菊池省三の教師力UP道場:「15分1セット構成力」で授業が変わる!

連載
菊池省三の教師力UP道場

教育実践研究家、教育実践研究サークル「菊池道場」主宰

菊池省三

菊池省三先生が伝説の授業の達人(鳥?)であるフクロウのショーゾー先生となって、ラビ子・ツネ夫・タヌ吉の3人、いえ3匹の教師のタマゴたちに「生きた授業技術」を伝授するお話。第7回は、「1時間」(1単位時間)を見通した授業力についてのお話。45分を15分1セット×3 として授業を組み立てることがコツだと、ショーゾー先生は言います。

監修/菊池省三

きくち・しょうぞう。1959年愛知県生まれ。2014年度まで福岡県北九州市の小学校教諭を務め、退職。現在、教育実践研究サークル「菊池道場」主催、高知県いの町教育特使、教育実践研究家。『菊池省三の学級づくり方程式』(小学館)ほか著書多数。

ショーゾー先生とラビ子とタヌ吉とツネ夫

スモールステップで学ぶ「授業ライブ力」とは!?

みなさんは、今の授業に満足していますか?
大学や初任者研修などで学んだ教育技術だけでは不十分だと感じたことはありませんか?
もっと子どもたちを引きつける充実した授業をつくりたいと思いませんか?
ラビ子、ツネ夫、タヌ吉の3人、いえ3匹も、そんな思いをもっている教師のタマゴたちです。
この連載は、3匹が「森の大学」の伝説の授業の達人(鳥?)であるフクロウのショーゾー先生のもとで、大学では学びきれなかった「生きた授業技術」を悪戦苦闘しながら学んでいくお話です。

ショーゾー先生とラビ子
ツネ夫とタヌ吉

15分1セット構成力

ライブ力=(事前準備+教室の空気を読む力+子供を引き出す力)× 教師の人間性

15分1セット構成力_ライブ力の図
鐘

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン

ラビ子

先生! これまで教えていただいたことを私なりに「森の日曜学校」で実践してみましたが、部分的には効果が見えるんだけど、「1時間」の授業として見通すことが、どうしても難しくて……。

ショーゾー先生

そうじゃのう。これまで学んできたことをふまえて、今日は、「1時間」(1単位時間)を見通した授業力について話すとしようかい。

ラビ子

よろしくお願いしますっ!

ショーゾー先生

よい返事じゃ。「す」の後の「っ」の発音が元気よく答えるポイントじゃのう。さて、45分間(1単位時間)の授業を組み立てる上で、みんなはいつもどう考えているかのう?

ラビ笑顔

基本的には、「導入」「展開」「終末」に分けて考えます。

ツネ夫

ぼくも同じです。

ショーゾー先生

ふむ。けっしてこの分け方が悪いわけではないんじゃが、どうしてもおおざっぱになってしまうんじゃ。

多くの先生は、
・導入=授業に集中させて、今日のめあてを確認。
・展開=子どもたちに活動させて、話合いをさせる。
・終末=本時のまとめを書かせて、発表させて、大事なことをもう一度説明する。

と考えている。悪く言うと、何となくそれで授業が流れると考えてしまうようだのう。理論的には確かにそのとおりなのじゃが、それだけでは具体的な行為として授業をつくれない。なぜなら、実際の教師の具体的な行動が、具体的な事実として語れないからなんじゃ。教案を見ても、
・本時のめあてを確認する。
・自分の考えを書いて発表する。
・グループで意見を出し合う。
・本時のまとめをノートに書き、発表する。
といった「活動」が書かれているだけのことが多い。

このような授業のとらえ方・つくり方だと、45分間がダラダラと流れる、メリハリのない授業になってしまいがちじゃ。具体的な行為や行動に結びついていない理論だけだからじゃよ。

ツネ夫

あー、確かにそうですねえ。

ショーゾー先生

教師の指示や発問、説明が明確になっていないと、子どもたちも活動がぼやけて、何をどうすればいいのかハッキリしないということになってしまうんじゃ。その証拠に、授業後に検討会をしても焦点化できない。「何をどう聞いたから、子どもたちはこう反応した」と研究的に検証できない。これはつまり、教師が授業をどうするのか具体的に考えていないということじゃ。このような授業のとらえ方だと、子どもたちの反応の予想もできないじゃろう。だから、メリハリのない授業になってしまうんじゃ。
そうならならないためには、授業を「具体的な教師の行為」と考えていかないといけないということじゃ。

ツネ夫

一度に「45分」の授業をつくろうとすることに無理があるってことですか?

ショーゾー先生

そのとおり! 教師の思いだけでは、いい授業にはならないぞい。授業のつくり方にはコツがいるんじゃ。

タヌ吉

先生、そのコツを早く教えてください!

ショーゾー先生

授業を「具体的な教師の行為・行動」だととらえるなら、
・「○○と聞く」「〜〜をさせる」。
・そうすると、予想される反応は、「1……、2……、3……」である。
こう書かないといけないんじゃ。こう書くと、「○○という発問はよかった」「〜〜と聞いたのでは、予想した反応が出なかった。△△と聞くべきだった」などと、自分の授業を研究的に分析することができるんじゃ。

ツネ夫

そうかあ。

ショーゾー先生

このような授業をつくれるための方法として、45分を15分1セット×3 とすることが大事じゃ。つまり、1単位時間を3つに分けて考えるんじゃ。まず、15分1セットとして考えると、何をどうするべきなのかが明確になってくるじゃろう。そして、その15分を、基本的には(①資料・教材+②発問・指示+③活動+④全体学習)の流れにするのじゃ。

ラビ子

例えば、どんなふうになりますか?

ショーゾー先生

①まず資料を見せる。
② 次に「気づいたり、考えたり、思ったりしたことをノートに箇条書きで3つ書きなさい。時間は3分間です」と指示し、
③ 3分間作業をさせ、
④ 最後に発言させて全員で考えを深め、整理させる。(グループ指名、列指名、自由発表、意図的な指名など)
という構成にするんじゃ。

ラビ笑顔

なるほどー。

ショーゾー先生

このような構成で考えると、

教師側のメリット
子ども側のメリット
ショーゾー先生

ということがわかるじゃろう。

タヌ吉

15分の組み立てなら、ぼくにもできそうだな。

ショーゾー先生

ふむ、そうじゃろう。じゃあ、本日のまとめ。1時間の授業を考えるときに、最初の15分間では、

  • まずどんな資料を持ってこようか。
  • その資料で何を考えさせようか。(発問)
  • どんな学習活動・作業を指示しようか。(指示)
  • 学習活動・作業をどう処理しようか。(指名計画・板書計画)
  • 次の15分間では →(繰り返し)
  • 最後の15分間では、→(繰り返し)
ショーゾー先生

と考えればいい。もちろん、3つの15分間のつながりも考えることを忘れずにの。

ラビ子

わあ、次の「森の日曜学校」で早速取り組んでみようっと。

ショーゾー先生

できることから、1つずつやってみる。その心がけが大切じゃ。新学期、みんなの報告を楽しみに待っているぞい。

3匹挙手

は── い!

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構成:関原美和 イラスト:柴田亜樹子

「小四教育技術」2007年9月号~2009年3月号に掲載した記事を再録

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