「これだけ英語」で乗り切る小学校英語指導#01〜外国語(英語)教育に関する総論〜

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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

外国語(英語)が教科となり、5年生6年生担任は新しい教授スキルを身に付けなければならなくなりました。3年生、4年生担任も然りです。教授内容を知り、指導法を身に付け、目の前の児童に英語で接していくとなると、慣れない皆さんにとっては、結構ハードルが高く感じられるのではないでしょうか。
しかし英語の指導は、ポイントさえつかめば、そんなに難しいものではありません。「これだけ押さえておけば…」という、教員に求められる3つの力を中心に、ご紹介していきます。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

1 外国語が教科になった!

小学校の外国語教育は2020年度からの指導要領に盛り込まれ、小学校5年から外国語教育を必修科目とすることになりました。併せて3年生、4年生は外国語活動として教育課程に取り入れられることになりました。
これが成立するまでには、賛成派、反対派…いや、厳密に言うと、推進派、慎重派が議論を戦わせてきたそうです。
各派の主張は次のようなものでした。

推進派
グローバル化の時代で、英語力は必要不可欠である
ほかの先進国のように、早いうちから外国語に触れることで将来の就職などに有利になる
国際交流につながり、国際理解や多文化理解を深める教育につながる
小学校からの導入で中高とうまく接続できるようになる
同僚が外国人という職場環境も増加しているので、早くから英会話に慣れておく必要がある

慎重派
他の大切な教科の時数が減ってしまう 
むしろ国語を充実させ、日本語で論理的に考える訓練を重視すべきである
外国語は難しく、苦手意識をもちやすい。早くから学習意欲を失いかねない
家庭環境によって外国語の取組に不平等さが生まれかねない
教員不足の昨今、教員に英語力まで求めるのは難しい


そして、慎重派の論点は、いまだ解決できていない大きな課題になっていると言えます。わが国の初等外国語教育の発展上、重大なポイントです。こうした議論があったことも踏まえつつ、日々の指導をしていきたいですね。

2 英語の環境整備、そして授業実践上の課題

わたしは現在、初任者教員たちの指導をしていることから、若手のせんせいたちとお話しする機会も多いのですが、なんと驚くことに英語の授業をするのは初めて、という方も多くいらっしゃいます。

そこで、初めて英語の授業をする方々に伺いました。何が不安なのか、何が課題なのか…。

課題1)どんな授業の進め方をしたらよいのか、分からない
課題2)どんな英語を使えばよいのか、分からない
課題3)ALTとどうコミュニケーションをとればよいのか、分からない

まとめてみると、大きくこの3つの課題が存在しているようです。
課題1については、指導書や参考書を手にして授業に挑戦して場をこなし、改善をしていけばだいじょうぶでしょう。
問題は、なかなか指導書、参考書に出てこない課題2や課題3です。
これらは、以下のような「3つの力」で解決に導いていけると思います。

3 求められる3つの力

わたしは定年退職した直後、再任用で高学年の英語専科教員を拝命しました。
とは言っても、わたしが英語専科に適していたからではなく、前任者の英語の得意な方が転勤してしまい、その穴埋めだったわけです。
苦労しましたが、新しもの好きのわたしとしては、試行錯誤を繰り返しながら、おもしろく進めることができました。
2年目は中学年の英語担当でした。こうして経験を深めていく中で、小学校英語の授業者には3つの力が必要だなと感じました。
それは…。

●アジリティ力(Agility)
いわゆる瞬発力、機敏さ、即応性です。英語を使ったコミュニケーションの方法を学ぶわけで、文学作品をじっくり考えて味わうことを目的としてはいません。素早いレスポンスができることを、授業者として自ら鍛えなければならないです。児童の実態を見て、瞬時にどう対応するか、という力です。
国語ほど深くなく、算数より単純な問いかけですし、会話にはテンポが大切です。ゆえに他教科よりも、スピードが求められます。

●リレーションシップ力(Relationship)
児童とのつながりが重要です。高学年では、慣れない言語での発言に積極的になれない児童や、苦手意識をもっている児童もいるでしょう。ほめ言葉、励まし、認め合いなどを使ってつながりを強化し、居心地のよい空間をつくっていきます。日本語で普段言っているようなことでも、英語では表現がまるで異なることもあります。一定の決まり文句は、ぜひとも身に付けておきましょう。

●エンターテインメント力(Entertainment)
児童を楽しませて、英語好きにすることです。日頃使わない言語を使うのですから、工夫が必要です。歌、ゲーム、クイズ、身体表現などなどです。CDやネットで音源を活用するのもよいですが、生きた言葉のライブ感を出すには、ギターやキーボードなどの楽器を使い、その場で歌ってみましょう。わたしは、ギターを使いました。

この3つの力を常に意識して授業をつくっていくと、うまくいくようです。

次回からは、これら3つの力について、1つずつ、もう少し詳しくご紹介していきます。少しでもお役に立つことができればうれしいです。

イラスト/したらみ


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山田隆弘先生

山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。

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