小学校理科の指導案、どんなふうに書けばいいの? 【進め!理科道〜よい理科指導のために〜】#30

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
関連タグ

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
進め! 理科道(ロード)
〜よい理科指導のために〜

指導案を書く際は何に留意していますか? 先生方が指導案を書くのは、研究授業のときが多いのではないかと思いますが、指導案を書く際には、ポイントや押さえどころがあります。私としては、先生の問いをしっかり考えること、目標と評価をしっかり意識することが重要と考えます。今回は、指導案の中でも、本時展開の部分について述べていきたいと思います。

執筆/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

1.指導案は先生の「授業の見通しを視覚化したもの」

本時の指導計画の欄は、授業展開と教師の留意点(評価)を書くことが一般的です。

授業展開では「略案」は授業の簡単な流れを示しているものですが、「細案」は授業者の授業に対する見通しや意図を視覚化したものといえるでしょう。

本時の指導計画の欄を先生方が書かれる際は、授業の流れを書いたことで満足をせず、
①授業で何を育成したいのか、何ができるようにしたいのか、「教師の授業の意図」をはっきりと書くこと。
②教師の授業意図を達成するための具体的な手立てを示すこと。例えば、この時間で「問題の見いだし」ができるようになることに重点を置くならば、先生の問いの言葉が重要になります。そこで、授業の流れをどのようにとり、どのような言葉で先生が問いかけ、その問いに対して子どもはどのように答えるのか、ということを想定して、指導案の中に書き込みます。
③第三者が指導案を見たときに、何が授業のポイントなのか、客観的に分かりやすく書くことを意識しましょう。

このように指導案は、授業者として「ここに重点を置いている」「指導の目的を達成するために、このように指導の手立てを行う」ということを示し、それが第三者に視覚的にわかるように示したものといえます。

2.先生の「その場で考えた問い」は “曖昧な問い” になっている

問題の見いだしの場面を例にすると、教師の問いが曖昧だったら、子どもたち自身は問題を見いだすことができません。
導入場面を考えてみてください。先生方は、どのような言葉を発せば、どのような言葉が返ってくるか十分に検討して授業に臨まれていますでしょうか。
毎時間は無理だとしても、3年生の「問題の見いだし」ができているかどうかを評価する場面であれば、導入場面の先生の問いを丁寧に検討したほうがよいでしょう。その場で考えた問いは、ほぼ「曖昧な問い」になっており、その多くは子どもの問題を引き出すことができていないのです。

3.授業の展開や重点の置き方は「本時の目標が何かで決まる」

本時の目標をどのように置かれていますか? 本来、指導案の「目標」の部分は「資質・能力の3つの柱」のいずれかを書くことになります。「資質・能力の3つの柱」とは、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つを指します。目標は、これらのいずれかを育成するように設定することが一般的です。具体例として以下のようなものがあります。

[知識及び技能]
・〇〇について理解している。
・〇〇を調べるにあたって、適切に実験道具を操作することができる。
・〇〇の結果を表などにまとめることができる。
[思考力、判断力、表現力等]*以下の4つを「問題解決の力」といいます。
・〇〇について、問題を見いだし表現している
・〇〇について、根拠のある予想や仮説を発想し、表現している
・〇〇について、解決の方法を発想し、表現している
・〇〇について、より妥当な考えをつくりだし、表現している
[学びに向かう力、人間性等]
・〇〇について、主体的に問題解決しようとしている。

このように見てみると、例えば、よくある「思考力」の目標の書き方として「〇〇について考えている。」というのは、「(正しい考え方を導いたかどうかはともかく)考えている姿があればよい」という意味になってしまうため、上の4つの「問題解決の力」のどれにも当てはまりません。目標の設定としては見直した方がよいということになります。

4.授業での “見取り” の深さは「評価をどれだけ意識したかで決まる」

先ほど、目標は「資質・能力の三つの柱」のうち、どれかを育成するように設定することが一般的です、と述べましたが、本時の評価についても「資質・能力の3つの柱」のうち、どれかを書くことになります。しかしここで注意しないといけないことは、「目標と評価を一致させる」ということです。

例えば目標を「〇〇について、問題を見いだし表現している」としたならば、評価も「〇〇について、問題を見いだし表現したか」のように同じ観点を書く必要があるわけです。
目標に「問題を見いだし」を育成したいと書いているのに、評価で「〇〇について理解している」のように違うことを評価するというのはおかしいですよね? このように、授業の育成したいことと、評価をする内容は一致させ、授業内で一貫した指導ができるようにしたいです。

評価を考える際に、子どもたちにどの程度までできるようになればBなのか、何ができればAなのか、あらかじめ子どもの姿を想定しておく必要があります。指導をする以上、評価をする必要があります。評価をしっかり考えていれば、子どもたちの姿を見取る先生の姿勢も変わります。意識すれば細かなところまで気づくことができるわけです。

イラスト/難波孝

「進め!理科道」は、隔週金曜日に更新いたします。

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

寺本貴啓

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
関連タグ

教師の学びの記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました