小1 国語科「いいこといっぱい、一年生」板書例&全時間の指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「いいこといっぱい、一年生」(光村図書)の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:いいこといっぱい、一年生(光村図書・こくご 一下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校・橋浦龍彦

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、自ら思いをもって報告できる題材を選び、構成を整えて書くことを目指しています。
1年生も終わろうとする時期、生活科の学習で一年間を振り返ったり、教室にこれまでの写真等を掲示していたりすることが多いでしょう。

初めて小学校で過ごした一年間の出来事の中から、児童自ら題材を選び、報告文の構成を整えて書くことで、一年間の学習や生活に充実感をもったり、「こんなに書けるようになったんだ。」と自覚したりすることができるでしょう。
教師は、児童それぞれがどの題材に特に思いをもっているのかを把握し、満足感をもって書けるよう、単元をデザインしていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元の前に、生活科で一年間の出来事を振り返っておくとよいでしょう。
「できるようになったこと」「がんばったこと」「つづけていること」などを付箋に書き出し、学習、生活の仕方、友達との関わり、生き物や自然との関わりというように、Xチャート等を活用して、分類・整理しておきます。
生活科のファイル等に綴じておけば、題材を設定する際の一助となるでしょう。

本教材では、出来事を思い出す六つの観点が示されています。嬉しかったこと、楽しかったこと、驚いたこと、頑張ったこと、できるようになったこと、新しく知ったことの六つです。

教科書は、玉入れで頑張ったことについて扱っています。
題名は、「玉入れ」ではなく「がんばった玉入れ」と、書き手の思いが出るような一工夫がされています。始めに「どんないいことがあったか」、中に「くわしくおもい出したこと」として、「したこと」「いったこと」「いわれたこと」、終わりに「おもったこと」が書かれています。

教師が文例からメモを起こし、児童に示します。
私の学校の運動会では、玉入れがなかったので教科書の文例を使用しましたが、児童が文例に引きずられないよう、そのまま使うことのできないものや、児童が候補に挙げなかった題材について書いたものを文例として使用するのがよいでしょう。

書くことの実態としては、「はじめ、中、終わり」のまとまりに分けて書くことや、「は」「を」「へ」等の助詞の使い方などの定着に、まだまだ時間を要する児童もいることでしょう。

表記の仕方については、メモの段階から教師が朱を入れておくとよいでしょう。
児童がメモを詳しくしていく際や友達と話し合って思い起こす際、文字の間違いに捉われず、思い起こしたり詳しく書いたりすることに集中しやすくなるからです。

あとは、推敲の時間に、チェックシート等を活用して、一年生なりに自分や友達との学びの中で気付けるようにしていきましょう。

本単元では構成の検討に重点を置いていますが、構成や表記については、低学年の二年間をかけてじっくり身に付けていくことが大切です。一年間の書くことの学習の締めくくりとして、国語の学習や一年間の生活に充実感をもてることを第一に考えることが大切です。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 特に思いをもてる題材の設定

まずは、一年間の思い出について書きたいという思いを高めることが大切です。

例えば、私の学級では、係活動で学級の写真を切り貼りしてアルバムを作っている児童から、「ページが少ない。もっと増やしたい。」と相談を受けました。
そこで、「みんなに一年間の思い出を書いてもらったり、その絵を入れたりしたら、ページが増え、みんなの思い出が入ったアルバムになるのではないかな。」と話しました。
これを受け、アルバム係の児童2名が学級全体に提案する形で、学習が始まりました。

このように、児童から児童への呼びかけをきっかけに単元が始まっていくようにすると、主体的な学びになっていくでしょう。

単元前半で、読んだときにどのような気持ちになるアルバムにしたいか、何を題材について書きたいかを、それぞれで考えたり話し合ったりします。
すぐに題材を一つに絞るのではなく、三つ程度選び、それぞれについて簡単にメモをします。
書き出してみると、それぞれの題材について、どれくらい具体的に思い出せるかが分かってくるでしょう。1年生でも、メモに書き出せた量を見ると、自分が特にどの題材に思いを持っているか捉えやすくなります。メモに書いた題材の中から、特に書きたいことを選び、アルバムに載せる文章の題材を決定します。

〈対話的な学び〉 共通の体験をした友達との話合い

題材について詳しく思い起こせるよう、共通の体験をした児童同士で話し合う時間を設定できるとよいです。

それぞれの児童がメモに書いた候補の題材や最終的に選んだ題材を、座席表に一覧にし、教室に掲示しておくことで、児童が必要に応じて座席表を見て、共通の体験をした児童と話し合えるようにします。

例えば、「たぬきの糸車」の音読劇をしたことを選んだ児童には、同じグループで読んだ児童、生活科で秋のお店を開いたことを選んだ児童には、同じお店を開いた児童というように、その子の頑張りを知る友達と話し合うことで、したことや言ったこと、言われたことを思い起こしやすくなるでしょう。

教師が、音読劇を撮影した動画を示したり、秋のお店を開いた時の振り返りカードなど、関連資料を活用するよう促したりすることも、体験を思い起こす助けとなるでしょう。

また、題材を集める段階で、書いた文章が「一年○組の」アルバムになることを押さえておきます。
そうすることで、単元のめあてを捉えられずに、題材に幼稚園や保育園のこと、習い事のこと等を選ぼうとする児童が、学校での思い出を選び、共通の体験をもつ児童と話し合いやすくなるからです。

〈深い学び〉 色別の付箋の活用

第3時は黄、第4時は青、第5時は桃、第6時は緑など、毎時、使用する付箋の色を変えていきます。したことや言ったこと、言われたことが少しずつ詳しくなってきたことが可視化されることで児童がそれを自覚しやすくなり、また、教師も学習の状況や過程を把握しやすくなります。

児童があまり新たな色の付箋を増やさなくなっていれば、十分に詳しく書けたと考えているか、取材から構成の検討へと意識が向いているかでしょう。

したこと、言ったこと、言われたことなどのメモが十分ではない場合は、〈対話的な学び〉で述べたように、同じ題材で詳しくメモをしている児童と話し合うよう促したり、教師が個別に指導したり、資料を提示したりします。

構成の検討に意識が向いている場合は、児童が自分のメモと文例のメモを比較しながら構成を整えていけるようにします。

学習過程を柔軟にしつつ、その時間ではしたことを書くのか、言ったことや言われたことを詳しくするのか、構成を検討するのかなど、めあてに立ち返るようにします。

構成の検討の段階では、付箋の順序を入れ替えた場合、その前後の違いを、付箋の色の配置で自覚しやすくなります。「この黄色はもっと後に貼った方がいいと思うよ。」など、話合いをスムーズに進めることにも役立ちます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

年間を通して端末を活用していれば、1年生であっても、本単元の学習をする頃には、簡単な操作には慣れていることでしょう。オンラインストレージ(Googleドライブなど)を活用し、自分たちが書いた文章をカメラ機能で撮影して保存したり、保存した互いの文章を読み合ったりしておくとよいでしょう。

本単元では「アルバム」を作ることにしたため、最終的には紙で綴じたものを児童に配布します。
しかし、オンラインストレージに文章の画像を保存しておけば、どこからでもアクセスできます。紙のアルバムで読んだり、1人1台端末を使って読んだり、それぞれが自分の好みに応じて楽しむことができます。

また、本単元では、取材の段階から児童のメモを画像で記録しておきます。
付箋の色でメモが増えたこと、詳しくなっていったことを自覚できますが、単元末に学習を振り返る際、自分のメモを取材の初めの段階から順に見ていくことで、より詳しく書くことができるようになった実感をもつことができるでしょう。

構成の検討の際は、入れ替える前後のメモをそれぞれ写真に撮っておくと、画面をスライドするだけで簡単に構成を比較できます。また、教師は児童がどのように構成を検討したのか、最終的なもの以外も見取ることができ、評価に役立ちます。

6. 単元の展開(10時間扱い)

 単元名:一年一くみのおもい出のアルバムをつくろう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 児童からの提案で、学級のアルバムを作るめあてをもち、どのようなアルバムにしたいかを話し合う。

・第二次(2時3時4時5時6時7時8時9時
② 1年間の出来事を振り返り、試しにメモをする出来事を三つ程度選ぶ。
③ 前時に選んだ出来事について、したことや思ったこと等を書き出し、アルバムの文章にする題材を一つ選ぶ。
④ 選んだ題材について、したことや言ったこと、言われたことを書き出す。
⑤ 教科書p122の文例を読み、対応するようにメモの順序を入れ替える。
⑥ 文例版のメモと自分のメモを読み比べ、したことや言ったこと、言われたこと、思ったことなどについてメモを書き足したり、絞ったり、並び替えたりする。
⑦⑧ メモをもとにアルバムに載せる文章を書き、絵や写真を入れる。できた児童から推敲する。
⑨ 文章を推敲する。

・第三次(10時
⑩ アルバムを読み合い、内容や書き方のよいところを伝え合う。

板書例と全時間の指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「対話的な学び」のために

生活科の学習で書いた観察カードなどは、観点の宝庫です。児童が無意識的に使っている観点でも、そこに学級の学びを広げる可能性が秘められています。

「主体的な学び」のために

1年間の締めくくりとして、教師から「みんなで思い出を文章と絵にして、アルバムを作るよ。」と知らせても、児童は「どんなアルバムになるのかな。面白そう。」「作ってみたいな。」というように、ある程度学習に前向きにはなるでしょう。
しかし、「主体的な学び」を目指すのであれば、その布石を打っておくことが肝要です。

本学級には、係活動としてアルバム作りに取り組む児童が2名いました。
一人一台端末を活用し、懸命に日常の写真を撮りため、印刷し、切り貼りしていました。
ただ、6年生が卒業アルバムの学級のページを作る際に行うようなこの活動を、1年生が行うのは大変難しいことです。
そんなとき、アルバム係の児童から「作るのが大変だけれど、アルバムのページをもっと増やしたいです。」と相談を受けました。そこで、「みんなにも思い出を書いてもらって、絵や写真をセットにして全員分入れたらどうかな。」と話しました。アルバム係の児童2名と打ち合わせをし、翌週の国語の時間の導入で、アルバム作りを呼びかけてもらいます。

また、一人一台端末に、思い出の画像データを入れてみてはどうでしょうか。
端末でも、児童は読むことができるでしょう。しかし、「アルバム」ということで、児童は「紙で一枚一枚めくりたい」と思うかもしれません。

学級にアルバム係のような係がない場合もあるでしょう。
その場合は、行事などの節目ごとに撮った集合写真を教室に並べて掲示したり、教師が撮りためた写真を、生活科で1年間の成長を振り返る際に見せたりしてもよいでしょう。
学校にある過去の卒業アルバムを手にとることができるようにすることも考えられます。
また、「じどう車くらべ」や「どうぶつの赤ちゃん」などの学習で書いたものを、一冊にまとめて製本するなどしておくと、児童が「みんなで一冊にまとめたい」という意識をもちやすくなるでしょう。「私たちも、アルバムを作りたい」と、児童から声が挙がる教室環境をつくることが大切です。

(アルバム係1):係で作っているアルバムのページをもっと増やしたいです。みなさん協力してくれませんか。

(アルバム係2):みんなの思い出を書いたり、絵や写真を入れたりしてほしいです。

いいね。作ろう!

ぼくもアルバムがほしい。

では、完成したらみんなの分をまとめて、一人一冊印刷しますよ。

やった!

 (中略)

みんなの1年生最後の国語の学習です。どのようなアルバムにしたいですか。

大人になっても心に残るアルバムにしたいな。みんなのことを思い出せるように。

1年間で成長したことを書きたいです。


【2時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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