おさえておこう! 理科授業の「1人1台端末」活用の基本とは? 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】タイトル画像

年度末を迎え、そろそろ次年度に向けて動き出す時期となりました。理科の授業でも1人1台端末の活用は日常的なものとなっています。このページをご覧になっている方の中には、来年度初めて理科を担当することになり、不安に思われている方もいらっしゃるのでは、と思います。理科では、1人1台端末をどのような場面でどのように活用していくことが望ましいのでしょう。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/北海道公立小学校教諭・加藤久貴
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

理科と「1人1台端末」の組み合わせ

理科の授業と「1人1台端末」は非常に相性が良いものと考えます。理科は、自然事象との出合いの中で問題解決を行いますので、一人一人の問題意識は、実に多岐にわたります。一人一人が自分の考えに合わせて端末を活用し、情報収集や記録が容易にできるようなったことは、大きなメリットであるといえるでしょう。ここで、活用の基本的なポイントを押さえておきたいと思います。

1.活動の記録を効果的に撮影しましょう

理科の学習においてはたくさんの場面で画像や動画を撮影します。春になると植物の種子や発芽の様子、生き物の様子などさまざまな画像を撮影することができます。子どもは、とにかく撮影することが大好きなので、たくさんの画像を端末に収めていくことでしょう。私は、基本的に「どんどんとっていいよ」といいます。ただし、いくつか気を付けることがあります。

⑴ 撮影の目的を自覚していること

例えば、同じ昆虫についての学習でも、昆虫の体のつくりに着目する学習では、昆虫の体のつくりがわかるように様々な角度から撮影する必要があります。また、昆虫のすみかを調べる活動では、昆虫とその周りの様子を含めた画像を撮影します。このように、学習の目的によって撮影のポイントが違います。大切なことは「何のために撮影するのか」を子どもが自覚しているかどうかです。撮影の目的を自覚できるような指導を心掛けることで、着目する視点が明確になり、学習のねらいに迫ることができます。そうすると、やみくもに撮影することもなくなりますので、自然と撮影される枚数は限られてくるでしょう。

⑵ 積極的にメモを残しておくこと

撮影した画像は、そのままにせずに、自分が着目したポイントを残しておくことが大切です。例えば、葉の形に着目する時間では、撮影した画像をチャートを活用して分類したり、気づいたことや発見したことなどを書き加えたりすることで、葉の特徴をくわしくまとめることができます。そのようにして記録した画像は残しておき、必要のない画像は適宜削除していくことを日常化できるようにしましょう。

タブレットの協働ツールを見る子供

2.互いの考えを比べ合ってみましょう

「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実が求められています。1人1台端末を活用して、それぞれが探求を進めることは大切ですが、同時に学級の中で、自分の考えを広げ、深めていくことが大切です。学級には多くの子どもがいます。異なる他者と協力しながら、自分の考えを確認したり、深めたり、新たな考えに気づいたりすることができます。その際、ロイロノートやオクリンクなど1人1台端末の協働ツールを活用します。他者の学びに触れやすい環境を構成することで、子ども同士が学びの重要なパートナーであることを認識でき、集団での学びを一層充実することにつながります。

タブレットの協働ツールを見ながら会話する子供

さいごに

1人1台端末では、動画の視聴なども気軽にできて大変便利ですが、理科の学習は、自然事象に自ら関わる直接体験が基本です。ですから、観察、実験できるはずのことを実験動画の視聴で済ませることがあってはいけません。身近に観察することができないものや、観察、実験の補完となるものを中心に視聴するとよいでしょう。

また、観察、実験においても毎時間端末を活用して記録をする必要はありません。端末を活用する際は、教師が、端末を活用するねらいや活用によって得られる効果を十分に吟味しながら取り組んでいくとよいでしょう。

イラスト/難波孝

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

理科の壺は毎週水曜日更新です!


<執筆者プロフィール>
加藤久貴●かとう・ひさき 北海道公立学校教諭/北海道教育委員会の学力向上推進事業による授業改善推進チームとして、市内の全小学校を訪問し、ICT端末を活用した授業づくりを推進している。
共著に「板書でみる全単元・全時間の授業のすべて理科5年」(東洋館出版社)、「これからはじめる“GIGA”全学年・全単元×1人1台端末×活用事例 小学校理科3・4年」(日本標準)等


寺本貴啓教授

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました