「通知表や個人面談で成長を伝えよう」保護者を味方にする学級経営術 #10

連載
保護者を味方にする学級経営術

千葉県公立小学校校長

瀧澤 真
連載 保護者を味方にする学級経営術

学級担任なら、一度は保護者対応に悩んだ経験があるのではないでしょうか。しかし、保護者が味方になってくれたら、こんなに心強いことはありません。この連載では、保護者が担任と学級を応援したくなるような学級経営について、その月の学校状況に合わせたアイデアを紹介します。第10回は、「通知表や個人面談で成長を伝えよう」を取り上げます。

執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真

子供がもっとも成長する2学期!

通常2学期というのは最も長く、1年の中で子供が一番成長する時期といえるでしょう。その成長をとらえ、個人面談や通知表で伝えることで、保護者の信頼を得ることができます。

逆になんの成長も伝えられないようでは、当たり障りのない内容になり、この先生に教わっていてもいいことがないと保護者は残念に思うでしょう。

また、個人面談で子供の成長を伝えれば、そのことが保護者から子供自身にも伝わり、次へのがんばりにつなげることもできます。教師が直接その子をほめることも大切ですが、保護者を介してほめられるというのは、それはそれでうれしいものなのです(そのほうが、より効果的なこともあります)。

そこで、次のようなことを伝えるようにしましょう。

課題を克服したことを伝える

個人面談・通知表では、その学期でよくできたことを中心に伝えることが多いでしょう。もちろんそれでかまわないのですが、成長を意識した場合には、困難を克服した場面を取り上げることも大切です。そうした場面を認めることで、3学期も頑張ろうという気持ちにさせることができます。そこで、1学期にそれぞれの子にどんな課題があったのかを確認し、課題が解決したり向上したりしたことはないかという視点で、伝える内容を考えていきましょう。

例えば、2年生の算数で九九の練習を頑張っていた子がいるとします。実はその子は、1学期には九九がなかなか覚えられなかったのです。そんな場合には、次のような所見を書きましょう。

○かけ算九九の練習に熱心に取り組みました。休み時間も友達と一緒に練習したり、家庭でも積極的に学習したりし、着実に定着しました。

もちろん、大きな進歩がなかった場合もあるでしょう。ですが、かすかな成長でもかまいません。そうしたことをとらえ、伝えることも大切です。わずかな進歩でも、それが先生に認められたと分かれば、自信がつき、もっと頑張ろうという気持ちにもなるでしょう。

例えば、算数の計算が苦手で、たし算やひき算の時に、1学期は指を使って計算していた1年生が、2学期の終わり頃には、ほとんど指を使わずに計算できるようになった。そういう変容を見逃さず、記述するのです。

その場合、次のような所見文になります。

○算数のたし算やひき算では、1学期に比べて、すらすらと答えを出せるようになってきました。

たし算やひき算の計算がすらすらできりようになった女児

このように、「1学期に比べ」という言葉を入れると、小さな変容でも書きやすくなります。1学期と対比させることで、他の誰かではなく、その子自身の成長という視点で記述することができるからです。また、普段からこのような目で子供たちを見ることが大切です。

解決の見通しや期待を伝える

時には課題を示さねばならないこともあるでしょう。しかし、課題を伝えるには、注意が必要です。

例えば、通知表で「さらに漢字が覚えられるよう、もっと頑張りましょう」などと書いたとします。教師としては励ましているつもりかもしれませんが、これではやる気につながりません。「解決の見通しや期待」を添えることが大切です。

先の例で言えば、

○国語では、漢字の書き取り練習に取り組み、書ける漢字が増えてきています。このままの努力を続ければ、さらに定着していきます。期待しています。

このように記述すれば、成長を感じつつ、次も頑張ろうという気になるでしょう。

結果ではなく努力をほめる

ほめることは子供の自信につながりますが、何をどうほめるのかを一工夫するようにもしましょう。通知表の所見文は、どうしても結果についての記述になりがちです。「わかりやすくまとめることができました」「上手に発表できました」などで文章が終わっていることが多いでしょう。このように結果についてほめることも大切ですが、挑戦したこと自体や努力した過程をほめ、認めることも有効です。それにより、挑戦すること、努力することが大切なのだというメッセージが伝わります。では、どのように書くとよいのでしょうか。

・すらすらと音読ができて素晴らしいです。

これだと、「すらすら音読できた」という結果だけを、ほめていることになります。そこで、

○学校でも家でも熱心に練習を積み重ねました。その結果、すらすらと音読できるようになってきました。

音読する子供

このように書き換えると、努力した結果、向上したことがよく伝わります。それによって、さらに努力しようという気持ちを引き出すことができます。

「しっかり」「上手に」ではなく、その中身を書く

例えば、国語の「書くこと」の所見で、「しっかりと書いていました」といった所見文を見ることがありますが、これでは具体性に欠けます。具体的な様子がわかるからこそ、成長を実感できるのです。ですから、「しっかり」や「上手に」の中身を書くことを意識しましょう。先の例で言えば、

○国語の作文では、まわりの友達の様子を詳しく書くことができました。

などとすれば、「しっかり」の中身が伝わります。

ここまで読んできて、確かにその通りだけど、何人かは成長が伝えられないという子がいる、そういう子はどうしたらいいのか、と思った方がいるかもしれません。

確かに、成長を感じにくい子、課題ばかりが目につく子もいるかもしれません。

では、その子にはよいところは1つもないでしょうか。どの子にも必ずよい部分があるはずです。見付けられないなら、1日中その子のことを観察してください。指示されなくてもノートをとっている、給食を残さず食べている。そういう当たり前になってしまっている姿を、見逃してしまっていることはありませんか。

もりもり給食をたべる子ども

いやそれは成長ではなく、前からできていた。そう思うかもしれません。でも「現状を維持できている」=「成長」だととらえてみませんか。人は得てして後退してしまうことも多いのです。現状維持ができているということは、少なくとも、現状を維持しようという努力をしているということです。ですので、

○今学期も進んでノートに自分の考えをまとめることができました。

といった所見文を書き、その頑張りを認めましょう。

なお、今回は特に通知表の所見文の例を中心に述べましたが、個人面談では、さらに具体的なエピソードを添えるとよいでしょう。上に述べた、「進んでノートに自分の考えをまとめる」という部分で言えば、チャイムが聞こえないほど集中してまとめている、特に国語で自分の考えを書くことができるなどと補足したり、こんなふうにまとめたなど実物を用意したりしておくのです。それにより、保護者は学校での我が子の様子をより詳しく思い描くことができ、安心します。

他人の欠点というのは目に付きやすいものです(逆に自分の欠点は見えにくい)。そして、とかく学校というのは、欠点を矯正することに力を入れがちです。しかし、子供の意欲を高め、自ら学ぶ子にするには、長所を伸ばすほうが、効果があります。ぜひ、個人面談や通知表の所見文を書くことを通して、一人一人のよさを再認識する機会としましょう。


千葉県公立小学校校長・瀧澤真先生

瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。

イラスト/イラストAC

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