小3 国語科「ローマ字」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小3 国語科 「ローマ字」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都渋谷区立富谷小学校・佐藤綾花
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
この単元では、日常の生活で目にするローマ字で書かれた簡単な言葉を読んだり書いたりする力を身に付けます。
駅名や道路標識、ポスターなどで紹介されている商品名など、町のいたるところでローマ字表記を見かけます。本単元の学習を通して、そのような日常目にするローマ字を読めるようになった、という喜びを感じられるようにしていきます。
本単元の学習を通して、ローマ字は日本語であること、平仮名と同じようにアルファベットの組み合わせで一つの音を表すことなどを学んでいきます。
また、書き方の決まりを知り、その決まりを使って書く力も育成していきます。ローマ字を読む活動だけではなく、実際にローマ字を書く活動を通して、決まりに対する理解を一層深めることができます。
加えて、ローマ字表記を基にしているコンピューターの文字入力の仕方について、児童が考えるきっかけとなるようにしていくことも大切です。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、ローマ字で書かれた様々な言葉を読んだり書いたりするという言語活動を設定します。
導入で、身近なローマ字表記の読み方を考え、ローマ字表を見て平仮名と同じように音を表していることなど気付いたことを共有し、ローマ字表記の決まりを確かめていきます。その後、教師や友達が提示した言葉を読んだり書いたりすることを通して表記の決まりについての理解を深めていきます。
単元の後半では、ローマ字表記の決まりを生かしたクイズを作っていきます。
児童がローマ字で書いてみたい言葉を集め、その言葉をローマ字で表し、クイズの問題を作っていきます。友達と互いに「何と読むでしょう?」とクイズを出し合って、楽しみながらローマ字表記についての理解を深められるようにします。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 気付いたことを挙げたり、ヒントを基に予想したりする活動を通して書いたり読んだりしようとする意欲を高める
ローマ字表記の決まりを教師が一方的に教えるのではなく、表を見ながら気付いたことを共有する中で自然と決まりを理解することができるようにします。
教科書で示されているローマ字表記の決まりのうちのいくつかは、表を見ただけで見出すことができます。「この列はみんなaが付いている!」「横を見ると、ここは全部最初にkが付いているよ!」など、表を見て気付いたことをどんどん出し合えるようにします。それらを教師が整理して板書していくことで、ローマ字表記の決まりとして押さえます。
このとき、平仮名の五十音表と比べることで、ローマ字が日本語であることや、平仮名と同じように1音を表す決まりがあることなどに気付けるようにします。児童が自ら決まりを発見することで理解が深まり、さらに色々なローマ字表記の言葉を読みたいと思えるとよいです。
また、正しい読み方をすぐに教えてしまうのではなく、児童の身近なところから手がかりとなるヒントを出し、そのヒントを基に予想できるようにすることで、学習に向かう意欲を高めます。
「先生が好きな食べ物です」「今日の〇時間目の授業です」など、児童が楽しみながら予想する時間を設定するとよいでしょう。児童の身の回りにあることをヒントとすることで、児童が身の回りにあるローマ字に気付き、ローマ字への関心が高まるようにしていきます。
〈対話的な学び〉 対話や会話を生かして気付きを広げる
本単元では、友達と対話する場面を多く設けています。友達とローマ字の読み方や書き方について楽しく対話しながら、ローマ字に親しみ、ローマ字表記に習熟することを目指しています。
2時間目以降には、ローマ字の読み方のクイズを作り、友達と解き合う時間を設定しています。
クイズは、自分が書きたかったり読みたかったりする言葉を選んで作っていきます。
児童が選ぶ言葉は、児童の身の回りにあるものや、児童の経験にちなんだものになると想定されます。友達との会話や家族との会話から思い浮かべることもあるでしょう。ローマ字で書きたい言葉や読みたい言葉を繰り返し探すことで、児童の意識を教科書から日常生活にあるローマ字へ広げ、その中で気付いたことを友達とのクイズや対話の中で確かめることができるようにしていきます。
〈深い学び〉 ローマ字を積極的に使おうとする意欲につなげる
児童の身の回りにはローマ字で表されたものが多くあります。本単元の学習を通して、ローマ字を知り、身の回りにあるローマ字で表された言葉に興味・関心をもてるようにしていきます。
また、1人1台端末を使用し、ローマ字入力を経験することで、ローマ字が身近なものであることを児童が感じられるようにしていきます。本単元をきっかけにして、ローマ字を積極的に使おうとする意欲を喚起することを目指します。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)1人1台端末でローマ字入力を楽しむ
本単元では、授業の終わりにクイズとして友達が書いたローマ字を読む時間を多く設けています。
そのクイズを作る際に、1人1台端末を使用し、ローマ字入力に挑戦していきます。
本稿では、クイズを作る際にGoogle Jamboard(デジタルホワイトボード)を使用することを想定しています。クラスの人数にもよりますが、一人に一枚ずつライドを作ります。スライドは出席番号等で整理しておくと、児童の混乱が少なくなります。
自分のスライドにはクイズとして、自分が書きたかったり、友達に読んでもらいたかったりするローマ字の言葉を記入した付箋を入れていきます。
クイズを解くときは、ペアで行います。端末画面を見せ合い、互いが作った問題を自分のノートに解いていきます。互いのノートを見せ合って、答え合わせをし、クイズの感想を伝え合います。
児童がノートに書く内容と端末に入力する内容を整理して示し、学習の進め方を確認してから取り組むことが大切です。下記のように、流れを提示し、確かめながら取り組めるようにします。
※Google Jamboardは2024年12月31日にサービス終了します。
6. 単元の展開(4時間扱い)
単元名: ローマ字
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時、3時、4時)
〈1時間目〉
〇 ローマ字を知り、読む。
・ 教科書p127のローマ字の表を見ながら、教師が提示するローマ字の言葉の読み方をノートに平仮名等で書く。(児童が何度も見たり聞いたりしている身近な言葉を3個くらい)
〇 ローマ字の表から気付いたことを共有する。
・ ア段は全て「a」、イ段は全て「i」、ウ段は全て「u」、エ段は全て「e」、オ段は全て「o」が付いていることを確かめる。
・ほとんどの音が、子音と母音の組み合わせで成り立っていることを確かめる。
・小文字を使って表す音は、3文字のアルファベットを使って表すことを確かめる。
・「ち」や「ふ」など、2種類の表し方がある字があることを確かめる。
〈2時間目〉
〇 ローマ字の表を見ながら、書きたい言葉を書く。
・自分の名前、家族の名前、好きな食べ物、動物の名前など、自分が書きたい言葉をローマ字でノートに書く。
・ノートに書いたローマ字の言葉をローマ字入力で端末のカードに打ち込む。
〇 友達と書いたローマ字を読み合う。
・教師が提示するローマ字の言葉を平仮名等に直してノートに書く(児童にとって身近な言葉の中で、「のばす音」「つまる音」「はねる音」「人名や地名」以外の言葉から10個くらい)。
・友達が作ったカードのローマ字の言葉を読む。
〈3時間目〉
〇 ローマ字の特別な場合の決まりを知る。
・「のばす音」「つまる音」「はねる音」「人名や地名」の書き方を知る。
・「のばす音」「つまる音」「はねる音」が入った言葉や「人名や地名」を読む。
・「のばす音」「つまる音」「はねる音」「人名や地名」の中で、自分が書きたい言葉をローマ字でノートに書く。
・ノートにローマ字で書いた言葉を、端末にローマ字入力で打ち込む。
〇「のばす音」「つまる音」「はねる音」が入った言葉や「人名や地名」を読む。
・教師が提示するローマ字の言葉の読み方をノートに書く(児童にとって身近な言葉の中で、「のばす音」「つまる音」「はねる音」を使った言葉、「人名や地名」から10個くらい)。
・友達が作ったカードのローマ字の言葉を読む。
〈4時間目〉
〇ローマ字のクイズを作り、クイズ大会をする。
・クイズに出したい言葉を端末にローマ字入力で打ち込む(友達に読んでほしい言葉、書いてほしい言葉)。
・友達が作ったクイズの言葉を読み、クイズを解く。
全時間の板書例と指導アイデア
イラスト/横井智美