズたち。

「もっと悩んでみる。…トライだ先生のように」

ポイント1 【 創り出すための支援 】
新しいアイデアを生む、斬新な考えを提示する等には、「生みの苦しみ」の時期がありま す。けれど、悩み続けたことが「閃き」につながる時があります。創造性を発揮させたい場合、必ずこの課題にぶつかります。過去を振り返る、類似課題を検討する等の活動で思考作業を支援すること。さらに、チャレンジする姿を励ましたり、自信を持たせたりすることが大切。難しいことですが、これらは現在の学習指導要領には重要な活動だと考えます。

教師たちの思い…

「本当にいい経験ができて、感激しています!」

西華祭が近いある日。職員室で寛ぐ6年の先生たちに、神崎のぞみ先生がお礼を言いました。

「目標3『すべての人に健康と福祉を』の取り組みを支援しながら、私自身考えさせられました。予防や治療で助けられる命が失われている現実、健康を害する様々な問題…。そんなニュースを見ると心が痛むのに、自分とは遠い話と思っていた。この前、募金してきたんですよ!」

「オレも同じだ、食べ残し厳禁と心に誓った!」

鬼塚学先生の真剣な表情とヒデの発言が重なり、思わず吹き出す渡来先生。不可解そうに見つめる鬼塚先生を抑え、話を始める高杉先生。

「2030年までの行動目標だからな。実態を測ったり比べたりして、課題を乗り越えるアイデアや方法を考える力を養ってほしい。それに、目標17『パートナーシップで目標を達成しよう』の実践にも取り組んでほしいと思っている…」・・・ポイント2

「みんなが協力し合えば、できることが増える」

微笑んで応える神崎先生。大きく頷きながら立ち上がり、その肩に優しく手を置く高杉先生。

「障がい者雇用は当たり前になる。希望に満ちた未来に子どもたちを導けるよう、頑張れよ!」

頬を紅潮させる神崎先生。その光景を、教務席から大河内先生が嬉しそうに見ていました。

ポイント2【 パートナーシップ 】
SDGsの最後の目標「パートナーシップで目標を達成しよう」は、これまでの16の目標を実現するために必要なことです。互いの立場や主張を超え、みんなの未来のために協力し合うこと。そして、そういう方向にみんなを導いていくこと。そういうパートナーシップこそ、今の世界に必要な資質・能力であると考えます。学校教育として、そこにどうアプローチしていくかが大きな課題です。

さあ、最後の西華祭だ!

「楽しくて勉強になるよ。見なきゃ損するぞ~」

会議室前で連呼するヒロの声に、集まる子どもたち。西華祭の会場を巡回する渡来先生たち。

「イケてるタイトル…、なかなかの感性だなぁ」

会議室に掲げられた「『希望か絶望か…~未来の世界は~』という看板に感心する鬼塚先生。

「会議室を二分割しています。絶望の未来は、お化け屋敷風。ゴミお化けが登場。希望の未来は、自然と調和した都市をジオラマで表現し…」

熱弁が終わる頃には、運動場に到着。ケンタやアキたちが、分別収集の説明をしていました。

「捨てるという考えを捨てる…。ゴミではなく、再生資源と考えるんです。リサイクルで資源の無駄遣いを減らせます。私たちの調べでは…」・・・ポイント3

伐採による森林減少、マイクロプラスチックによる健康被害。資源の再生例や分別の仕方等の多角的な説明の後、収集体験が始まりました。

「参加したいが、…SDGs発表会に遅れるぞ」

鬼塚先生に促される渡来先生。調べ学習の成果発表や成果報告が、講堂で行われるのです。

「最後の西華祭、どの子も輝いていますね!」

感激する渡来先生に、小声で呟く鬼塚先生。

「オレもこの学年で成長した。自己評価だが」

俯き加減で、足早に講堂に向かう鬼塚先生。その後を、渡来先生は黙って追いかけました。

ポイント3【 リサイクルの考え方 】
「MOTTAINAI」(もったいない)という節約に関する言葉が世界共通語となったように、限りある資源の再利用も非常に重要な考えです。「ゴミという概念を捨て、再生資源と考える」 ことは企業努力として実施されており、我々の生活にも根付き始めています。手間がかかる、面倒くさいと嫌がらず、リサイクルに取り組む姿勢をまずは学校教育で推進、実践していきましょう。

(次回へ続く)

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