「夏休み明けにリスタート」保護者を味方にする学級経営術 #6
学級担任なら、一度は保護者対応に悩んだ経験があるのではないでしょうか。しかし、保護者が味方になってくれたら、こんなに心強いことはありません。この連載では、保護者が担任と学級を応援したくなるような学級経営について、その月の学校状況に合わせたアイデアを紹介します。第6回は、夏休み明けのリスタートについて取り上げます。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
夏休み明け「リスタート」3つの視点
みなさん、夏休みをどのように過ごしていますか? 夏休みは子供だけでなく、教師にとっても嬉しいもの。大いにリフレッシュし、次へのエネルギーをためましょう。
でも、せっかく子供たちに身に付いたことが、長い休みで元に戻ってしまうこともありますね。時には、「こんなことになるなら、夏休みなんかなければいい」と考えてしまうかもしれません。夏休み明けは、教師にそんなことを思わせるほど、心身ともにだらけてしまう子がいるものです。
そこで、夏休み明けによく言われるのが、「リスタート」です。再出発をしっかりと行うと、その後の学級経営が安定するからです。
この「リスタート」、次の3つの視点で行うとよいでしょう。
①だらけてしまった子供のリスタート
②一度は身に付いたけれど、忘れてしまったことのリスタート
③1学期に不十分だった部分のリスタート
では、それぞれについて考えていきましょう。
①だらけてしまった子供のリスタート
生活のリズムを取り戻す
子供たちの中には、すっかり生活のリズムが崩れてしまって いる子がいるのではないでしょうか。そこで、初日に次のような取り組みをします。
・何時に寝て何時に起きるのかを自分で決める。
・実際の就寝時刻と起床時刻、朝ごはんを食べたかを1週間記録する。
これを宿題の1つとして出し、家庭にも協力を依頼しましょう。記録表を毎日提出させ、できていない子にはひと声かけましょう。
こうした取り組みをすることで、家庭と協力しながら子供たちの生活リズムを元に戻すことができます。それに加えて、あなたが子供の生活リズムを戻すことにも熱心なのだと家庭に伝わり、信頼を得ることができるでしょう。
実は各家庭だって、子供の生活リズムを戻すことが大切だとは分かっているのです。ですから、「早く寝なさい」くらいは言っているかもしれません。それでも、ぐたぐたといつまでも起きている子がいるのです(かつての我が家です)。ですが、先生の言ったことだと聞いてくれる子もいます。保護者も「先生も言ってるよ」と子供に伝えるほうが効果的だと分かっています。ですから、こういう取り組みはありがたいと思ってもらえるのです。
そんなことは家庭のことで、学校で管理すべきことではないと思うかもしれませんが、こうやって生活リズムを早めに戻したほうが、結局はその後の学校生活もうまくいきます。
なお、家庭に課題がある場合は、協力を得ることは難しいでしょうから、そういう子とは個別に面談し、睡眠の大切さを語りましょう。そして、「やれる範囲でいいので、生活リズムを取り戻そう」と励ましましょう。
徐々に学校に慣れさせる
先生方は、夏休み明けから全力で働けますか。私は無理です。やる気が出ません。夏休みの初日に戻ってほしい、という気持ちでいっぱいになります。そんな子も、結構いるのではないでしょうか。
だから、いきなり全開で授業をするのではなく、少しずつ慣れさせていくようにしましょう。例えば、学習ゲーム中心の授業をする、学級レクをするなどです。特に初日と2日目くらいは、やっぱり学校に来たほうが楽しいと思ってもらえるような取り組みをしましょう。
私が多用したのは漢字クイズです。例えば、難しい漢字を出題しクイズとして取り組むと、楽しく国語授業の導入ができます。
「みんなの教育技術」で「学習ゲーム」や「学級レク」を検索すると、いろいろなゲーム、レクが紹介されていますので、夏休み中にいくつか選んでおき、挑戦するとよいでしょう。
朝あまり気分が乗らずに学校に行った子が、「今日は楽しかった!」と言って帰宅すれば、保護者からの信頼が高まるはずです。
②一度は身に付いたけれど、忘れてしまったことのリスタート
1日の生活の流れが、どの子にも身に付いているでしょうか。これまでやってきたから、休み明けもできると考えたら、秋頃に教室がぐちゃぐちゃになるかもしれません。
学級や学校のルールの確認。日直や給食、掃除などの当番活動。時間を守ることや、整理整頓。
4月に「最初が肝心」と、詳細に計画を練った先生も多いことでしょう。その計画を振り返り、簡単でよいので初日、2日目に必ず再確認するようにしましょう。
とはいっても、全部はじめから説明していたら子供たちも嫌気がさします。
まずはじっくりと子供の様子を観察しましょう。そして、できていることを大いにほめましょう。休み明けにいきなり叱られるのは気分がよくないので、多少は大目に見ることも大切です。
できていないことは、やんわりと指摘し、先生がやってみせましょう。そして、同じようにやらせます。そして、できたらほめる。そうやって思い出させるのです。
③1学期に不十分だった部分のリスタート
1学期に少し挑戦したけれど、さして身に付かなかったこと、やろうと思っていたけれど、手つかずのことがあると思います。
それに取り組みます。そのためには、夏休み中に1学期の反省をしっかりと行い、何ができなかったのか把握しておく必要がありますね。
だいたい、4月にはあれもこれもと思いがちです。ですが、実際にはさほど多くのことはできません。そこで、できていないこと、不十分なことから1つ選んで、これだけはやろうということを決めます。
例えば、書くことの指導をやろうと思ったけれど、さほど取り組めなかったとします。それならば、夏休み中に2学期に行う3回分くらいの授業計画を立てるのです。
4月のスタートを大事にすることが推奨されますが(実際大事ですが)、実は子供たちの実態が曖昧なので、その後の戦略には修正が必要なのです。
その点、夏休みならば、子供の実態を踏まえた手立てを考えることができます。書くことに力を入れようと思ったけれど、想像以上に書くことが苦手な子が多い場合には、ごく短い文作りから始める必要があります。視写から始めたほうがいいかもしれません。その準備を、1学期の勤務中にやるのはなかなか難しいもの。そこで、実態が十分に分かった夏休み中に準備しておくのです。
②と③のリスタートは、すぐには効果が出ません。しかし、このリスタートをすることで学級が安定し、子供の学力が向上すれば、結局は保護者からの信頼が増します。短期的、長期的、両方をねらってのリスタートをしましょう。
瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育委員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。
イラスト/イラストAC
【瀧澤真先生執筆 連載】
学級担任の時短術(全12回)
【瀧澤真先生ご著書】
まわりの先生から「むむっ! 授業の腕、プロ級になったね」と言われる本。
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