子どもからの提出物チェック&コメント術(連絡帳/宿題/自学ノート)
学習ノート、日記、ワークシート、連絡帳等々・・・。毎日の提出物を迅速かつ的確にチェック、コメントすることは、子どもたちを伸ばす上で大切な仕事です。とは言え、大きな負担であることも事実。スピードと丁寧さを両立させつつ、できるだけ負担を軽減する工夫や、子どもたち自身にチェックを委ねるシステムづくりについてご紹介します。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
instagramでは@ayaka_t_として「#折り紙で学級づくり」「#構造的板書」「#国語で学級経営」などを発信。『3年目教師 勝負の授業づくり』(明治図書)ほか、編著・共著多数。
目次
負担を軽減しつつ子どもを伸ばすチェック&コメント合理化の工夫
チェック&コメントの効果
子どもからの提出物がない日はありません。連絡帳、宿題、自学ノート、日記、作文、テスト・・・毎日多くのものが提出されます。これらをすばやくチェックし、返却することは、子どもの学習意欲の向上や身に付けた力の定着に繫がります。
できるだけ早く子どもたちの手元に返し、かつ、意欲を向上させるためにはどのようにチェックし、コメントすればよいのでしょうか。教師の負担をできるだけ軽くしながら効果を上げるチェック&コメント術を紹介します。
連絡帳のチェックを確実にする技
保護者から、「子どもが連絡帳を書いてきません。声かけをしてもらえないでしょうか」と言われたことはありませんか。連絡帳は教師・子ども・保護者をつなぐ大事なツールです。子どもが連絡帳を書いて帰らない要因から具体的なチェック術を考えます。
① 覚えられるという自信が要因の場合
持ち物、宿題など連絡帳の内容をすっかり覚えているかどうか、口頭でチェックします。一つでも抜けていれば、これからは必ず書くことを約束します。
② 連絡帳を書く時に別のことをしている場合
グループの形で、連絡帳を一斉に書きます。書けているかどうかをまずグループでチェックし合い、それから班でまとめて提出します。一人ずつ名簿で提出をチェックする手間が省け、子ども同士の関わりの中で連絡帳をきちんと書こうとする態度が育ちます。
③ 連絡帳を忘れる
おうちの方にチェックをお願いします。
④ 書きたくない
「ハッピースタンプ&シール」を用意します。
ハッピースタンプ&シールとは、その子が喜ぶスタンプのことです。好きなキャラクターや先生の手づくりハンコなどを用意して、提出することのメリットを分かりやすく示します。クラスみんなが提出したくなるように、日替わりスタンプにすることをお勧めします。
宿題のチェック術
漢字学習ノートのチェックは、花丸段階表→表彰状プレゼントで
漢字学習ノートは、できるだけ早く丸付けをするために、次のことを子どもたちに話しています。
①「文は人なり」→「文字は人なり」
文章は書いた人の性格や考え方を表すという意味のことわざです。これを低学年に話す時、「文章だけでなく、文字も人を表します。文字を丁寧に書く人からは、一生懸命学習しようという気持ちが伝わってきますよ」と話します。すると、文字を丁寧に書く子どもたちが増えます。文字を丁寧に書くと、集中力が身に付くだけでなく、字形を意識できる力や平仮名や漢字を間違わずに書く力を育てます。
②「一つでも間違いがあると花丸はもらえません」
より注意深く文字を書く子どもが増えます。花丸にも段階をつけます。私が実践しているのは、7段階です。
③「花丸を集めて○個に達成すれば表彰状がもらえます」
一生懸命に学習することが当たり前、というのは教師の一方的な願いであり思い込みです。一生懸命学習することは特別なことであり、頑張ったことを認める機会をつくります。「花丸10個でレベル1、花丸20個でレベル2」など、段階をつけ、名前を掲示板に貼って頑張りを可視化すると、やる気アップに繫がります。
自学ノートのチェック&コメント術
自学とは、自分で興味のある分野を進んで学習することです。だからといって、子どもに任せきり、というわけではありません。子どもたちがより多様な分野に興味を持てるような工夫を講じていく必要があります。
① 自学テーマの共有
自学をしてきたら、テーマをチェックします。今までにないテーマにはノートに付箋を貼って返します。付箋が貼られて返ってきた子は大喜び! なぜかと言うと、付箋は「今までに誰もしてきていないテーマ」に挑んだ証であり、みんなのお手本となる特別なものだからです。付箋にタイトルを書いてもらい、画用紙に掲示して、みんなが参考にできるようにします。
② 先生の驚きをコメントに
自分で進んで学習する態度を促すためには、先生のコメント(評価)は欠かせません。私は、「こんなテーマで自学をしてきたのか!」というテーマへの驚き、「先生も知らなかった!」という内容への驚きをコメントしています。先生が知らないことを知った自分を誇りに思ってほしい、学ぶことを楽しんでほしいというメッセージを込めて驚きをコメントしています。
③ 自学ノート見合いっこ
先生からのコメントはできればたくさん書いてあげたいと思いますが、チェックすべきノートやプリントは他にもあります。十分に時間が取れない時には、「自学ノート見合いっこ」をします。活動の流れは次の通りです。
・グループの形にする。
↓
・自学ノートを開いて机の上に置く。
↓
・グループで読み合う。
読む時のポイント
・内容が面白い人を見つける。
・自学の手順や書き方の工夫を見つける。
↓
・ノートを置いたまま、次のグループの席へ移動し、読み合う。
↓(繰り返し)
・「この自学がすごい!」と思ったノートに付箋を貼りに行く。
付箋は5㎝四方のものを一人1枚ずつ渡し、自分の貼りたい枚数分にハサミで切るように指示する。最大3枚程度にする。
このような流れで「自学ノート見合いっこ」をすると、友達の自学の内容をじっくり読み、内容の面白さや書き方の工夫など、多くのことを自然と学ぶことができます。また、友達の得意な分野、好きな分野も知ることができ、新たな会話や交流が生まれるなど、学級づくりにも役立ちます。
低学年の子どもにとって、先生からのほめ言葉や評価はたいへん嬉しいものですが、それと同じくらい友達から認められることは嬉しく、また一人一人の自信にも繫がります。
満面の笑みで、付箋がたくさん貼られたノートを抱きしめている子どもたちの姿に出会います。付箋をもらえなかった子どもはきっと悔しい思いをしているでしょう。「その思いを次の自学に生かすことが大切で、友達の自学の素晴らしさに気付ける力は、自分の学習の力を高めています」と伝え、意欲付けを行いましょう。
『教育技術 小一小二』2019年10月号より