小島よしおインタビュー「おっぱっぴー小学校は子供も自分も楽しむ学校」

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「そんなの関係ねえ!」でおなじみの芸人・小島よしおさんが、コロナ禍の最中に開校したユーチューブチャンネル「おっぱっぴー小学校」。小学生向けの授業動画を配信したところ、「おもしろくて分かりやすい!」とみるみる評判に。人気動画や子ども向けライブの数々…子どもの心をとらえて離さないその魅力とは?

小島よしおさん画像

おっぱっぴー小学校開校! 学習動画が大人気

―おっぱっぴー小学校の小島よしお先生は非常に人気がありますね。

小島 子供の反応はすごくいいです。時計の読み方の動画は55万回ぐらい見られています。時計を読めるようになったと好評でした。動画へのコメントだけでなく、子供が僕の似顔絵を描いて送ってくれたり、ファンレターが届いたりします。

小学校入学前の子が、おっぱっぴー小学校に入りたいと言うので困っているという親のコメントも来ました。閲覧数を含めて反応があるのは、めちゃめちゃうれしいですね。

―どうして学習動画を始めようと思ったのですか。

小島 放送作家の人が誘ってくれたのがきっかけです。新型コロナウイルスの影響で僕も仕事が減っていたので、それではやろうかということになりました。

やり始めたら、すぐにツイッターで急激に評判が広がったんです。テレビ番組で実演したこともあって、今も閲覧数が伸び続けている感じです。

 ユーチューブ「小島よしおのおっぱっぴーチャンネル」より
ユーチューブ「小島よしおのおっぱっぴーチャンネルー小4算数角とその大きさ」より

―評判がよかった動画は?

小島 時計の読み方、角とその大きさ、円周率などの動画ですね。円周率の動画でいうと、「円周率ってどれぐらいだろうね?」と呼びかけておいて、僕がホワイトボードのほうに向くと、背中に『3倍ちょっと』という文字が書いてあるという仕掛けがウケたみたいです。

何でもないようですが、円周率と3・14という数字が結びついて頭にインプットされるんじゃないかと思います。

 ユーチューブ「小島よしおのおっぱっぴーチャンネル」より
ユーチューブ「小島よしおのおっぱっぴーチャンネル」より

―学習動画をつくるというのは、教育学部出身ということが影響していますか。

小島 僕は大学で教職課程をとっていないので、影響しているとすれば肩書きだけですね。僕は9年ぐらい前から子供向けライブを行っているので、ライブで培った感覚が動画づくりに生きているんじゃないかと思います。

動きや視覚化で子供の心をつかめ

―子供向けライブを年間100回以上も行うというのはすごいですね。子供の心をつかむポイントをお聞きしたいと思います。

小島 小学生のころを思い返してみると、先生が脱線したことを覚えています。なぜだか忘れたんですが、先生が月光仮面の歌を歌い、踊ってくれたんです。当時、その先生は30代半ばぐらいだったでしょうか。

子供というのは、絵、歌、踊りの類は好きだと思いますよ。つまり、子供の視覚に訴えるということです。

―その要素は小島さんの動画にも入っていますね。

小島 そう聞かれてみると、ライブでやっていることは動画づくりにつながっているかもしれません。どうすれば子供たちに楽しんでもらえるか、自分も楽しむかということを考えていると、自然に絵を描いてみたり、歌や踊りが生まれてきたりするんです。

―ライブでは、どのように子供とのコミュニケーションをとるんですか。

小島 初めから子供たちに呼びかけて応えてもらうコール・アンド・レスポンスはしないで、すぐ歌や踊りのネタに入ります。子供の興味を引かせることに集中するんです。

 ユーチューブ「小島よしおのおっぱっぴーチャンネル」より
ユーチューブ「小島よしおのおっぱっぴーチャンネル」より

最初から子供に問いかけたりすると、いろんな子が質問しはじめたりして収拾がつかなくなることがあります。すると会場に温度差が出てしまうんです。質問している子は楽しいけれど、それ以外の多くの子はつまらない。

子供が集中できる時間は短いから、質問していない子供たちは興味を失います。下手をすると、この人は統率力がない人だと、子供たちが判断してしまうんですね。秩序が失われ、会場全体が盛り上がらなくなります。

ショッピングモールの会場では2階、3階があるので、上下左右といろんな方向を向きながら、この裸のお兄さんはおもしろいんだというのを、まずわからせることが必要なんです。そうすることで、クライマックスを迎えやすくなります。

そうしておいてから、徐々に質問を入れていきます。これは本能だと思うんですが、子供はこの中で誰が一番かというのを見るところがあります。ステージに上がってその場の主導権を握るために、まずネタから入るというのはありますね。

―ライブをして子供とつながったなと思うのは、どんなときですか。

小島 ライブの最後で、僕が「そんなの関係ねえ!」と叫んだら、会場の子供たちにも「そんなの関係ねえ!」と言わせるんですが、それまでに子供たちとつながっていると、そのときにものすごい声が返ってくるんです。初めのころのコール・アンド・レスポンスとは桁違いで一体感があります。

ハウジングセンターでライブをしたとき、道路の向こう側のマンションからうるさいと苦情が来たことがありますよ。やったと思いました。会場が揺れた感じがしてうれしかったです。

―男子と女子のどちらにウケがいいですか。

小島 圧倒的に男子です。女子は5、6年生になると、僕を卒業していきます(笑)

褒めるときは心からの感情で、すぐ伝える

―ライブでは、子供たちをよく褒めるそうですね。

小島 ステージの上で子供に将来の夢を発表してもらうコーナーがあるんですが、緊張して言葉が出てこない子供がいます。そんなときに、「勇気を出してステージに上がってきたね」と褒めたり、「じっくり考えていいよ」と声をかけたりします。

決して「(言葉が)出ないんかい」などとは突っ込まない。これは統計でも何でもなく、よしお調べですけれど、そのほうが子供が萎縮しないというか、のびのびとするような気がするので、意識的に子供を褒め、子供の言葉を否定しないようにしています。

褒めるときはすぐに本気で、というのが僕のやり方。感情は連鎖します。言葉だけではだめで、本気じゃないと相手に伝わらない。

―子供に役割を与えるのがいいとおっしゃっていますね。それはどういうことですか。

小島よしおさんインタビュー風景

小島 小6のとき、僕は野球チームのキャプテンになりました。先輩がいなくなって大丈夫かと思ったけれど、自分がそのポジションに就いたら責任感が出てきました。そういうことは大人だけでなく、子供にも絶対あると思います。

僕がピン芸人になったときも、ピン芸人としての自覚ややりたいことが出てきました。僕は今までそういうのが多いですね。

僕のライブでいうと、バナナがあれば変身できるんだけど、バナナがない、バナナを探してくれないかと子供たちに頼むと、みんな探してくれます。子供に役割を与えると、一生懸命にやることを覚えると思います。

―何かをしようとピン芸人になったわけではないんですか。

小島 僕の人生を振り返ると、根拠のない自信でずっとやってきたという感じです。ピン芸人になったときも、根拠のない自信があっただけ。当時のマネージャーから「おまえには無理だ。花屋さんのほうが向いている」と言われました。

おまえは優しいし、明るいから花屋に向いていると。それまで5人組で活動していましたが、僕はネタをつくれないし、5人組の中でも笑いをとるタイプではなかった。だから、根拠という観点で考えれば、その人の言うとおり花屋が向いているかもしれない。

でも、僕は自分のやりたいほうに進んだ。ピン芸人になったおかげで世に出ることができました。役割が人をつくるといいます。やりたかったポジションを続けていると、何だかんだとアイディアが集まってきます。

逆に言えば、データだけで動くと、データに振り回されてしまうんじゃないかな。根拠がいくらあっても自信がなければうまくいかない。自信も根拠も両方あるのが一番いいと思いますが、根拠のない自信であっても、やりたいことをやれば何かが生まれると思っています。

―東京の地下鉄のオフピークを訴えるポスターに小島さんは、『ピークを知る男』として起用されました。そう言われるのはどうですか。

小島 もうこれは光栄です。自分にピークがあったからそういうことを言われるわけですから。一発屋と言われても、「そんなの関係ねえ!」です。

最近、歳をとったせいなのかわかりませんが、幸せの価値観が変わりました。昔は世間の認知度というか、露出度が高いことが成功であるという感覚がありました。

でも今は、それだけじゃない。奥さんと旅行するとか、先輩と飲むといった他愛もないことのほうが自分の中で幸せだったりする。それは、自分のやりたいことと仕事の方向性が近似していることに気づいたからかもしれません。

子供向けライブや、おっぱっぴー小学校の動画づくりは自分でやっていても楽しいんですね。どれだけ今を楽しめているかということが大事なのかなと思っています。

―なぜピークをつかめたと思っていますか。

小島 変化を恐れない行動力じゃないですか。それまで服を着てコントをやっていたのが、ピン芸人になってパンツ一丁になった。今の自分をがらっと変えたことによって爆発が生まれた。それがたまたま時代にマッチしたのではないでしょうか。

小島よしお●1980年沖縄県生まれ、千葉県千葉市育ち。お笑い芸人。早稲田大学教育学部在学中にお笑いサークル「WAGE」に出会い、卒業後、ピン芸人として活動を開始。「そんなの関係ねえ!」がブレイクして、2007年流行語大賞のトップテンに入る。子供向けライブの開催ほか、ユーチューブに開設した「おっぱっぴー小学校」「ピーヤの休日」が大好評。小島さんのブログは→「コジログ」

▼小島さんの著書はこちら

YouTubeで計100万回再生!時計のよみかたを楽しく学べる人気動画がドリルに。

「小島よしおのとけいドリル」
発行/ワニブックス

まえから読むと「べろ」の本。うしろから読むと「うんち」の本。オリジナルの歌つき絵本。

「べろべろぶりぶり」
発行/ワニブックス

子どもと向き合う極意や、エクササイズのメニューなどがぎっしりつまった教師必読の一冊。

「キッズのココロわしづかみ術」
発行/主婦と生活社

撮影/藤田修平 取材・文/高瀬康志

『教育技術 小五小六』2020年9月号より

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