子どもの「自尊感情」を高める3つの指導の手立て

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埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者

稲垣孝章

学級経営・特別活動を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、教育現場で見て気になったことについて、ズバリと切り込みます。今回は、子どもの自尊感情を高めるための指導の手立てを解説します。

文/元・埼玉県公立小学校校長・稲垣孝章

うつむきうずくまる子ども
写真AC

自尊感情が低い日本の子どもたち

「どうせ、ぼく(わたし)なんて…」と言う子どもはいませんか。

日本の子どもたちは、諸外国に比べて「自尊感情が低い」という実態が、様々な報告で取り上げられています。しかし、他の調査では「人の役に立ちたい」という感情や欲求は諸外国に比べ、高い水準にあります(内閣府の調査等)。このような現代の子どもたちの実態を踏まえ、次のような視点で学級づくりのまとめをしていくことが求められます。

強い意思決定ができる場面を設定する【自己決定】

強い意思決定は、確かな実践に結びつきます。

まず、子ども自身が自分の特性や現状を把握できるように指導の手立てを講じることが大切です。そして、その改善に向けて、子どもが自分で強い意思決定をできるようにします。その際、次のような先行研究も参考にして、よりよい自己決定ができるように指導していきましょう。

【弱い脅しの効果】 (高校生への「歯の健康の実験」)

被験者の高校生4グループに、歯磨きと歯の健康について、別々に話を聞かせました。歯磨きをおろそかにすると歯や歯茎の病気になるという「脅し」を、3つのグループにそれぞれ強・中・弱の3段階の病状の写真とともに伝え、1つのグループには脅しは無しとしました。ただし歯磨きの励行の「すすめ」は、4グループ共通で伝えます。一週間後、口腔の健康に留意して最も歯磨きを励行していたのは「弱い脅し」を受けていたグループでした。さらに一週間後、「歯磨きと歯の健康に関連性はない」というような、「すすめ」と逆の話をした際、最も強い抵抗を示したのも「弱い脅し」を受けたグループでした。

Effects of fear-arousing communications(JanisとFeshbachの1953年の研究)

どの子にも活躍できる場面を設定する【場面リーダー制】

よりよいリーダーシップは、メンバーシップ経験をしてこそ発揮されます。

修学旅行でのある学級での実践です。このクラスでは、朝の出発式から帰りの解散式までの様々な場面で、学級の全員が役割を分担して人前で発表する活動を展開していました。また、バス内では、全員が修学旅行のめあてを発表し、帰りには全員が自分のめあてについて活動をふり返った自己評価を言葉で披露していました。人前で話すことが苦手な子どももいるのが現実です。だからこそ、このような場面を意図的に設定して一人ひとりの子どもの成就感や自尊感情を高めていく手立てを講じていくことが、今まさに求められているのです。

一人ひとりのよさを認め合う場面を設定する【相互評価】

相互評価の視点が明確であってこそ、よさを認め合うことが可能となります。

自尊感情は、集団内の肯定的な評価が大きな基盤となります。ゆえに、どのような視点で仲間を称賛するかという視点を明確にしておくことが大切です。 学級会で例えれば、たくさん発表した子どもよりも、他の意見を尊重して、関連発言をした子どもを評価できるようにしたいものです。まさに、教師の確かな評価の視点が、子どものよさを認め合う相互評価の力を高め、一人ひとりの自尊感情を高めていくのです。


『小一~小六教育技術』2014年4月号~2016年2/3月号連載「正襟危座--伝えたい--耳に痛いかもしれないけれど、教室で大切な基礎基本」より

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