教育実習を迎える学生の皆さんへ|先輩教師のメッセージ

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愛知県公立小学校教諭

八神進祐

教育実習を控えている学生の皆さんに、現役教師が実習の心構えをレクチャー。学校生活や授業時で発揮する柔軟なアドバイスは、大学の授業とはまた違った実践的なものばかり。限られた実習期間を充実させるためにも、ぜひ心に留めておいてください。

執筆/愛知県公立小学校教諭・八神進祐

教育実習を心待ちにしている学生の皆さんへ|先輩教師のメッセージ
写真AC

教育実習 子どもとの関わり編

子どもの特性で関わり方を変えよう

一言で「子どもと関わる」といっても、様々な場面での関わりがあります。特に、休み時間の子どもとの関わりといえば、運動場でドッジボールや鬼ごっこなどを想像する人は多いのではないでしょうか。

しかし、体を動かすことが好きな子もいれば、静かに過ごしたい子もいます。後者のような子には、一緒に図書室に行き、隣で本を読んだり、教室で一緒に動物の絵を描いたりすることで、さらに関わりが深まるといえます。

子どもたちの特性を見極め、一人ひとりと丁寧に関わっていくことが大切になってきます。

子どもたちとの距離感を見極めて

教師は多くの子どもたちを指導します。逆にいえば、多くの子どもたちの目によって教師は見られている(評価されている)と言い換えられます。一挙手一投足を見られているといっても過言ではありません。

普段は学生でも、子どもたちの前では“先生”です。よくある“失敗談”に、子どもとの距離が近すぎる、いわゆる“お兄ちゃん・お姉ちゃん先生”があります。そうなってしまうと、指導が入りにくくなるばかりか、踏ん張らせたい場面で子どもたちの甘えが出てしまい、それができなくなってしまいます。

子どもたちとの年齢が近いからこそ、距離感をもって接することができるといいですね。「言葉遣い」や「服装」なども意識的に心がけ、距離感を保っていきましょう。

謙虚な心をもちつつ、堂々とした態度、時には毅然とした態度で臨みましょう。実習生が来るとあらば興味のない子どもはいません。近くに寄ってきてくれる子だけでなく、遠くで待っている子にも声をかけてあげましょう。

きっと皆さんからのアプローチを心待ちにしています。ぜひ、皆さんが子どもたち同士の“つなぎ役”となってほしいと思います。教育実習生のおかげでクラスがまとまることはよくあります。

アンテナを高く、変化を読み取ろう

一日の学校生活の中で、子どもたちの様々な“顔”を見ることができます。表情を読み取ることはもちろん、朝・昼・帰りの時では顔つきに違いがあります。ぜひともアンテナを高くして、子どもたちの表情の変化に気付ける教師になってください。

また、各ご家庭の背景は様々で、母子家庭や父子家庭、外国籍や宗教関係など配慮すべき事柄が多くあります。教師側の軽はずみな言葉によって子どもたちを傷つけることがないよう、配慮事項などを担当教官の先生に伺っておくことは忘れないでください。

教育実習 授業の見方編

板書のユニバーサルデザイン化を!

おそらく現場の先生方は基本的な板書の使い方を見せてくれるでしょう。1時間の学びが「導入・展開・まとめ」といった形で振り返られるようになっています。学びの足跡が板書されていく過程を時系列とともに記録していきましょう。

各学年によって文字の大きさや書くスピードなどは違います。様々な学年の授業を参観させていただく中で、見取っていけるといいですね。

また、チョークの色使いにも気を配りましょう。子どもの筆記用具は鉛筆と赤鉛筆の二色程度しかありません。さらに色覚の関係から、白と黄しか使わないなどの配慮もあるでしょう。皆さんが授業をされる際には、板書のユニバーサルデザイン化を目指してくださいね。

机間指導は3つのポイントを注視

机間指導といっても内訳は①確認、②組み立て、③支援などに分かれています。以下のことを意識しながら、現場の先生方の机間指導を分析的に見取っていきましょう。

①確認
教師が発問した内容が伝わっているかを目視で確認をします。

②組み立て
相反する意見をノートに書いている場合や、視点のいい発想を書いている子などを、どのように発表してもらおうかと、授業展開の組み立てをします。

③支援
困っている子へ声掛けをしたり、ヒントを与えたりなどの取組への支援を行います。私はよく、仲間の考えを参考にするための「見る見るタイム」を行います。互いのノートを見せあって、よいものを取り入れ合うようにしています。

子どもたちそれぞれの理解度を見取る

理解には、次の3段階があります。

説明が分かる問題が解ける誰かに説明ができる

現場の先生は、子どもたち一人ひとりが今どの段階なのかを発問をしたり活動をさせたりする中で見取っていき、様々な支援をしています。理解の段階が違う子同士のグループ活動も有効ですし、ホワイトボードやICT機器の活用もあるでしょう。現場の先生はプロです。沢山の技を見せていただいて、自身の引き出しを増やしていけるといいですね。

授業を観る視点が分かると参観の時間が豊かになります。また、「自分ならどうするか」も同時に考えましょう。授業を観せてくださった先生へのお礼と共に、「なぜあの場面で…」と質問をするとさらに深い視点を得ることができます。ぜひ参観の時間を有意義なものにしてください。

教育実習 「デキる実習生」編

群れずに凛と学ぶ

1つの学校に数名の実習生が配属されることがあります。慣れない環境の中、実習生同士、近くにいたくなる気持ちはとてもよく分かります。しかし、せっかくの教育実習です。子どもたちが学校にいる間は、子どもたちや現場の先生方とコミュニケーションをとりましょう。

緊張もあり、声を掛けることに躊躇するかもしれませんが、誰もが実習生の勇気ある行動を望んでいます。凛と学ぶ姿勢は、見ていてとても気持ちのいいものです。

適切な距離をとる

子どもたちとの距離感が近いと、親近感は湧きますが、指導が届きにくくなります。授業と休み時間のメリハリをつけることは大切ですが、それ以外にも

  • 服装(ジャージで過ごしていませんか。スリッパで歩いていませんか)
  • 言葉遣い(子どもたちにも丁寧な言葉遣いをしていますか)
  • 所作(髪や顔を触る頻度や、気になる仕草は減らしましょう)

などに、気を付けましょう。「なくて七癖」と昔から言われます。担当教官の方に「よい教師になりたいので、自分の気になる言動がありましたら、教えていただきたいです」と伝えると、より多くの学びや気付きを得ることができるでしょう。

模擬授業でイメージをもつ

「授業は生き物」とよく言われます。指導案という紙の上や頭の中のイメージだけで授業の練習をしていませんか。実際の教室、黒板などで、本番を想定して模擬授業を行いましょう。一人でもできます。

  • 授業の序盤、中盤、終盤に何を言うか。
  • 文字の大きさ、書くスピードは丁度良いか。
  • 全員参加できる授業内容か。
  • これらを意識して授業作りに励んでみるとよいでしょう。

実習で教壇に立つ皆さんへ

私は、教育実習生の皆さんが「よい授業」ができることを心から願っています。テクニカルな授業はまだできないかもしれませんが、若さ溢れる授業には「熱」があります。そのような授業は「よい授業」だと私は思います。きっと皆さんのことを、子どもたちは助けてくれるでしょう。

数週間という期間でも、子どもたちは日々大きく成長します。それは、実習生の皆さん自身もです。皆さんが教師という道を選んでくれたこと、一教師としてとてもうれしく、心強く思います。可能性を秘めた未来ある子どもたちのために、共に頑張りましょう。応援しています!


先輩教師のリアルメッセージいかがでしたか。数年後、教壇に立つ皆さんへの具体案が丁寧に解説されていますよね。ぜひ実践の場で活かしてください。それでもわからないこと、不安なことは 「みん教相談室」までご相談ください。教育技術協力者の先生方がアドバイスしてくれますよ!

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