子供を叱らなくてもいい!9つの指導法

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兵庫県公立小学校校長

俵原正仁

あなたはいつも、しかめっ面教師でいたいですか?それとも・・・いつも笑顔の教師でいたいですか?子どもを叱る回数を減らすにはどうしたらよいか、兵庫県公立小学校校長・俵原正仁先生お話を伺いました。

笑顔としかめっ面の教師のイラスト
笑顔としかめっ面の教師のイラスト

「叱らない」のではなく、「叱る必要がない」状況をつくる

世の中には、1年間、自分のクラスの子どもたちを叱ったことが1回もないという先生が存在します。

「教育の仙人」の異名を持つ、我が師匠がそうでした。ただし、この言葉を額面通りに受け取ってはいけません。この話、実は続きがあります。

「叱る必要がないのでな」

つまり、叱る必要がないくらい子どもたちを育てていたということです。この域に達するには、果てしない教師修業が必要ですが、教師があることを意識すれば、叱る回数を減らすことは可能です。

そのあることを「叱らなくていい9の技術(プラス1)」にまとめました。教育の仙人への第一歩を踏み出しましょう。

1:ストレートに伝える

先生「静かにしなさい」「いつまでしゃべってるの!」 ⇒ 先生「おしゃべりはやめましょう」「今、しゃべりません」

授業が始まったのに、子どもたちがなかなか静かにならない。

「静かにしなさい!」
「いつまでしゃべっているの!」

ついイラッとして声を荒げてしまいがち。あるあるですよね。ところが、喧騒状態に担任の大きな声をプラスするだけで、教室はなかなか静かにならず、担任の怒りのボルテージがさらに上がる。これも、あるあるです。

実は、低学年の子どもたちにとって、担任のこれらの言葉は、単なる文句にしか聞こえていないのです。では、どうすればよいのか? 子どもたちにしてほしい行動がある時には、それをストレートに言うと効果があります。今すべきことを伝えると、子どもたちはその通りにしようとするのです。

つまり、「静かにしなさい!」「いつまでしゃべっているの!」と言うのではなく、「今、しゃべりません」と、望ましい行動を伝えればよいというわけです。
このことを意識するだけで、子どもたちを「叱る」という行為は激減するはずです。

意識すべきことは、もう一つあります。高学年の担任が多かった教師が陥りやすい失敗です。次のような聞き方をしてしまうことがあります。

「今、何の時間ですか?」

授業中だから静かにしなければいけない・・・ということに、子ども自身が気付いて行動を変えてほしいという思いからですが、これで静かになることはまずありません。

「はい、授業中です」

と笑顔で答えられて、さらに教師のイライラを増やすという事態に陥ります。遠回しな言い方は、年齢が一桁の子どもには通じにくいものです。

疑問文にせず、こちらが「してほしいこと」をストレートに伝えることが、大切なのです。

2:普通の言い方で繰り返す

望ましい行動をストレートに伝えても、子どもたちの行動がすぐに変わらないこともあります。そんな時、教師は、無意識のうちに怒り口調になってしまいがちです。でも、ちょっと待ってください。ここで怒り口調で叱ってしまえば、元の木阿弥。

「普通の言い方」で繰り返し言うほうが、その通りのことをするものです。

3:気になる子どもの近くに立つ

気になる子どもの近くに立つ

なんとか、子どもたちも静かになり、国語の授業が始まりました。

「よが あけました」
「よが あけました」

教師の範読に続いて、子どもたちが元気よく音読をします。授業の滑り出しとしては上々です。でも、あなたは見つけてしまいます。教室の後ろのほうの席の飯塚くんが音読もせずに、鉛筆のキャップを指にはめて遊んでいるのを。そこで、あなたは一喝!

「飯塚くん、指のキャップを外しなさい!」

あなたの大きな声に驚いた飯塚くんは、慌ててキャップを外します。でも、よい雰囲気で音読をしていたクラスの雰囲気はどこへやら・・・。重苦しい空気が流れます。この場合、教師のちょっとした行動で、大きな声を出す必要はなくなります。

近くに立つ。

飯塚くんの横に立てばよかったのです。普通、教師が自分のすぐ横に立てば、手遊びはしません。それでも、まだ手遊びをしているようなら、机をトントンとたたけばよいのです。これだけのことで、大きな声を出さずにすみ、クラスの雰囲気が悪くなることがなくなるのです。

4:時間を区切る

国語の授業も15分経過。子どもたちの集中力もそろそろ切れてくる頃です。
「低学年の間に、学習規律をきちんと身に付けさせておかないと、高学年になってから苦労するわよ」という話を聞いていたあなたは、姿勢が崩れ始めている子に注意します。

「三上さん、足のかかとは床に着いていますか?」
「金丸さん、話している人のほうを見ましょうね」

学習規律をしっかり身に付けさせることは大切です。しかし、15分も過ぎれば集中力がなくなっても当然です。と言うのも、小学校低学年くらいまでの子どもは、15分が集中力を維持できる限界だと言われているからです。子ども向けのアニメなどが一話10分ほどで作られているのも、こういった理由からだそうです。

だから、授業も45分ぶっ続けで行うのではなく、10分から15分のユニットで組むようにすべきなのです。もちろん、あなたの授業がアニメよりも面白ければ、その必要はありませんが・・・。

5:立ち歩かせる

「飯塚くん、席に座りなさい!」

しばらく手遊びもしないで、おとなしく授業に参加していた飯塚くんが、今度は自分の席を離れてうろうろし始めました。さすがにこれをスルーすることはできません。・・・ということで、再びあなたの怒りは爆発。

「飯塚くん、座りなさい!! 」

でも、これもちょっと発想を変えれば、飯塚くんにこのような言葉を浴びせることはなくなります。「授業は座って受けるもの」という発想を変えるのです。

例えば、「いろいろなお友達のところに行って、思うことを話し合ってみましょう」などと提案してみるのです。これでウロウロする飯塚くんを叱ることはなくなるはずです。

6:叱るのではなく、教える

担任から見て、注意したくなる子どもたちの行動も、実は、故意ではなく過失であることがほとんどです。だって、この世に生を受けてまだ10年もたっていないんですよ。大人のように行動できなくても当たり前です。そう思うだけで、子どもへの対応も変わってくるはずです。

掃除の時間、ほうきを振り回している子がいたら、「危ない!」と叱るのではなく、「周りの子にけがをさせてしまうから、ほうきを振り回してはいけません」と教えてあげればよいのです。自分がすべきことを教えてあげれば、その通りのことができます。

7:いさぎよく諦める

男の子を制する者は低学年を制す・・・と言われます。授業中ウロウロするのもほうきを振り回すのもたいていは男の子。同性である私は、ウロウロしたくなる気持ちも、ほうきを振り回す楽しさもよく分かるのですが、女性の先生にはそのことが今一つ実感できないようです。

このことへの対処法はただ一つです。「そういうのが男の子」だと諦める(笑)。こんなことをするのが男の子、そう思うだけでずいぶん楽になります。悟りを開いた気持ちで、そのありのままを認めながら、その一つ一つを注意していきましょう。

8:赤ちゃん、おじいちゃんになった姿を想像する

クラスの子どもたちが何か問題行動を起こして、怒りが爆発しそうになった時、次のように想像すると怒りが治まります。

「その子の2歳の姿を想像する。または、80歳の姿を想像する」

目の前で悪態をついているやんちゃBOYの赤ちゃんやおじいちゃんの姿を想像するのです。子どもたちをかわいく見える秘伝の技です。

9:教師が笑う

笑いながら、叱ることはできません。何よりも「笑顔の教師が笑顔の子どもを育てる」のです。とりあえず、笑いましょう。これこそが、最強のスキルです。

プラス1 叱るべき時は叱る

先の仙人の話を額面通りにとって、叱らなくなった先生のクラスは、見事に崩れていきました。叱らなくていい技術を駆使した上で、叱るべき時は、しっかりと叱ってください。

イラスト/若泉さな絵


『教育技術 小一小二』2019年4月号より

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