ハードル走で最後までスピードを維持するにはどうしたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #21】
ハードル走は、様々な技術ポイントがあり、指導が難しいなと感じている先生はいませんか? 特に、ハードルを2台、3台……と走り越えていく中でスピードが落ちてしまい、最後まで走り切ることができない!という子どももいます。そこで今回は、ハードル走の導入(20分×2~3回)でぜひ取り入れてもらいたい「第1ハードル入れ替え戦」を紹介します。これは、前回の「かけっこ入れ替え戦」をアレンジした教材です。
執筆/千葉県公立小学校教諭・渡邊知子
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川 譲
目次
1 ハードル走で大切にしたいこと
ハードル走で一番大切にしたいことは、「ゴールまで全力で走り切ること」です。そのためには、ふり上げ足や抜き足の難しい動きや第1ハードルまでの歩数等を指導するより、まずは、第1ハードルをスピードにのって走り越えることが大切です。
怖がらずに全員が第1ハードルを走り越えるために、高さは一番低くしておくとよいでしょう。
2 場の設定
スタートラインから12mのところに1台だけハードルを置き、18mのところにゴールラインを引きます(ラインの引き方については「ブラッシュアップ体育授業」#5を参照)。クラスの人数や設置できるコースの数にもよりますが、安全確保のために、図のようにハードルを置かないコースを間に入れるとよいでしょう。
3 第1ハードル入れ替え戦のメリット
子どもたちが低学年でかけっこ入れ替え戦(詳しくは「ブラッシュアップ体育授業」#20を参照)を経験していると、短い説明でゴール後の動きを理解することができます。安全のため、自分が走り終わっても、一緒に走っている仲間全員がゴールしたことを確認してから、応援席に並ぶように指導しておきましょう。
この第1ハードル入れ替え戦のよいところは、以下3点です。
⑴ 全力でハードルを走り越える経験値を高めることができる。
⑵ ハードルを走り越えてからも全力で走る感覚を身に付けることができる。
⑶ ハードルを素早く走り越える技術ポイントに焦点を絞った思考場面を設けることができる。
⑴ 競走を楽しみながら、全力でハードルを走り越える経験値を高めることができる。
かけっこ入れ替え戦は、ほぼ同じ走力の仲間と競走する楽しさを味わうことができます。そこに、ハードルが1台あると、短距離走での順位が変わる可能性もあります。また、18mのかけっこなので、短時間に何度も行うことができ、知らず知らずのうちに、全力でハードルを走り越える経験値を高めることができます。繰り返し行う中で、子どもたちは、自ずと踏み切りやすい足で踏み切ることができるように歩数や歩幅の調整をするところも、この教材の長所です。
⑵ ハードルを走り越えてからも全力で走る感覚を身に付けることができる。
第1ハードルを越えるまでをゴールとして練習をすると、第1ハードルまでの歩数等に意識を向けて走ることが多くなります。この場合、スムーズに走り越えることがめあてになるため、走り越えた後に全力で走ることを意識する子は少なくなります。
しかし、入れ替え戦はゴールまでが真剣勝負。ハードルを走り越えても全力で走ります。「走り越えてからスピードが落ちないように」と声をかけなくても、子どもたちは体のバランスをとりながら着地をしたり、その後の1歩を速くしようと走ったりする経験を積み重ねることができるのです。
⑶ 焦点を絞った思考場面を設けることができる。
全員がスムーズに第1ハードルを走り越えることができるようになったら、踏み切り位置を運動観察の視点として、できるだけ速く走り越えるポイントを見付ける思考場面を設けます。
どこで踏み切っているか、よく見ていてね。
*お手本の子どもに走ってもらう。
(だいたいハードルの80㎝~100㎝手前で踏み切っている子どもをお手本にします)
どこから踏み切っていた?
ここから踏み切っていた。
自分が踏み切っている場所と比べてどう?
〇〇さんの方が少し遠い。
今より少し遠くで踏み切ると、何が変わる?
ぴょーーんってジャンプしないで越えられるかも。
ぴょーーんってジャンプしないと、どうしていいの?
そのほうが速く走れる。
というように、少し遠くから踏み切ると低く走り越えられることに気付かせ、お互いの踏み切り位置を見合う学習に進むことができます(見合う学習をするときには、ハードルの手前80㎝から100㎝のあたりに目安のラインを引いておくとよいでしょう)。
技術ポイントが多いハードル走も単元導入で「第1ハードル入れ替え戦」を行うことで、スムーズに進められます。何より、子どもが夢中になって競走しているうちに、スピードにのってハードルを走り越える感覚が身に付くところが、本教材の最大の魅力です。
一度経験しているかけっこ入れ替え戦をアレンジして、ぜひ実践してみてください。
【参考文献】
平川譲(2012)『体育授業が得意になる9つの方法』東洋館出版社
※連載「ブラッシュアップ体育授業」について、メッセージを募集しております。記事に関するご感想やご質問、テーマとして取り上げてほしいことなどがありましたら、下の赤いボタンよりお寄せください(アンケートフォームに移ります)。
執筆
渡邊 知子
千葉県公立小学校 教諭
兵庫県神戸市生まれ。校内で使える6か年体育科プランを作成し、だれでも簡単・手軽で「動ける体つくり」ができる授業づくりに取り組んでいます。体育を専門としない先生方も対象とした自主研修を地域や校内で実践中。「『資質・能力』を育成する体育科授業モデル」(共著)(学事出版)
監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。
イラスト/佐藤道子