小2特別活動「身の回りの整理整頓」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)

安部恭子
小2特別活動「身の回りの整理整頓」指導アイデア バナー

文部科学省視学官監修による、小2特別活動の指導アイデアです。5月は、学級活動(2)ア「身の回りの整理整頓」を紹介します。

新しいクラスになって1か月。ゴールデンウィークを過ぎるころには、子供たちもクラスに慣れ、年度初めの緊張もなくなってくる頃でしょう。1学期に運動会を実施する学校は、だんだんと学校全体が慌ただしくなってくる頃です。子供たちの素の姿が現れるようになるのもこの頃です。

教室を見渡すと、ゴミが落ちていたり、落とし物が散乱していたりすることはありませんか。毎回、注意ばかりしていると子供も嫌になってくるし、クラスの雰囲気も悪くなっていきます。そんなときこそ、各校の年間指導計画で位置付けられている学級活動(2)を通して、整理整頓のよさに気付き、自ら進んで整理整頓に取り組むことができるような活動に取り組んでみましょう。

執筆/埼玉県公立特別支援学校教頭・山形 悟
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
 埼玉県公立小学校校長・野村佐智夫

年間執筆計画

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04月 学級活動(1) どうぞよろしくの会をしよう
05月 学級活動(2)ア 身の回りの整理整頓
06月 学級活動(1) クラスの歌をつくろう
07月 学級活動(1) 1学期がんばったね会をしよう
09月 学級活動(1) 係を決めよう
10月 学級活動(3)ウ 楽しい読書
11月 学級活動(1) クラスの記録大会をしよう
12月 学級活動(2)ウ 病気の予防
01月 学級活動(1) クラスのカルタを作ろう
02月 学級活動(3)ア もうすぐ3年生
03月 学級活動(1) 思い出集会をしよう

本実践までの本学級の状況

4月に「どうぞよろしくの会」をして、新しいクラスをスタートさせた2年1組。子供たち同士も新しい関係ができ、緊張している様子だったのが、徐々にほぐれてきたようです。しかし、その反面、机の中の整理整頓がおろそかになったり、教室の床に物が落ちていたり、本棚などの共用スペースの利用も乱雑になったりするなど雑然とした状態に。

事前の指導

①整理整頓に関する意識調査を行う

質問項目例
1:あなたのつくえの中やつくえのまわりをきれいにしていますか。
できている・まあまあできている・あまりできていない・できていない

2:みんなでつかうばしょ(ロッカーや本だな、にもつをかけるフック)をきれいにつかっていますか。
できている・まあまあできている・あまりできていない・できていない

3:みんなでつかっているばしょのつかいかたがわるくてこまったことはありますか。(                                )

②教室内の整理整頓の状況を一週間程度観察し、写真に記録しておく

フックに掛けるべきバッグがちゃんと掛けられていない
机の横に掛けるきんちゃく袋が床に転がっている。

「自分はできている」と思っている子供がけっこういるものです。気になった場面を写真に撮っておくと、思い込みと現実のギャップに気付きやすくなります。

本時のねらい

教室環境を整えることのよさに気付き、話合いを通して、自分が取り組む方法を決めることができる。

本時の指導

学級活動(2)議題「身の回りの整理整頓」

◆板書例

板書例

【学級活動(2)(3) ここがポイント!その1】
ー集団の話合いを生かした意思決定のための4つのプロセスー

みんなで話し合い、みんなで取り組むことを決める「学級会」と異なり、学級活動(2)(3)では、自己の生活上の課題解決に向けてみんなで話し合い、一人一人が自分の目標を意思決定する活動です。強い意思決定を行うためには以下の4つのプロセスを踏まえて本時の指導をしていくことが効果的です。 

1「つかむ」:課題を把握し、子供たちが改善の必要感をもつ。 
2「さぐる」:原因を追求し、問題の背景を考える。
3「見つける」:解決方法を話し合い、多様な考えを出し合う。
4「決める」:出された解決方法を参考に、個人の目標を決める。

①学級の整理整頓にかかる問題点に気付く[つかむ]

事前にとったアンケート結果や写真を提示しながら、学級全体の問題意識を高めていくようにします。

前にみなさんにお願いした教室ぴかぴかアンケートを覚えていますか? 
自分の身の回りとみんなで使う場所がきれいになっているかどうか聞きましたね。これがその結果です。これを見てどう思いますか。

ほとんどの人ができているって答えているね。

できていない人も少しはいるけど…わたしはできているわ。

なるほど。それではこの写真も見てみましょう。これは先生が休み時間や放課後に撮った教室の様子です。どうですか。

机の周りに物が落ちていたり、本棚の本が横になって入れられていたり、荷物をかけるフックの周りにもたくさんの物が落ちているね。

うーん。これを見るとわたしも自信がなくなってきたわ。

それにみんなが使う場所の使い方がよくなくて困ったことのある人もいるみたいだよ。例えば…(アンケートの自由記述欄の内容をいくつか紹介する)。
教室はみんなで過ごす場所だから、みんなにとって居心地がよい場所にしたいですよね。それでは、今日はみなさんで身の回りや教室をきれいに使うためにはどうしたらよいか考えていきましょう。

②整理整頓ができない原因や、整理整頓をするよさについて考える[さぐる]

具体的な場面を想起させるため、写真の場面ごとの原因について考えるようにします。また、整理整頓は自分のためだけではなく、みんなの居場所を心地よくすることにもつながることに気付くことができるようにします。

(学級の本棚の写真を見せながら)先ほども見せた学級の本棚の写真です。本が横に入れられていたり、本棚に収まっていない本もあったりしますね。どうしてこのようになってしまうのでしょうか。

休み時間が終わるギリギリまで本を読んでいて、チャイムが鳴って慌てて本を本棚に戻そうとしたからかな。

次に読みたい本があったから、読み終わった本をいいかげんに本棚に戻してしまったのかも。

元通りに片付けることは、自分だけでなく、周りの人のことも考えるということですね。一人一人が気を付ければ、みんなが気持ちよくこの教室で過ごすことができそうですね。

整理整頓が苦手な子供など、個人の問題に注目させるのではなく、教室のみんなが使うスペースの使い方にも目を向けることで、どの子にとっても解決すべき問題として必要感をもつことができるようにすることが本授業の肝です。

机の中の写真を提示する場合は、教師の持ち物を道具箱に入れて予め撮った写真を使うなど、個人が特定されないような配慮が必要です。

③話合いで出された意見をもとに、整理整頓の具体的な解決方法を考える[見つける]

具体的な場所ごとに解決方法を考えるために、班ごとに場所を割り振るのもよいでしょう。まず取り組めそうな解決方法を個人で考え、ワークシートに記入します。次に、班になって意見を出し合い、最後は班ごとに発表します。

4人グループで整理整頓について意見をまとめている。教科書やノートを使ったら、引き出しの一番に入れるようにすれば、次に使う物が一番上にくるからすぐ準備できるよ、などの意見が出る。

グループで話し合う際は、話合いのルールを決めておくとスムーズです。例えば、①自分の意見を伝える、②相手の意見を聞く、③よりよい考えになるようにみんなで考える、といった話合いのパターンを決めておくと他教科でも応用できます。

グループごとの発表では、こちらが意図した視点や押さえておきたい内容が出てこない場合も想定されます。その場合は、子供の発表後、教師が指導事項を補足することも必要です。

④個人目標を意思決定する[決める]

ワークシートに自分の目標を記入します。

各グループから解決方法を発表してもらいました。発表を聞いて、自分ががんばればできそうな目標を1つ決めて、ワークシートに書きましょう。

ぼくは、荷物フックに荷物をしっかりかけるようにします。もしも、物が落ちていたら、自分の物だけじゃなく、友達の物も掛け直すようにします。

わたしは、休み時間は時計を見て、チャイムに間に合うように本をしまうようにするわ。

目標は、高すぎても低すぎてもうまくいきません。自分が少しがんばれば達成できる目標がよい目標です。これから1週間、一人一人が意識して、みんなで居心地のよい教室になるよう取り組んでいきましょう。

目標設定は、「〇〇のとき、〇〇する」のように具体的な行動目標になるようにします。少しがんばればできるような目標を設定することで、努力することの大切さ、やればできるという達成感を味わうことができるよう、助言します。

数値を入れて目標を設定する方法もありますが、発達の段階や経験を踏まえ、今回は場面と行動を記すようにしました。

事後の指導

1週間程度取り組み、振り返りをする

隣の子供同士で身の回りの整頓について振り返りをするイラスト

目標を決めて取り組んでいる期間は、教師の価値付けや児童同士の相互評価も併せて行うことで、達成意欲を持続させ、日常生活における定着を促します。

ワークシート「みのまわりのせいりせいとん」一週間チャレンジ

【資料1】ワークシート「みのまわりのせいりせいとん」一週間チャレンジ
※下記、ボタンからダウンロードできます。

【学級活動(2)(3) ここがポイント!その2】
ー実践し、振り返りを行うまでが学習ー
「三日坊主」という言葉もある通り、目標を決めることはできても、それを意識し続けて取り組むことはたやすいことではありません。大人でも難しいのだから、子供ならなおさらですよね。だからこそ、教師が意識的に子供の取組を見取り、励まし、価値付けていくことが大切です。

今回の実践では、教師がほめたり、子供同士の相互評価を行ったりしていますが、他にも題材によっては、学級通信などで家庭にも協力を依頼する方法もあります。実践を通して少しでも「よりよくなった」「できた」という自己効力感を子供が感じることが、次の実践への意欲につながっていきます。

イラスト/高橋正輝、イラストAC

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