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次期学習指導要領を先取り! 子どもたちの「多様性を包摂」する授業実践レポート~神奈川県葉山町立上山口小学校3年1組<前編>【PR】

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子どもたちの「多様性を包摂」する授業実践レポート バナー

現在審議が進行中の次期学習指導要領では「多様性の包摂」が重要な論点として位置付けられ、通常の学級にインクルーシブな視点を取り入れるための議論が活発です。「障害の社会モデル」に基づき、学級という学習環境そのものを変えていくことが求められる今後、学級担任はどのような授業づくりをするべきなのでしょうか? 株式会社LITALICO(リタリコ)の教育ソフトを自治体レベルで導入、先端的な実践に挑む葉山町立上山口小学校の授業を、一つのモデルとしてレポートします。

提供/株式会社LITALICO

LITALICO教育ソフトの3つのツール

LITALICOは「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、発達の気になる子ども向けの「SST&学習教室」を運営しており、全国で約2万名以上の指導実績があります。今回の3年生の授業では、子どもたちの学びをサポートするため、LITALICOの教育ソフトが活用されました。

先生方には、こんな悩みはありませんか?

  • 子どもの見立てに自信がない。
  • 個別の教育支援計画・指導計画の文章が曖昧な表現になり、評価が難しい。
  • 特別支援教育の指導方法についてじっくり勉強したり考えたりする時間がない。

これらの悩みを解決してくれるのが、LITALICOの「まなびプラン」、「まなび教材」、「まなび動画」です。LITALICOではそれら3つの製品をセットで自治体向けに提供しています。

まなびプラン~ 個別の教育支援計画・指導計画作成の負担を軽減。入力したデータが可視化され、それぞれの困りに対して合理的配慮の文例が出てきます。

LITALICOの「まなびプラン」の利点を説明した図

「まなびプラン」によって作成した個別の教育支援計画の例

「まなびプラン」によって作成した個別の教育支援計画の例

「まなびプラン」のアセスメント例

その子どもの特性由来の行動面の困りが、可視化されます。

「まなびプラン」のアセスメント例

まなび教材~「LITALICOジュニア」の教室での実践を基に作られた教材です。

★まなび教材~「LITALICOジュニア」の教室での実践を基に作られた教材です。

まなび動画~ 特別支援教育に関する研修動画で基礎や実践法を学べます。

★まなび動画~ 特別支援教育に関する研修動画で基礎や実践法を学べます。

「まなび教材」を活用した、小3・学級活動の授業実践例

今回は、特別支援学級ではなく通常の学級において「まなび教材」を活用した授業が行われると聞き、葉山町立上山口小学校(児童数120名)3年1組の学級活動の授業を参観しました。
レポートするのは、LITALICOと上山口小学校で検討を重ねた3回セットの授業プログラムの3回目に当たります。

授業者:葉山町立上山口小学校 大窪昌哉教諭


おおくぼ・まさや。1975年神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、一般企業の経理部に7年間勤務し、30歳で退職。通信制大学で小学校の教員免許を取得して、逗子市内の小学校にて教員人生をスタートする。2024年度からは葉山町立上山口小学校に勤務。子どもたちとともに学びを楽しみ、みんながイキイキ・ワクワクした時間や場を共創するために、さまざまなチャレンジを行ってきた。

●主題名「自分の心と仲良くなろう~気持ちの温度計と心のスイッチ~」
指導計画(全3時)
学習活動本時のねらい
第1時「ヤバい」の中身を探検しよう感情の語彙を増やし、心の解像度を上げる。
第2時気持ちの温度計と凸凹交換自分の特性を知り、他者との違いを「個性」と認める。
第3時自分を助ける「心のスイッチ」脳の仕組みを知り、自分で自分を整える力を育てる。

教材選びのベースにあるのは「まなびプラン」の活用です。
使ってみた印象を、大窪教諭に聞きました。

★「まなびプラン」について
本校に異動してきて2年になりますが、この学校に来て初めて「まなびプラン」を使いました。これまでは、子どもの見取りがどうしても教員自身の感覚や印象に基づくものになっていた可能性は否定できないと思います。実際に使ってみると、「まなびプラン」のアセスメントは非常に的確だと感じます。
例えば、ある子どもについては衝動性、気持ちを上手に表現できない、感情のコントロールが苦手、といった部分が可視化されていました。それは自分が考えていたこととほとんど差がなく、「やっぱりそうなんだ」と納得できました。
しかも、私が言葉で表現すると、どうしても印象を伝えることが中心になってしまいますが、「まなびプラン」の文例を使うことで客観的に、よりわかりやすく伝わります。データを次の年に引き継ぎやすいのもメリットです。次の年の担任がそのアセスメントを見て、「この子はこういうことで困っているから、こういう手立てが必要だよね」と、いちいち言葉で伝えなくても、客観的なデータをベースに考えられるのは大きいことです。業務の負担軽減につながると思います。
葉山町ではこれまで特別支援学級で活用されてきましたが、実際に使ってみると、それだけではもったいないと感じました。通常の学級でも使っていくといいのではないかと感じます。

1、2時間目の復習からスタート

大窪学級は、とても自由でのびのびとした雰囲気です。写真の通り、コの字形に配置された机と、その中央に設けられた畳敷きのリラックススペースによって構成された、個性的な学習環境の中で授業は始まりました。まずは前時までの学習の振り返りから入ります。

授業の導入場面

自分の心との付き合い方を学ぶ授業を、今まで2回やったのを覚えていますか?

大窪教諭の問いかけに、多くの子どもたちが思ったことを口にします。

温度計を書いた。

「気持ちの温度計」だよね。その前は?

カードを使って、「ヤバい」のクイズをした。

「ヤバい」という言葉には、いろんな意味があることに気づいたよね。では、前回の「私の気持ちの温度計」の振り返りを読んでみます。

大窪教諭は、子どもが書いた振り返りの文章を読み上げます。

「ぼくは、同じ温度の人もいたけど、違う人がいて、人はみんな違う気持ちなんだなと思った」
「ぼくは、みんなの考えが、一緒じゃないと気づいた」
「わたしは、『うれしいーっ』てなると、身体と心、一緒に温度が上がる」

そうなんだ。

そうか。

ああ!

同じ人、いなかった…。

子どもたちは大窪教諭の言葉を聞き、それぞれが自然なつぶやきを口にしました。安心感のある空気が学級に満ちているため、元気で反応がよく、素直に気持ちを口にします。

②グラウンディング

今日のテーマは、自分を助ける「心のスイッチ」です。それが何なのかを、自分の心に向き合ってゆっくり考えていきたいので、初めにグラウンディングから始めましょう。

グラウンディング(grounding)とは、「地に足をつける」という意味です。意識を「今」に集中させ、心を落ち着かせる技術として活用されています。

大窪教諭の言葉と動きに合わせて、子どもたちも同じことをします。それまでザワザワしていた教室が一気に静かになりました。

子どもたちに「グラウンディング」のモデルを示す大窪教諭。
子どもたちに「グラウンディング」のモデルを示す大窪教諭。

大窪教諭「両足を床にしっかりつけて、椅子の上に座ります。天井からひもでぴんと吊るされているような感覚で、しっかりと腰の上に座り、ゆっくり息を吸って、吐きます。もう一回息を吸って吐いたら、自分の心、気持ちに目を向けていきましょう。3回目、ゆっくりと息を吸って、吐ききったら目を閉じましょう。僕らは目から多くの情報を得ているので、一度目を閉じて情報をシャットアウトすると、自分の心の中に意識を向けることができます。ゆっくりと呼吸をしながら、今のあなたの心の中の感情、気持ちに目を向けてみてください。ゆっくり吸って、吐きます」

グラウンディングで目を閉じて心の中に意識を向けている子どもたち。
グラウンディングで目を閉じて自らの心の中に意識を向けている子どもたち。

例えば、ウキウキワクワクしている人は、なぜ自分の気持ちがそうなっているのか、その原因を自分の心の中で探ってみてください。友達と楽しく遊んだからかもしれない。人には言えない、嬉しいことがあったのかもしれない。
イライラしている人は、なぜイライラしているのか、その原因に目を向けてみましょう。嫌なことがあったのかもしれない。自分に腹が立っているのかもしれない。自分の心に向き合ったら、また呼吸に意識を戻しましょう。ゆっくり吸って吐きます。もう一回、ゆっくり吸って吐きます。
最後、ダブルブレスでゆっくり吸って、限界かなと思ったらもう一回吸って、ゆっくりふーっ……と吐いたら目をあけて戻ってきてください。

③感覚統合に基づいたリラクゼーション体験

実はね、今のグラウンディングも、自分を助ける心のスイッチの一つになります。
自分を助ける心のスイッチは他にももっとたくさんあるので、みなさんで体験していきましょう。まず紹介するのは、漸進的筋弛緩法です。

授業場面

漸進的筋弛緩法では、身体の筋肉をあえて緊張させて、その後一気に緩める動きを繰り返して体をリラックスさせます。

★まなび教材1「漸進的筋弛緩法」より

「漸進的筋弛緩法」のやり方の説明図。
「漸進的筋弛緩法」の説明図。

最近イラっとしたことを思い浮かべてみてください。あのとき嫌な気持ちになったなぁってこと、何かある?

あるある。

何十回もあるよ。

例えば、消しゴムを貸したのに返してもらえなかったとか……。ちょっとザワザワしてきたかな? 嫌なことを思い出したら、座っている椅子の足の根元のところで、足にぎゅーっと思い切り力を入れて自分の側にひきつけて全身に力を入れて……。

痛い、痛い。

うおー。

あー!

身体にぎゅーっと力を入れて、ふっとその力を解放することで、もやもやしてること、イライラしていることが少しすっきりします。

子どもたちは、筋肉を緊張させ、一気に緩める、を先生と一緒にやってみます。

少しイライラが抜けたな、という気がする?

力を入れ過ぎて暑くなった。

「漸進的筋弛緩法」は「まなび教材」の一つですが、この授業ではこのほかに三つの「まなび教材」を使用しています。大窪教諭は今回、どのような観点で教材を選んだのでしょう。

★教材選びについて
クラスの中で、「まなびプラン」にデータを入力してある子どもは、3名です。彼らのアセスメントの結果を見ますと、衝動性が強いこと、気持ちを上手に表現できないこと、感情のコントロールができないことなどが可視化されていて、非常に納得できるものでした。それに加え、クラスの子どもたちの日々の様子を見ていると、感情のコントロールがうまくできず、イライラして感情を爆発させてしまう子が、他にもたくさんいます。ですから、「まなびプラン」のデータに、自分の見取りもプラスして、この部分にアプローチするために、感情を扱う授業をしたいと考えました。
ただし、LITALICOさんの教材は膨大な数(約39,000枚)があり、それらを全部見た上で選ぶことは不可能です。
今回は、「感情を扱う授業をしたい」とLITALICOの担当者に伝え、いくつか候補を提案してもらい、その中から選びました。3時間目は、感情のセルフケアを行います。衝動性の強い子どもたちが、自分の気持ちが高まったときに、自らを落ち着かせる行動ができるように、感情をコントロールする方法について考える教材を使っています。

④絵本「おこりたくなったらやってみて!」を読む

では、真ん中に集まってください。

先に書いたように、3年1組ではコの字型に机が配置され、真ん中にリラックススペースが設けられています。子どもたちはそこに移動し、それぞれが好きな場所に座りました。

教室の真ん中にあるリラックススペース。
教室の真ん中にあるリラックススペース。

絵本『おこりたくなったらやってみて!(‎ガストンのきぶんをととのえるえほん)』文・絵:オーレリー・シアン・ショウ・シーヌ、訳:垣内磯子、主婦の友社)の読み聞かせが始まりました。

絵本を読み聞かせる大窪教諭と、中央のスペースで聞く子どもたち。
絵本を読み聞かせる大窪教諭と、中央のスペースで聞く子どもたち。

主人公はガストン。小さなユニコーンの子どもです。ガストンは幸せなときもあれば、怒るときもあって、いろいろな気分になります。魔法のたてがみを持っていて、その色が気分によって変わります。
何もかもうまくいっているとき、たてがみは虹色になります。幸せなときは黄色、怖いときは緑、悲しいときは青、怒っているときは赤になります。

例えば、庭で遊ぼうとして、突然雨が降ってきたとき、ガストンはイライラする。

わかるよー。

ママに「早くお風呂に入りなさい」と言われたとき、ガストンは腹を立てる。まだ遊んでいたいのに、お風呂からあがりなさいと言われたとき、ガストンは怒り出す。

私も、「長風呂しないで出てきなさい」と言われる。

絵本を読み聞かせる大窪教諭と、中央のスペースで聞く子どもたち。
絵本を読み聞かせる大窪教諭と、中央のスペースで聞く子どもたち。

最後に、ガストンが怒りを追い出す呼吸法が紹介され、絵本が終わりました。
子どもたちがそれぞれの席に戻ります。

⑤怒りの火山を使って、気持ちのコントロールを考える

さっき心のスイッチを変える方法をやったでしょ? ぎゅーっと力を入れて、フッと力を抜きましたね。ガストンの方法もグラウンディングの方法と似ているよね。今日はそれぞれ自分に合った、心のスイッチの入れ方を考えていきたいと思います。

まずは怒りについて学びます。

★まなび教材2「みんなで作ろう!怒りの火山シート」より

「まなび教材」の一種、「みんなで作ろう!怒りの火山シート」

怒りを火山に例え、その強さを3段階のレベルに分けて考えてみます。

レベル1は、怒りのきっかけになる出来事があり、「なんでそんなことをするの?」「なんでこんなことを言うの?」などと感じて、ちょっとイライラします。

レベル2は、怒りの爆発が近くなり、もっとイライラしています。少しずつ落ち着くけれど、うまく発散できないと後悔して、つらい気持ちになっていきます。

レベル3は、怒りが爆発した状態です。判断力が0になってしまうため、人や物に当たってしまったり、暴言を言ったりしてしまいます。

怒りには3段階のレベルがあります。レベル2からレベル3へ行かないようにするために、自分の心のスイッチについて考えてみたいと思います。この後、ワークシートを配って、みんなに考えてもらいますが、その前に僕と一緒に考えてみよう。


取材・執筆/林 孝美
撮影/西村智晴、林 孝美

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