通知表所見は子どもに協力をお願いして納得感を高める【ぬまっち流】
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三学期に入り、そろそろ通知表と向き合う時期がやってきました。ユニークな実践で知られるカリスマ教師、「ぬまっち」こと沼田晶弘先生から、子供の本音を加味し、時間をかけずに納得度の高い通知表の作成方法を、教えてもらいました。
目次
日頃から子供たちの様子をメモする
学期末や学年末は、通知表作成に追われる時期。高学年にもなると、子供や保護者が納得するような評価、所見作成に悩まれる方も多いのではないでしょうか?
僕は記録が苦手なので、所見作成のためのシステムづくりにはいろいろな工夫をしています。
例えば、子供たちの様子で気になったことがあれば、すぐにスマホのメモアプリを使って書き込みます。いつでもできるので効率よく記録できるだけでなく、メモの更新頻度で、よく見ている子と、そうでない子がわかり、更新頻度が少ない子には意識して関わるようになります。またメモの数が少なくても、個人面談の時などには、学校の様子を具体的に話すことができるので、保護者の信頼につながります。
子供たちに協力してもらう所見と先生の通知表
実際に所見欄を作成する際には、子供たちにも協力してもらいます。通知表をコピーして、「学校の先生になったつもりで、自分に通知表を書こう」と伝えながら、子供に自分の通知表を書かせるのです。すると子供たちは、「先生はきっとあの時のことを書くに違いない」と、自分にとって印象に残っていることを書きます。そしてそれは、「ぜひ書いてほしいこと」であり、先生や両親に認めて欲しい「自分が一番頑張ったこと」です。だからできるだけ実際の通知表にも書いてあげます。
なかには、「おしゃべりが多いので気をつけよう」と厳しい自己評価をする子もいます。その場合は、「漢字力の向上には目を見張るものがあります。ただし、若干私語が増えているので、引き続き指導していきます」などと本人が気づいていない頑張りをプラスして書くと、本人の納得度も高く、また信頼関係を深める所見欄になります。
子供たちに通知表を渡すときには、一人ひとり名前を呼び、僕の席に来てもらい、一対一で話をしながら渡すので時間がかかります。だからその時間、他の子供たちには、僕に対する通知表をそれぞれ書いてもらっています。いわゆる先生の通知表です。これは、子供たちに教師として評価してもらうことが目的ではなく、子供たちが今後やりたいことは何か、一番自分に欲していることは何かを知ることが目的です。
しかし児童との間に信頼関係がないと、良い・普通といった単なる評価になる恐れもあり、安易にはお薦めできません。ただ、信頼関係が高いほど、子供たちは要望・期待という意味での評価コメントを書くようになります。だから僕にとって先生の通知表は、子供の本音を探る重要な手がかりでもあるのです。
「子供の力を借り、効率よく、子供も保護者もハッピーになる所見欄をつくる!」
沼田晶弘:1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
取材・文/出浦文絵
『小五教育技術』2019年2/3月号より